旬刊・上原直彦 「浮世真ん中」の内『おきなわ日々記』」アーカイブ版

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終戦65年・不発弾の島

2010-08-12 00:20:00 | ノンジャンル
 『オーストラリア北部ダーウィンの浜辺で犬と散歩をしていた男性が、波打ち際で爆弾のようなものを見つけ、これが大変危険な手りゅう弾だったことがわかりました。
 警察や軍によりますと、この手りゅう弾は第2次世界大戦のときのもので、450グラムの爆薬を含んでおり“極めて危険”という代物でした。ダーウィンでは5ヵ月前にも、日本軍が空襲で使った不発弾2発が道路工事の際に見つかっています』
2010・7月21日(シドニーDPA=共同)  

 日本軍は、地球のどこまで攻撃したのだろうか。オーストラリアでも、安心して犬の散歩もできないでいるらしい。沖縄ではどうだろう。
 7月14日午前10時10分ごろ、糸満市真栄里の道路拡張工事現場で、ロケット弾や手りゅう弾などの不発弾約900発が地中から発見された。処理に当たった陸上自衛隊によると、これらは信管があるものとないものがあったが、現場周辺への危険性はないと判断して、避難措置はとらず、同日午後7時20分までに回収している。
 「不発弾が発見された」と110番通報をした工事関係者によると、工事に伴い磁気探査を実施したところ、地中に反応があった。発見された不発弾の内訳は、81ミリ迫撃砲弾62発、60ミリ迫撃砲弾416発、手りゅう弾81発、ロケット弾2発、小銃弾340発など合計902発。地中に埋められていた1斗缶のような容器に入っていたが、日本製か米国製かは陸上自衛隊が調査中。
 発見された場所は、糸満市真栄里の国道331号の道路拡張工事現場。周囲はサトウキビ畑に囲まれ、飲食店やガソリンスタンドはあるが、民家はない。近くに住む男性<60歳>は「激戦地の糸満市内で生まれ育ったが、一度に900発の不発弾が見つかるのは聞いたことがない。市内では爆発事故も実際に起きているし、不安だ」と話している。
 また、同市真栄里の比嘉正信自治会長<68歳>は「近くには給油所や病院もある。もし爆発事故となれば、集落にも被害が出たのではないか」と、不安を隠さない。
 糸満市市民生活課の玉城幸輝さん<54歳>は「これほどの数は初めて聞く。万が一を考えるとぞっとする。激戦地だったので不発弾はまだ出る。工事の際の磁気探査を徹底するしかない」と強調。
 上原裕常市長は、迅速な処置に安堵する一方、市への報告がなかったことに「万が一のことがあれば市は手の打ちようがない。連絡体制がどうなっていたか早急に確認する必要がある」と指摘した。
 糸満市では2009年1月、今回の発見場所から約1キロの同市古波蔵で、水道工事中に、沖縄戦時下の米製250キロ爆弾が爆発。重機を操作していた男性が重傷を負うなど、大きな事故があったばかりだ。
 県によると、2009年1月から12月までの不発弾届け出件数は1124件。県内には依然として2000トンを超える不発弾が埋まっているとみている。


 昨年、南風原町内の小学校男生徒は、いつも登校下校をしている道路脇で小銃弾を見つけ〔皆に見せよう〕と、学校に持ち込むという事例があった。学校側は「その男生徒に何をどう諭せばよいのか。注意すればよいのか。それらしきものを見つけたら、勝手には触らないで先生に知らせるようにとしか指導しえない。なにしろ、どこに不発弾が埋まっているのかわからないのだから・・・・」と、困惑のコメントをしていた。
 これが日本唯一の地上戦が行われた沖縄の今日である。あれから65年経ったいまでもだ。

 8月。テレビをつけてみる。
 8月15日終戦記念日を前に「日本のいちばん長い夏」といった特別番組が放映されている。貴重な映像記録・体験者の証言・識者、評論家の戦争と平和論などを謙虚に拝聴する。しかし、激戦地のひとつであった西原町に住む私。いや、沖縄に生きている沖縄人。自分がいま、テレビを見ている家の地中にも不発弾が埋まっている可能性大と思うと、65年前に「日本のいちばん長い夏」が終わったのではなく、あの日からの65年間もこれからの50年、100年間も〔長い夏〕を背負っていかなければならないことを実感せざるを得ない。

 「妄想に過ぎる」。
 そうあって欲しいのだが、こうしている間にも不発弾は発見されている。
 ※8月3日午前11時35分ごろ、那覇市小禄の工事現場で整地作業をしている建設業者のパワーショベルが半球形の不発弾1発を掘り当てた。豊見城署によると、不発弾は直径約80センチ、高さ約50センチの旧日本軍製機雷でリード線が付いていた。豊見城署は陸上自衛隊や那覇市役所と協議して、現地処理の日時を決める予定。
 ※8月4日午前10時ごろ、那覇市首里大名町の埋蔵文化財発掘調査現場で、小火器弾413発と手りゅう弾2発、47ミリ砲弾と37ミリ砲弾それぞれ1発が土中から発見され、現場を確認した陸上自衛隊が回収した。那覇署によると、弾は沖縄戦時中の旧日本軍のもので、すべて未使用。三八式歩兵銃4丁も一緒に発見された。
(沖縄タイムス紙)         

 これでも〔妄想〕か。
 そうであったにしても〔県内には依然として2000トンを超える不発弾が埋まっている〕島の上でわれわれ沖縄人は暮らしている。地中に不発弾、地上に米軍基地を抱えながらである。





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