中村好文編「伊丹十三選集二――好きと嫌い」読了
全三巻のうち二巻まできました。この「選集二」は、かなり柔らかい内容で編集されておりまして、もう抱腹絶倒、大笑いしながら読んでしまいました。
中でも「走る男」と題したエッセイ、もう面白いのなんの、筆者が飛行機の機中でマナーの悪い男と乗り合わせるんですが、伊丹氏、いらいらがこうじて最後は仕返しをするに及び、なんと「ざまあみやがれ、さぞ口惜しかろう。」と快哉を叫ぶあたり、もうその男と同レベルになってしまっているところがなんとも笑えます。もちろん、そんなことはわかって書いていると思うんですがね。
後半では伊丹十三の猫に対する熱い思いが縷々書き連ねてあり、このあたりも爆笑ものでした。
しかし、そんな中でふと目に止まった一節があったので引用します。
<人生の後半にさしかかって思う。
人生後半においては、これまで育んできた頑固さを、絶えずぶち壊すことが一番大きな仕事になるのではないか、と。
そうして、ぶち壊してもぶち壊しても最後まで壊れずに残る「なにものか」――そういう「なにものか」が果たして存在するか否かは知るよしもないが――それは一体私の場合何なのか?まあ、それが知りたくて生きてるようなもんじゃないですか、お互いに。ねえ。冒険じゃない人生なんて生きるに値しないじゃないですか――――人生をして刻刻の冒険たらしめよ!――――>
素晴らしいですね。自分を振り返ってみるに、なんとも恥ずかしい思いにかられてしまいます。それと同時に「よし、俺も!」という気にさせてくれる文章でした。
さて、最後の一巻、どんな風に楽しませてくれるんでしょうか、楽しみです。