博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『足利義満 消された日本国王』

2008年03月07日 | 日本史書籍
博論の口頭試問の結果ですが、本日合格の通知が届きました。これで心おきなく17日の学位授与式に出席できます(^^;)

小島毅『足利義満 消された日本国王』(光文社新書、2008年2月)

足利義満と言えば今谷明の『室町の王権』以来天皇家を乗っ取ろうとした将軍というイメージが定着しつつありますが、本書ではこれに対して「義満公はそんな小っせえ人物ではないんだっ!!」という憤懣をブチまけております(^^;)

要するに、義満が明から日本国王の冊封を受けたのは日本国を、ひいては義満自身を東アジアの政治的メンバーとして国際的に認知させるためであり、これによって日本は朝鮮国とも対等の関係を持つことができた。日本国王としての権威は日本国内でしか通用しない天皇家のそれを凌ぐものであり、義満は事実上治天の君に匹敵する権威を保持していた。であるので、義満は今更コセコセと格下の天皇家の乗っ取りなんぞを企む必要は無かったというのではないか?というのが本書の趣旨です。

その他、義満の人生は明の永楽帝や朝鮮王朝の初代李成桂の人生ともリンクしていたかも?といったことや、義満が大覚寺統の後亀山院と懇意で、持明院統の後小松帝の後釜として大覚寺統の皇子を擁立を考えていたのではないかという指摘、中国・韓国での道教や民間信仰と比べてなぜ日本で神道の学術的な扱いが高いのかといった疑問、「鎌倉新仏教史観」への批判など、ノリが非常に軽い割には面白いトピックがたくさん詰め込まれております。

しかし一休が後小松帝の落胤としておきながら、後小松帝が義満の胤であるという説を紹介していないのはなぜでしょうか。一休の場合と比べてこちらの方は信憑性が無いと見ているのでしょうか。正直なところ、信憑性はどっちもどっこいどっこいだと思いますが……
コメント (20)
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