ステージおきたま

無農薬百姓33年
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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

公演前日、暴風雪のゲネ

2015-01-19 10:13:50 | 演劇
 公演前日、大雪、どころか暴風雪!夕食の買い出しに外にでたら、車埋もれてる!必死で雪払い落として近くのスーパーへ。うへーっ!前見えねぇぇ!完全にびびった。どうする、ゲネ中止するか?中抜きでやって照明、音響、場転のチェックだけ済ませるか?照明を頼んだHさんも来ない。そうだろ、豪雪僻地小国からだもの。

 ところが、外の様子を見ていない役者たちはゲネに向かって気合い十分。メイクも済ませ、衣装も着けて開始時刻を待っている。こ、これは、やるしかない。まともに通したのってわずか1回だけ、ここで仕上げておかなきゃ、明日の失敗は目に見えてる。でも、怖いなぁ!これから2時間半、土曜の深夜、家までたどり着けるか?自宅に着いたとしても、車庫に車いれるのに30分は除雪しなくちゃなんない、うーん、不安。

 どうやら到着したHさん、今度は家から緊急電、都会に出ている息子さんが入院したって連絡が入った。役者の1人も身内が危篤状態、おいおいおい、できんのか?本当に?役者のやる気そぐわけにゃいかんし、帰宅不可能の時のこと考えて、寝袋持参で駆けつけてくれたHさんの意欲と責任感にも打たれて、よしゃここはいっちょ、腹括って最後まで本番同然にゲネやるしかない。

 そんなこっちの動揺なんか知ったこっちゃない、始めたゲネはこれまでの稽古から一転、熱気あふれる舞台になった。どうして?なんで?こうなるの?今朝までの右往左往の支離滅裂、なんだったの?こんだけできるならもっと早く開眼してよ!終了後、舞台監督もまったく同様の驚きを口にした。やり終えた役者たちも一様に満足の表情、これなら明日はそこそこの舞台に仕上がるだろう。

 2時間半のゲネを終え、出したダメだしはただ一つ。ともかく声を大きく!さぁ、後はさっさと着替えして帰ろう。何はともあれ無事に帰宅してもらわなくっちゃ。その他細々としただめ出しは明日のことだ。

 外に出る。雪はややおさまっていたものの、吹き降りがひどい。横殴りの暴風に雪が荒れ狂っている。ヤバヤバヤバ!前見えないよ。視界はわずか数メートル。ともかく帰ろう。ゆっくりでもいいからたどり着こう。帰宅の道筋は、10年ほど前、空前の地吹雪で車に閉じこめられた人が死んだっていう曰く因縁付きの道路だ。

 町を出外れると、田んぼの中の吹きっさらし。見えない!ライトに浮かぶのは舞い狂う雪。風下側の道路には早くも吹きだまりが数メートルおきにできて道路の中央までせり出している。完全に一車線、対向車とすれ違うこともできない。吹きだまりにつっこんだら、出るに出られず、車放棄して救いを求めるしかない。もう10時過ぎだから、レッカーを呼ぶなんてできないし。

 風上側の雪の壁をそろそろとなぞるようにして走る。強風が雪を舞い上げれば躊躇することなく止まる。以前、見込みで動かして吹きだまりにつっひんだ苦い経験が頭をよぎる。視界ゼロなら、止まる!後ろがつかえようがどうしようが、って、後ろからも前からも車なんて来やしない。そりゃそうだ、土曜の夜中でこの豪雪だもの。たまに風がぱたりと止まり、道路脇の電柱列がかすかに見える。だ、大丈夫だ。車まっすぐ向かってる。数メートル進んでは止まり、ゆっくり発信しては風を待ち、ここらで吹き込められたら、民家まではかなり遠い。携帯持ってたって救助を助ける相手はいない。万が一なら警察だろうけど。

 のろのろと匍匐前進すること30分、おお!なんと電柱さえ立ってないじゃないか!行く先を確認する手段はなにもなし。そろそろ十字路の信号灯が見えるはずなのに、見えない。ま、まさか、異次元に踏み込んでしまった!なんてことじゃないよな。このまま永遠にこの真っ白な凶暴のさなかを彷徨い続けるんじゃ?まったく距離感が狂ってしまっている。それぞれこの吹雪の中を家路をたどっている団員たちのことも心配になる。Hさんはどこかで寝袋か?車ごと埋まって凍死だろ、そんなことしたら。

 あそこまで行けば、風は弱まるはず、あの先は普段吹いたりしないから。淡い期待はことごとく裏切られ、どこまでもいつまでも続く猛吹雪。この調子じゃ高畠に出てもダメなのか?

 かろうじてたどり着いた洲島の橋を渡って高畠に入った。なんと!そこからは別世界!はるか彼方まで道が続くの見える。しかも積雪も少ない。吹きだまりは同じく出来ていたから数時間前には吹き荒れていたんだろう。でも、今は静かな雪の夜道。なんなんだ?川西は!呪われた魔境なのか!どっと熱い安堵の思いがこみ上げてくる。生き延びた!大げさ、いやいや、本当それに近かった。

 自宅にたどり着き、若手の何人かに連絡を取る。どうやら全員無事に帰り着いたようで一安心。おっと、家から帰ってくるなって言われて友人宅に泊まったのもいたけど、ともかく、「豪雪の中、稽古を強行!団員凍死!」なんて記事にならなくて良かった。冗談ばっか、って思う?違うって、真剣に心配してたんだって。

 なんだこりゃ、ゲネの報告書くつもりが暴風雪の中の行軍記になっちまった。そんだけ危うかったってことだよ。これ乗り切ったから、明日はもう絶対上手く行く。でも、この雪、明日は止むのか?





 
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