トシの読書日記

読書備忘録

12845基のヴィクトリア朝風の電話ボックス

2019-12-17 15:12:00 | は行の作家



リチャード・ブローディガン著 藤本和子訳「アメリカの鱒釣り」読了



本書は平成17年に新潮文庫より発刊されたものです。初出は1975年とのことですから今から約45年前の作品ということになります。


前に読んだ「西瓜糖の日々」同様、非常に不思議なテイストを醸し出しています。いや、「西瓜糖」以上ですね、不思議度は。まず、もう全体に言ってこれは小説の体を成してないです。様々な断章から成るこの作品は、「鱒釣り」というテーマで統一されているわけなんですが、どれもこれもが放りっぱなしという感じで、面食らうことおびただしいですね。


特に秀逸なのは、最後の方にある「クリーヴランド建造物取壊し会社」という章です。なんと川を売ってる店が出てくるんですね。鱒のいる川を1フィート6ドル50セントで切り売りしてるんです。その店の裏側へ回ると、長さ別に川が積んであるというんですからもうたまげるしかないです。


また更に驚くのは、こんな前衛的な作品が半世紀近く前に存在したということです。今現在、新刊として出てきても超話題になること間違いなしと思います。


藤本和子氏の「訳者あとがき」もブローディガンに対するリスペクトに満ちていて、素晴らしいものでした。この訳者のおかげで、ブローディガンの面白さをいささかも損なわずに読むことができたんだと思います。




さて、今年もいよいよ押し詰まってきましたが、仕事の方は毎週火曜日が定休日となっているんですが、来週の24日はクリスマスイブ、その次の31日は大晦日と、どちらも休むわけにはいかず、2週連続で営業となりますので、次の更新は来年の1月7日になると思います。皆様、よいお年を。



姉と今年最後の「定例会」を行い、以下の本を借りる


川上弘美「某」幻冬舎
アーサー・ミラー著 倉橋健訳「Ⅱるつぼ」ハヤカワ演劇文庫
中村元訳「ブッダ最後の旅―大パリニッバーナ経」岩波文庫
ワーフポラ・ラーフラ著 今枝由郎訳「ブッダが説いたこと」岩波文庫
金子大栄 校注「歎異抄」岩波文庫

どうやら姉は今、仏教にハマっているようです。