Mrs.Uponwaterのブログ

日記です♪

さようならオレンジ 岩城 けい著(筑摩書房)

2013-11-06 15:25:34 | 日記
第29回太宰治賞受賞。オーストラリアの片田舎にアフリカから流れて来た難民の女性と日本人やイタリア人、英語を母語としない人達がいかに異郷で生きていくか…。言葉は人間の尊厳の保持、自分を護る手段であると言います。肌の色と名前そして言葉の訛りなどで蔑視され、決して裕福でない彼等の葛藤に胸が痛くなった。私も同じような経験を35年前のイギリスの片田舎で味わった事がある。アイスクリーム屋で”ヴァニラ”の私の発音が悪く黒人の若い女性が薄ら笑いを浮かべ、解らない振りをした。またスーパーマーケットへ行く時はきちんとした格好をして出かけるように、夫は英語が達者でない私がトラブルに巻き込まれ反論が出来なかったら…と心配していつも言っていた。「英語がこれほどまでに権力をもった現状において、この巨大な言葉の怪物のまえに国力も経済力も持たない言語はひれ伏す。そして二番目の言語を習得する時、必ず母語を引きずる…でもその母語はその国の文化や土壌から抽出されたものだから、それでいいのではないか…と著者は言っている。経験した人だけの貴重な見解だと思う。数十年前のイギリスでの事が忘れられず、込み上げて来るものが多くあった。