今日は映画館で「力道山」を見た。言わずと知れた伝説のレスラー、力道山の生涯を描いた映画である。主演は、「ペパーミント・キャンディ」「オアシス」「シルミド」などで有名な、韓国を代表する名優ソル・ギョングだ。
これは韓国映画なのだが、舞台は最初から最後まで完全に日本であり、セリフの90%以上が日本語、という風変わりな作品だ。俳優もソル・ギョングと脇役2名を除いて、ほとんどが日本人である。時代考証もしっかりなされており、なんだか日本映画を見ているような気分になる。ソル・ギョングの日本語もかなりうまい。
プロレスのシーンも迫力がある。「反則王」におけるソン・ガンホのプロレスもすごかったが、今回のソル・ギョングによるアクションはそれを上回っている。苦戦の末、シャープ兄弟を空手チョップでなぎ倒すシーンなど、当時の日本人が熱狂したように、本当に胸のすく思いがした。力道山がアメリカ人レスラーを打ち負かしたときの、日本人の熱狂がよく伝わってくる。
しかし朝鮮人として虐待され続けてきた力道山が、日本人の心の支えになった、というのは皮肉な話である。今の韓国人はこの映画を見て、どう感じるだろうか。なんとも複雑な気分だ。とはいえ、これは韓国人のナショナリズムに訴えるような作品ではない。むしろ映画の中の力道山は、韓国人が期待するような愛国心や民族愛とは縁のない男だ。少し昔の韓国映画なら、日本人による差別を強調し、韓国人の民族愛に訴えるような作品になったと思うのだが。そうではないところが、さすがに新しい作品である。やはり韓国は変わり続けているのだ。