トシの読書日記

読書備忘録

日常的非日常

2014-04-10 16:10:39 | や行の作家
吉田知子「日常的隣人――吉田知子選集Ⅱ」読了



そういうわけで本谷有希子の口直しに吉田知子を読んでみました。これも姉借り本です。


やっぱりすごいですね、吉田知子。この日常に漂う底知れない恐ろしさ。ただ者ではありません。本谷さんもこれをよく読んで勉強していただきたいもんです。

「日常的~」と題された短編が10編と、「人蕈(ひとたけ)」という作品が収められています。


中でも出色は「日常的親友」でした。カナダに住む親友がガンで余命いくばくもないことを知る。彼女から「私」に「死ぬ前に一度会いたい」と手紙が来る。そのすぐあと彼女の夫から「妻はあなたに会うと気持ちがゆるんですぐ死んでしまうと思うので、来ないでほしい」という手紙が来る。どうしようかと「私」は思い悩み、結局カナダには行かないことにするのだが、「私」はそのあたりから悲しいこと、楽しいことに対する感情のコントロールが段々にできなくなり、職場で部下から結婚の報告を受けるとさめざめと泣き、親友の妹がやって来て親友の母が亡くなったことを聞くと、とたんに吹き出すという、錯乱した状態になる。この辺、ちょっと恐いです。


吉田知子の、日常の中で、じわじわと迫ってくる尋常でない感覚、これを書かせたら天下一品です。久々に興奮した読書でした。

妄想もそのへんで…

2014-04-10 16:04:49 | ま行の作家
本谷有希子「嵐のピクニック」読了



これも姉が貸してくれました。面白いともなんにも言わずに貸してくれたんですが、はっきり言って全然面白くない!吉田知子か、そのあたりのちょっと「変」な路線を狙っているんでしょうが、吉田知子の足元にも及びません。


まず、文章が全くなってない。僕でもこんな小説だったら書けそうです。これが大江健三郎賞を取ったというんですから驚きです。大江さん、しっかりして下さい。


久しぶりにつまらない小説(短編集)を読んでしまいました。時間のムダでした。

大正の気骨の人

2014-04-10 15:57:02 | あ行の作家
阿川弘之「天皇さんの涙――葭の髄から」読了



文芸雑誌「文藝春秋」に長きにわたって連載していたエッセイ集です。著者は、テレビ等で活躍している阿川佐和子の御尊父であります。


姉が面白いと言って貸してくれたんですが、まぁ可もなし不可もなしといったところでしょうか。海軍時代の話とか、あまり興味がないし。


ただ、文章はうまいです。旧仮名遣いというところも丸谷才一を彷彿とさせてなかなか好もしいです。


関川夏央の解説が、なかなか読ませました。関川夏央、やっぱりいいですね。