ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

おじさん頑張る!菜の花座第23回公演『イーハトーボの劇列車』

2010-12-18 20:37:44 | 地域文化

いやぁ、こんな長い芝居だっんだ!昼公演、休憩10分を差し引いて正味3時間30分!どうりで稽古が進まないわけだ、ってそんなことゲネプロや通して稽古でわかってたろう?

お恥ずかしい、ゲネも通しも一回も出来なかったんだ、本番まで。乗客メンバーが決まらなかったり、演出プランが遅れたり、小道具・衣装が揃わなかったり、まっ、理由はいろいろある。最大の原因は稽古に人が集まらなかったこと。

これまで女の子中心の芝居作りしてきた菜の花座が、ぐるりと転換、おじさんばっかりの舞台になった。おじさんはねえ、やっぱり忙しいんだよ。責任ある仕事抱えてるから。家族のこともあるから。若い衆みたいに仕事終われば、後は自分しだいってわけにはいかないんだ。

で、稽古に来られない、来ても9時過ぎだったり、顔出してもすぐに帰ったり、当然せりふも入らない。動きをつける以前の話。それでも、それぞれ苦心惨憺努力してし、なんとかかんとかシーンを作ってくれた。中にはなんとしても仕事の都合がつかず、かといって下りるわけにもいかず、究極の板挟み状態に追いつめられた者もいた。

だから、本番でやっと、通せた、なんて無様な舞台になってしまった。お客様には本当に申し訳ない。謝りますって、今頃言うな!

それじゃ、本番めちゃめちゃだったか?ってーと、そうでもないんだな。たしかにぎりぎりの所で踏みとどまっていっぱいいっぱいで舞台に立った役者のシーンは、はらはらどきどきそわそわやきもきの連続で、誰の目にも稽古不足は歴然だった。演出としても、本番の舞台を見ながら、ああその場面はこう動かしたかった、そのせりふの言い回しは違う!って何度叫んだことか。

でも、彼以外の役者たちは、通していないという不安を抱えつつも、平然と稽古以上の出来で舞台を締めくくってくれた。主役の賢治役も出ずっぱりの3時間半を熱演、好演した。

やっぱりおじんさんの力だなぁ。舞台経験は浅くても人生幾多の苦境を乗り越えてきた強みだ。それと、人間としての持ち味が圧倒的だった。これはやはり上手い下手を超えるもんだ。いや、若手なんかはるかに及ばない演技力も見せつけてくれたんだけどね。

被告人席に立つように舞台に上がった彼にしても、お客さんの反応は好意的だった。頑張れ!思い出せ!って心で声援を送りながら見てくれていた人が少なくなかった。そう、あのお歳で、あれだけの長せりふ!観客も一緒になってせりふに同伴してくれたってことだ。

だから、アマチュア演劇はダメなんだ!って見方は確かに正しい。甘え合いのなあなあ世界、そんなもんに金と時間が割けるか!ってお怒りの声には平身低頭するしかない。僕もぎりぎり、舞台が勝負で行きたいと思っている。次回はしっかりやってください!ってきつく釘を刺すつもりでいる。

でもね、そんなふうに仕事に追われまくり、家に振り回されして、せりふ覚えも納得出来ないままに、それでも舞台という針のむしろに座った彼の姿は、ある種、感動的でさえあった。逃げ出したい欲求に突き動かされながらも、敢えて舞台に身をさらし、しっかりと姿勢を保ちせりふを繰り出して行った気力、気迫。だから、多くの観客が非難に代えて声援のオーラを送り続けたのだと思う。

これもやっぱり地域に根ざしたアマチュア演劇のあり方の一つなんだと思う。一人一人が仕事を抱え、生活を背負って、もがきあえぎながら、見いだし工面したほんのちょっとの時間を演劇に捧げる、このことの貴重さを大切にしなければと思う。いろんな人が様々な形で演劇にかける思い、これをしっかりとくみ上げられる劇団でありたいとて思う。

って言いつつも、せりふはしっかり入れようよね!稽古にはもっと出て来てよね!お願いだから。誰からも演技で、仕上がりで評価される舞台作ろうよ!ってことで終わるしかないよな。

コメント
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