どうやら無事、開演にこぎつけられそうだぜ。劇団菜の花座究極のコロナ禍舞台『ディスタンス』、本日29日(日)14時開演だ。
ええい、もうここまで来たら、投げ売りだぁぁぁ!1話だけチラ見させちまおう。
第5話「自粛警察」コロナで一挙にしゃしゃり出た最悪日本人!その生態をつぶさに見ることができるぜ。これ読んで、興味持ったら、さぁさぁ、川西町フレンドリープラザへ直行だ!この台本を舞台の役者はどう料理するか。それも見もの。もちろん、その他の14話も負けずに面白い。乞うご期待だ。
第5話「自粛警察」
街中、道行く人たちの行動を監視し厳しく指導する自粛警察の女。
正義の女 この距離、この隔たり、ディスタンス、これがソーシャルディスタンスです。これ以上身近に他人を近づけてはいけません。ほら、そこの若者。(と、誘導棒!を突きつけ)近寄り過ぎ、離れて!まだ、まだ足りない!そう、これだけの距離が必須です。(と、フープを示す)
マスクを着けていないジイサンを発見。
マスク!おジイサン、マスクどうしたんですか!言い訳はいりませんよ。迷惑じゃないですか。
俺は感染しとらん、ってどうしてわかるんですか。あなたPCR検査受けたんですか。陰性だったんですか。感染者でない保証ないでしょう。周りの人にウィルスばら撒いてるかもしれないんですよ。
ジイサン、くしゃみ(音響あり)した。
や、止めろ。くしゃみは口を覆ってするもんだぞ。非常識なジジイめ!ええい、もう、こうしてやる!
と、腰に吊るしてあるガムテープを取り、適当な長さに切って、ジイサンの口に貼り付けようとする。ジイサン、驚いて逃げる。
待て、ジジイ!その減らず口、閉ざしてやる!待て、待つんだぁぁぁ!まったく近頃の年寄りは、身勝手、わがまま、小生意気!なんだから。
アベックを見つけて、
ほら、離れて!恋人同士?
近しき仲にもディスタンス。ハグ、抱擁、肩組み、抱っこ、いちゃつき禁止!この非常時、愛は不時着、恋は順延、また明日。未練残すが恋の手管。耐えがたきを耐え、忍び難きを忍んで、コロナ果つる日を待とう。
酔っ払いのオジサンがやって来る。
オッサン。宵の口からなんだよ、へべれけで。酔うなら飲むな、飲むなら来るな夜の街!どうしても飲みたきゃ家のみだよ。奥さんと対面で飲みなよ、ただし、ディスタンスたっぷりとって。
なんだってぇ?相手してくれない?
色気ないし、酒がまずくなるぅ?贅沢言って。だったらオンライン飲み会だよ。相手してあげるよ。さっ、寂しいお父さんは、一緒にオンライン飲み会!
風俗店の前に来た。
ここが噂の夜の街!感染広げる魔の巣窟!クラスター発祥の地。
首から下げていたハンドマイクをつかみ、それを通して大きな音声で話す。
警告するぅ!ただちに営業を止めなさい。過剰な接触サービスは感染を広げる。利用客は出てきなさい。今なら公にはしない。会社にも連絡しない。奥さんにも告げ口しない。キャバ嬢のスカートから手を出して、支払いを済ませ、アルコール消毒を済ませて、店を離れなさい。
客が煩そうにしながら出て行く。
そう、お帰りなさい、ご自宅へ。そうです。それでこそ、好ましき市民です。良き日本の父親です。コロナ禍を生き抜く正しき日本国民です。
経営者に告ぐ!この店は緑のタヌキ、もとい、フリップおばさんの命により、営業停止となっている。ただちに閉店し、自粛活動に入りなさい。これは上意である。
と、「東京都のシンボルマーク・緑のイチョウの葉を掲げた小池都知事が描かれたフリップを掲げる。
お上の意に従わぬとあれば、私たち自粛警察有志、が連日大挙して押しかけ抗議の行動を展開するであろう。
いかがわしき職務に従事する女たち。ほら、奥で固まってるあんたたちだよ。男どものいやしき欲求に従う見苦しき女たち。あんたらの行いが社会に多大な害毒を流してるんだよ、これ以上感染を広げるなら、個人情報ぶちまけてやるからね。どうなるか、わかってるよね。たちまち炎上、あっという間の晒し者だ。
あなたたち、頑張らなくていいから。男、誘惑しないでいいから。
寂しい女、たくさんいるんだから、私みたいに。あっ、失言、取り消し!
タブレットに着信音。女、着信メールを読む。
なにぃぃぃぃ!なんだとぉぉぉぉぉぉ!女子学生が感染だとぉぉぉ!わざわざ、クラブでどんちゃん騒ぎしてただとぉぉぉぉ!地元に戻ってから、3日間もバイトしてただとぉぉぉぉ!許せん!断じて許せぬ!制裁だぁぁぁ。正義の鉄槌で脳天バコーン!怒りの刃でグサッグサッだぁ。
タブレットを仕舞い、誘導棒を高く掲げ、マイクを通して叫ぶ。
自粛警察、ただ今参上ぅぅぅぅぅ!
第5話 完