今更ながら、田村裕の「ホームレス中学生」を親から借りて読んでみた。これは200万部以上も売れた超ベストセラーなんだそうだ。普通、本といえば数十万部も売れればそれだけで大ヒットなのだが、それが200万部とはすごすぎる。
はたして中身は、期待以上であった。これは売れるわけである。母親と死別するエピソードなど、本当に涙が出てきた。あの麻生太郎もこの本を読んで泣いたらしい。泣けるだけでなく笑えるところも多い。特に田村のお姉さんが、実に良い味を出している。私のお気に入りキャラだ。お姉さんが田んぼに突き刺さったところを、私も見てみたかった。
しかし気になった点が一つあった。兄弟3人で生活保護を受けながら暮らしていたが、就職した時に返さなくてはいけない手当があって、それが将来的に返せるかどうか心配なので、その手当を打ち切り、田村たち兄弟は1日300円で食費を賄わなくてはならない、というエピソードである。私はかつて生活保護のケースワーカーをやっていたことがあるが、こんなことはありえないだろう、と思う。
まず生活保護で支給される手当で、将来返さなくてはいけないものなどは、存在しない。あるとすれば、他に収入があったことを黙っていて、後でばれた時に、その収入分の金額を福祉事務所に返す、というケースぐらいである。そもそも手当というのは、支給するための条件を被保護者が有していれば、福祉事務所が支給する義務を負う。被保護者の側から特定の手当のみを「打ち切る」というはありえない。それに、大阪のような都市部であれば1ヶ月あたりの保護費は一人分で6万円はもらえるんじゃないだろうか。どうして1日300円で過ごさなければならなかったのだろうか? 何か他にお金が必要で、そのために生活費を削っていたのだろうか。
『ホームレス大学生』はお笑いコンビ、麒麟の田村裕の兄・研一氏が執筆したもので、田村裕の225万部のベストセラー『ホームレス中学生』の続編。15年前、父親から「家族解散宣言」をされてから別の公園で生活をした兄・研一の生活の様子が書かれている。税込み定価1365円。
ところでこのホームレス中学生、実は中身に脚色やねつ造もけっこう多い、という噂があるようだね。