今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

放射線の根本的疑問が残ったまま

2011年04月16日 | 東日本大震災関連
多くの日本人が、放射性物質から発せられる放射線について学んだと思う。

実際、書店には、放射線問題をわかりやすそうに書いた本が多く積まれている
(その中で最もよく売れているのは、不安・恐怖を正当化する類いのようだが)。
そのような日本人にとって、諸外国の日本全般に対する風評被害は、
放射線を学ぶ前のおのれの姿を見るようで、苦笑する余裕ができた事だろう。

ただ、まだ釈然としない人が多いのではないか。

政府や東電は信用できないとしても、彼らが採用している安全基準は、
彼らが勝手に作ったものではなく(運用には若干手を加えている)、
国際的なものなので、それは信用してよい
(情報源が信用ないと、そこが発する情報も信用されないものだ)。

ただ、それでも釈然としないとすれば、放射線に対する根本的な疑問、
たとえば以下のような疑問が解消されていないからではないか。

①放射線はたとえ微量でも(直ちに健康に害がなくても)、それらは蓄積する事によって、いずれ危険な値に達するのではないか。
だから、「レントゲン検診の何分の一の値」といわれても、そもそもレントゲン検診自体危ないと思っているのだから、説得力がない。
この論拠として、
②われわれは放射線にはまったく無力で、放射線を浴びたらそれだけ遺伝子が損傷すると言われている。

③遺伝子が損傷したら、かなりの確率で癌細胞が発生するのではないか(癌ってそもそもそうやってできるはず)。

④以上の”事実”をふまえた上で、今の安全基準はどういう基準で安全とされているのか。早い話が、今言われている安全基準は本当に”安全”なのか。

マスコミでは④はしつこく説明されるが、その理解の前提となる①~③の説明が見当たらない。
だから、やみくもに「安全だ」と言われても釈然としないのもうなずける。
論理的には、①~③が「真」ならば、④はむしろ「偽」と判定するのが、正しいからだ。

たとえば今回、多くの人が知ったと思うが、各地の放射線量には「平常値」(バックグラウンド)というものがある。
それらはおしなべて0でない。
ならば、われわれは、たとえ今回の事故がなくても、本来なら毎日の”平常”な放射線被曝におびえていなくてはならないのか。
そしてその健康被害は実際にどのようなものか。
そもそもそのようなことをちゃんと研究しているのか。

上の根本疑問が残っている限り、”風評被害”はなくならない。

すなわち、だれかが責任をもって、現在まで分かっている事(分かっていない事も)をわかりやすく説明する必要がある
(今の政府内のメンバーではダメ)。

私自身、この問題に答える原稿を作ってはみたが、アップするタイミングが難しい(まだ原発が本質的解決に至っていない)のと、事実と「考え方」との関係が複雑なのと、
それ以上に、回答すべきなのは、私なんぞではなく、学問的誠意をもったその道の専門家にまかせるべきだと思ったので、
自分で答えることはやめにした。

回答担当者は、原発推進派の御用学者でも、反核・反原発派の評論家でもない、
もちろん専門的領域の探求に不向きなジャーナリストでもない、
あくまで放射線と健康との関係を実証的に研究している放射線医学の専門家であるべきだ
(池上彰氏でOKかどうかは知らない)。

寡聞にしてネットは知らないが、書籍を探ればそれなりに回答は見出せる。
ただし、できたら1冊ではなく、著者の異なる複数の本を読んだほうがよい。
しかも、21世紀以降の出版の。
ただ書店に山積みされていた文庫本サイズの本には、私が勧めるに値するものはなかった。

※ちなみに、この問題に関して、私は”答える任にあらず”と自認しているので、
質問があっても回答は差し控えます(簡単に答える事ができないから)。
ご自身で勉強されることを望みます(ご自身の健康にかかわる事ですよ!)。
私は学生によく言います、「もっと詳しく知りたければ本を読め」って。
本はそのために公刊されているのです。
一番いいのは、適任者が、ネットで分かりやすく説明してくれることだけど。

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3 コメント

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いつも納得します。 (りょう)
2011-04-17 15:07:39
私がいまいち理解できない自分の気持ちがどこから来るのか分かりました^^
メディアから発信された情報の根本的な所が何なのか分かりました
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参考図書 (海驢)
2011-04-25 23:54:43
はじめてコメントいたします。

福島原発の事故後、玉川温泉の放射線量はどのくらいだったかを調べていて本ブログに辿り着きました。それ以降、官邸が明らかにしなかった各地の線量を集約いただいたり、とても参考になりました。ありがとうございます。

さて、放射線防護学に関する参考図書について、ご存知かもしれませんが、当方は、5年ほど前に何かのはずみで読んだ、札幌医科大の高田純教授が書かれた『核爆発災害~その時何が起こるのか~』(中公新書)をお勧めしたいと思います。
広島・ビキニ環礁・セミパラチンスク(ロシア)の事例、現地調査結果、核分裂(核爆発の一環として)の原理、放射線障害の臨床説明と防護などについて、非常に明快に説明されており、非常に勉強になりました。
文庫ではなくて新書であり、また、事例・臨床データで数字が多く出てくること、核爆発の原理やその影響について多少物理学の分野に立ち入って説明していることなど、若干、取っつきにくい点もあるかもしれませんが、現在の福島原発関連の線量レベルを理解するには大変役に立つと思います。

僭越ではありますが、情報提供まで。
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Unknown (山根)
2011-04-26 23:32:11
海驢さん、情報提供ありがとうございます。
あくまで生のデータにもとづく理解が大切で、それによって線量レベルのグレーゾーンはグレーゾーンとして冷静に判断できると思います。
それにしても、半年前の私は玉川温泉に行って北投石を嬉々として計測していたのに、まさか原発事故による放射線を自宅で測るとは、ガイガーカウンタ所持者にとって最も恐れていた作業をやるはめになったわけです。
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