前夜の「議論」の名残が身の内に残っていて、
昭和を懐かしく思い出す。
「男はつらいよ」を中学生の時に映画館で見た。
ほとんど自分ちの周りで起きていることみたいで興味が持てなかった。
もっと遠いところに興味はあった。
それが、50歳を過ぎて一人暮らしに戻ったある晩、BSで放送されていたのを見て、
知らずに涙が出た。
畳の部屋やエアコンのない夏の夜の扇風機とスイカや、
地方の町かどの公衆電話。
自分も大量の10円玉を用意して、それを投入し続けながら話していた。
その時の足裏の感覚や受話器の匂いが蘇ってくる。
気がつけば随分と遠くまで来ているけれど、どこか変わってはいない。
以前は好きではなかった家族の時間。
だってそれよりも「遠く」に興味があった。
それがとても貴重なものに思えてくる。
もちろん追憶に浸っている場合ではなく、
それらを忘れることなく「今」に向き合わなければならない。
月曜日はボートシアターの稽古で横浜へ。
来週6日(月)に、来年秋に予定されている「小栗判官・照手姫」のごく一部を試演する。
台本を持ち、仮面もつけずに、だけど、そこそこ動き回る。
そして台本を手に持つことの安心感!
そして、さすがボートシアター。
本番までもう稽古はないのだった。