旬刊・上原直彦 「浮世真ん中」の内『おきなわ日々記』」アーカイブ版

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沖縄・季節の祭り

2014-09-01 00:10:00 | ノンジャンル
 9月。梅雨明けと同時に威力を発揮した南の島の太陽は、萎えることを知らない。
 道行く人びとの眉間のシワも、まだ取れていない。それでも旧暦は8月上旬。各地で季節の祭りが厳かに、そして華やかに催されている。これらは10月、11月まで続くが{旧暦8月}に限ってその催事を拾ってみよう。まず、宮古島・多良間村。

 ※八月踊り。
 旧暦8月8日から10日の3日間行われる多良間島最大の祭り。八月御願(うぐぁん)ともいう。今年1年の実りに感謝し、来年の豊作を祈願する催事。仲筋、塩川2村落の拝所には特設舞台が設置されて、島独特の芸能を奉納し、村びと総出で披露される。祭りの20日前には、各担当組が結成されて稽古に入る。その(組・座)は次の通り。
 ◇端踊座(はWUどぅいざ)=若集踊り、女踊りの指導座。
 ◇組座=王朝時代に伝わった技能「組踊」の指導座。1番座ともいう。
 ◇獅子座=獅子舞と棒術の指導座。
 ◇笠座=二才踊り(若い男性の踊り)の指導座。
 ◇キョーギン座=狂言、雑踊(ぞうおどり・軽快な踊り)の指導座。
 ◇ズーニン座=歌三線、鳴り物担当座。
 ◇スタフ座=仕度担当。衣装、大小道具の係組。
 ◇幹人座(かんじんざ)=経理担当組。
 多良間の八月踊りは、400年余前、王府から課された過酷な人頭税(にんとうぜい)を完納した「皆納祝い」に始まったとされ、1日中続演される演目の豪華さは、人頭税から解放された島びとの歓喜のさま、そのものである。

 ※打花鼓=たーふぁーくー
 中城村伊集(なかぐすくそん いじゅ)に伝わる特異な芸能。旧暦8月15日に演じられる。出演者は11人の若者。歌三線の地謡3人。演者は中国風の衣装に化粧をしての行列舞である。演者は次の通り。
 ◇筑左事(ちくさし)=唐の高官を護衛する役人2人。六尺棒を持ち、行列の露払いの役。
 ◇ガクブラ組=中国渡来の笛の1種。奏者2人。
 ◇唐の按司=(高官)1人。
 ◇フジョウ持ち=按司の小物持ち1人。
 ◇御涼傘持ち(ウーリャンサン)=按司用の日傘持ち1人。
 ◇ワンシー係り=銅鑼鉦係1人。
 ◇ブイ係=拍子木係1人。
 ◇ハーチンガニ係=シンバル様の打楽器1人。
 ◇太鼓打ち=1人。
 一行は舞台、もしくは広場中央まで行列すると地謡の歌三線に合わせて踊る。中でもブイ、ハーチンガニ、太鼓打ちは飛び跳ねたり、腰を落として背中を反らせるなど、激しい身ぶりをする。したがってこの役回りは体力のある若者が選出されて担当する。
 もともとこの芸能は王府時代、中国から帰化した唐人によってもたらされたともいわれる。現在の那覇市久米に居住した唐人は学問、産業技術等々の指導、普及のため招聘された人びと。毎年、久米に設置された学問所の学事奨励会(学芸会)での演目のひとつだが、そこに奉公していた中城村の人が見聞したままを伊集に持ち帰り、いまに伝えている。
 行列音楽が中国旋律なら、地謡の歌う文句も中国語。中国と琉球の関わりを如実に実感させる芸能である。
 
 ※チョンダラー(京太郎)。
 17世紀。京都から琉球に渡ってきた門付芸人は、琉球各地を回り、念仏踊りをなして暮らしていた。「京都からきた人」というので「京太郎・チョンダラー」と呼称したものである。
 沖縄市泡瀬、宜野座村宜野座に継承される演目内容は、
 ◇馬舞さー=板で作った馬型を持って舞う芸。ンマメーサー
 ◇鳥刺し舞=トゥイサシメー。竹の先に鳥もちをつけて、小鳥を刺し取る所作をする舞い。
 ◇扇舞=オージメー。白扇を持って舞う。
 ◇早口説=ハヤクトゥチ。さまざまな事柄を音曲に合わせて歌い踊る。
 チョンダラーは、各地に現存するが、舞方はすべて男性。陣羽織、白ズボン、脚絆、白足袋の装束。この念仏踊りはのちに旧盆のエイサーへと変貌。さらに旧暦正月20日(二十日正月・ハチカ ソーグァチ)に、那覇の花街辻(チージ)のきれいどころによってなされる行列舞い「ジュリ馬」にも取り入れられている。

 旧暦8月のメインイベントは「十五夜遊び=ジュウグヤあしび」。各地で村芝居、村踊りが仕組まれて賑わうほか、八重山の結願祭(キツガン)や各地の獅子舞と、とかくこの時期は祀り・祭り一色。それが落ち着くころ、積乱雲は鰯雲に姿を替え、風も和らいでくる。
 琉歌に曰く。
 
 ♪夏ぬ山川に涼風ぬ立ちゅし むしか水上や秋やあらに
 〈なちぬ やまかわに しだかじぬ たちゅし むしか みなかみや あちやあらに

 歌意=夏の山川の水面に、心なしか涼風が漂っているような気がする。もしかすると、水上には秋が生まれているのではあるまいか。
 


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