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妻からこの旅行を奨められたとき、ぼくは一度は断った。
ウイーンは行ったことがあるし、長時間あの家畜運搬船のような狭い席に押し込められてまでしていく意義を認められなかったのだ。
「でも、これがお父さんの最後の旅行になるかもよ」
そう妻に強く言われてぼくはくっ付いていくことになった。
だから、初めてのハンガリーやスロバキア、チェコなど、下調べする意欲もなかった。
ただ、イタリアやカナダのツアーですばらしいツアーコンダクターにめぐり合ったので、その一点については関心があった。
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事前連絡を受けた妻に聞いてみた。
「若いみたいよ」
ぼくはカナダツアーのSさんのことを思い浮かべて期待した。
成田国際空港のオーストリア航空のカウンターで手際よく受付処理をしているのが今回のツアーディレクターHさんだ。
ぼくは一見、仏さまをイメージした。
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白く四角い顔に栗色のストレートな髪、オンザ眉毛の下に細い目とかわいい口がついている。
背が高くスマート。グレイの薄手のセーターに同系の細いズボンがぴったりした長い脚が腿からくるぶしまで真っ直ぐ伸びている。
若く、柔軟で身のこなしは軽やか。よく透き通る声。
女性だから観音さまと言いたいところだが、鋭い目は見守るというより、指導する仏さまだ。
─続く─
「カナダ旅行記」がまだ始まったばかりですが、ホットなところで、<中欧旅行記>を先に取り上げます。