ウィトラのつぶやき

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震災による日本の産業構造の変化

2011-04-06 11:15:33 | 経済

今回の大地震では直接被害にあった人も大勢いるが、間接的に被害にあった人たちがはるかに多い。水や牛乳、ヨーグルトが買えない、という消費者や魚や野菜が売れないという農業、漁業の人たちなど広範囲にわたる。しかし、GDP的に見て最も影響が大きいと思うのは製造業である。

トヨタをはじめとする自動車会社は生産中止が海外にもおよび、4月に入ってむしろ拡大している様相を示している。これは自動車の部品が入らないからである。自動車に限らず、スマートフォンなども影響を受けている。このような影響のもとになっているのは、「ここでしか作れないバネ」というような独自技術を持った中小企業がなかなか再開できないことが大きな原因となっている。一月くらいで収まることが見えていたらば自動車会社などは支援をして操業再開を早める方向に向かうだろうが、半年近くかかると見れば、代替品を探す方向に向かうのは当然のことである。

日本の製造業は特定のニッチ分野で強く世界シェアの30%近くを占めているような会社が少なくない。これらの会社が、地震から復興した後でも大きくシェアを落として最悪は廃業、そうならないまでも利益がほとんど出ない、ということになりかねない。今回地震の影響を受けなかった東京の大田区の中小企業にもこの余波は及ぶだろうと思っている。大企業が「やはりシングルソースは危険だ」と考えて代替品のあるような部品に置き換えていくように思うからである。

中小企業が日本の複数個所に製造拠点を持っていれば問題はない。信越化学なども今回の地震で大きなダメージを受けまだ復旧の見通しが立たないと言われているが、こういう大きな会社は、別の工場で生産するようにできるので、大きな問題にはならないだろうと思っている。

以前も書いたが、日本の製造業の特徴は世界シェアの高い中小企業の部品会社が数多くある点であると同時に、その中小企業が大企業になっていかない点にある。アメリカならば独自技術を持つ中小企業はどんどん事業を拡大して周りの企業を飲み込み、大企業に変身していく。こうして業界の新陳代謝が起こっていく。しかし、日本の中小企業は職人気質の経営者が多く、事業拡大にそれほど熱心ではない。自分たちとその周りの人が満足して生活できれば良い、と考える人が多い。こういう会社は割を食っているわけだが、そのおかげで特に独自技術を持たない大手の製造業の会社が、業績は悪いながらも生き延びられる、という構造ができていると思う。

今回産業構造が変化すると思うのはこの点である。例え独自技術を持っていても、大きな被害にあうと生き延びられない。そもそも業界がそのような小さな会社の存在を許さない方向に動くのではないかと思う。これに対する対処案は小さな会社が合併して大きな会社になって製造拠点も複数持ち、リスク対応することだろう。これには大きな痛みが伴う。政府がうまくサポートすれば比較的スムースに移行できるが、政府は逆の方向、つまり小さな会社は小さなままでやっと生き延びられるような状態をサポートするような感じがしている。国民新党の亀井氏などがそういう考えその代表である。

いずれにせよ、日本の製造業には大きな構造変化が出ると思う。そしてそこから復活した時にはふたたび強くなっているだろう。