博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『封神演義』その9(未完)

2019年06月10日 | 中国古典小説ドラマ
『封神演義』第48~53話まで見ました。


雷震子の「金赤翎」を盗んだのは土遁の術に長けた盗賊土行孫と判明。楊戩と小娥は彼の手から「金赤翎」を取り戻し、雷震子を金将軍に迎えることに成功しますが、今度は予想通り土行孫が土将軍ということになります。


一方、西岐に逃れた姜子牙は龍鬚虎と名乗る木樵と出会い、彼が姫昌の兵士を誤殺すると、彼を弟子に迎え、術でもってごまかして難を逃れさせます。要するにこのドラマでは武吉=姫発という設定にしちゃったもんで、原典の武吉にまつわる話が使えない、なら姜子牙の弟子ということになってる龍鬚虎の名前を使ってやっちゃえばいいということなんでしょうけど、さすがにこれはないんじゃないでしょうか。

で、色々あって姫昌は磻渓に姜子牙を訪ね、彼を丞相に迎えます。以前に触れた通り、釣りの話は既に息子の姫発でやってますし、文王と姜子牙は朝歌で既に出会っているわけですが、結局このエピソードやるんですね…… ここで「文王拉車」のエピソードも盛り込まれます。面白いのは文王が1人で276歩、こっそり臣下が助けて515歩車を引いたので、西周の天下が276年、諸侯が覇者となる東周が515年、計791年周王朝が存続すると姜子牙が予言するわけですが、これ、どうも周王朝の創建を前1046年に置いた数字のようです。そして西岐の宮廷で姫発や蘭盈と再会。

朝歌では摘星楼が完成し、申公豹の陰謀で妲己に摘星楼で祈禱して多数の神仙を招くよう無理難題を押っつけられます。そこを子虚が狐妖の一族の子供たちを神仙に化けさせることで何とか誤魔化しますが、比干が目ざとく彼らに尻尾が付いているのを発見してしまい、狐妖の一族の根城である軒轅墳を焼き討ちにしてしまいます。ここで妲己と狐妖の少女との友情話が挿入され、原典より比干の悪者度がアップしております (^_^;)


その復讐のために子虚と妲己は比干から心臓を奪い……

【総括】
タイトルに「未完」と付けた通り、全65話予定のはずがTV版第53話、DVD版第52話をもって突如本作の放映・配信が停止されてしまい、これまで散々見てきたような中身の魔改造っぷりも相まって伝説の作品となってしまいました……(もっとも、今後修正版などとして残りの部分が配信される可能性もあると思います)

54・55話の予告編やらEDの画像などを見ると、この後は黄飛虎の造反を経て、本来描かれるべき間の諸々をすっ飛ばしつつ殷と周の戦いが描かれて終わりとなる予定だったようです。ここんところ出番がなくうっちゃられてる殷郊の運命とか、五行上将の残る2人は誰か?(1人はEDのスタッフロールから鄧嬋玉のようですが)、作中では名前が出てきているもののスタッフロールには名前が載っていない黄天化は果たして登場するのか?等々は謎のままとなりました……

中身自体は、原典では一番の見所となるはずの殷側と周側の神仙による合戦をリスペクトせず、制作側が「こっちの方が面白いやろ?」とドヤ顔で魔改造したものを押しつけてくるというあたりは、中盤以降忍術物と化した横山光輝の『殷周伝説』と通じるものがあるかなあと。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『封神演義』その8 | トップ | 『ゲーム・オブ・スローンズ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

中国古典小説ドラマ」カテゴリの最新記事