ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」を読んだ

2011-01-14 08:17:42 | 生活

新潮文庫から出ている小説家の村上春樹と臨床心理学者の河合隼雄の対談集である。

村上春樹は「ノルウェイの森」とか「1Q84」などでいま最も有名と言える小説家なので知らない人はいないだろうが、河合隼雄のほうは知らない人のほうが多いくらいではないかと思う。しかし、私自身は河合隼雄の本は何冊か読んでいるが、村上春樹の本はこれが初めてである。

村上春樹の本は「あれだけ有名なのだから面白いに違いない」と思って何度か手に取ったことはあるのだがパラパラと見てどうもレジまで持っていく気にならず、書棚に戻していた。何となく自分と合わない感じがするのである。一方河合隼雄のほうは学生時代に授業を受けて私が心理学に興味を持つきっかけを作ってくれた人なのでその後も何冊か著作を読んでいる。自分にとって村上春樹入門はこれが良いのではないかと思って買った。

この本は文字通り京都在住の河合隼雄に村上春樹が新幹線に乗って会いに行き、2-3日かけて色々な事をじっくり話し合ったものを村上春樹がテープから起こして文章にし、後で二人がそれぞれコメントをつけたという形になっている。現代の日本人の心のさまよえる部分に関する二人の意見交換である。

読後感を言うと、「少し分かりにくい」感じである。特に河合隼雄に関しては「この人はこんなに含みのある言い方ではなく、もっと分かり易い言い方をするはずだが」という感じがする。内容は良いのだが言い回しがどうも気に入らない。村上春樹のほうは考え方に共鳴できる部分は多々あるが文体が気に入らない、という感じである。これが自分が村上春樹を敬遠していた理由か、と感じた。

対談は1995年に行われているのだが、今の日本人の心理状態はこの頃からまた変わっているのではないかという気がする。何となくノスタルジーを感じる内容だった。それでも、この本の中で何度も出てくる「ねじまき鳥クロニクル」という本は読んでみようかという気になった。いつのことにならか分からないが・・

なお、河合隼雄は2007年に没している。