「カジノリゾート」整備法の成立に満腔の怒りで抗議する(談話)
2018年7月20日社会民主党幹事長 吉川はじめ
1.延長国会の事実上の最終日となった本日の参議院本会議で、安倍政権が成長戦略に掲げる「カジノリゾート」整備法案(特定複合観光施設区域整備法案)が与党などの賛成で可決・成立した。国民の多くが「カジノ解禁」に反対を示す中、野党5党1会派は、衆議院に内閣不信任決議案を提出し、最後まで闘ったが、被災地や被災者の対応よりギャンブル解禁を優先する安倍政権と与党の数の力に押し切られた。本日の「カジノリゾート」整備法の成立に満腔の怒りで抗議する。
2.「カジノリゾート」整備法案は、条文で251条・附則16条からなるが、200条を越える新規立法は、介護保険法の改正以来約20年ぶりである。介護保険法が3国会にまたがったのに比べ、今回は、地方公聴会や中央公聴会も開催されないまま、衆参両院でわずか40時間程度の審議で採決が強行された。しかも政省令やカジノ管理委員会規則に「丸投げ」する委任事項が条文より多い331項目もあり、内容の論議は深まらなかった。法案の内容に注文を付ける附帯決議も31項目もあり、もはや「欠陥法案」以外の何ものでもない。
3.これまで法務省は賭博が違法とされないためには「8点の考慮要素」(8要件)が必要との立場をとってきた。しかし政府は、「総合的に制度全体を観察、考察」すればよいとするばかりで、「違法性の阻却」について説明責任をまったく果たしていない。「収益の使途を公益性のあるものに限る」、「運営主体は、官またはそれに準じる団体に限る」という要件に照らしても、「民設・民営」・「民間賭博」の解禁は、「違法性」を免れることはできない。政府は制度の十分な説明をしておらず、刑法が禁じる賭博の合法化への疑問や、ギャンブル依存症患者が増える懸念がなお拭えない。カジノ解禁への環境は整っておらず、このまま見切り発車することは許されない。
4.政府・与党の繰り返す「世界最高水準のカジノ規制」も、実効性の乏しさが次々と明るみになり、欺瞞に満ちている。日本人の「入場回数制限」(7日間で3回、28日で10回)や「高額の入場料」(6000円)、ゲーミング区域の「面積上限値規制」などは、「抜け道」だらけである。たとえば、「入場回数制限」については、言い換えれば24時間営業のギャンブル施設に、最大3日・72時間も居続けることを可能としているし、日をまたいで入場すれば週6日間の滞在が可能となっている。カジノ面積の上限は、昨年の有識者会議では「絶対値」の15000㎡という数字が入っていたが、与党協議でIR全体の「延べ床面積の3%以下」(相対値)とされた。最終的には政令で決めることになっており、リゾート施設全体の床面積を広げれば、いくらでも巨大カジノを建設できる。シシンガポールでは、入場回数を「最大月8回に制限」し、入場料は「約8、000円」としている。「世界最高水準の規制」どころか、世界一カジノをしやすい国づくりそのものである。
5.本法案で創設される特定金融業務、すなわち既存ギャンブルには設けられていない、カジノ利用者が事業者から条件付きで借金できる制度は、貸金業法の総量規制(年収の3分の1)もない。政府は、一定額以上の預託金を納められる「富裕層」としているが、預託金の額は管理委の規則で決まる。ルーレットやバカラといったカジノで提供するゲームの種類によって射幸性のレベルが左右されるが、これも管理委の判断である。8要件の一つである「射幸性の程度」要件から大きく逸脱し、ギャンブル依存症や多重債務を増やしかねない。
6.カジノ解禁の背後には、アメリカの要求も見え隠れする。在日米国商工会議所の2014年の意見書では、「統合型リゾートが日本経済の活性化に寄与するための枠組みの構築」を打ち出し、日本への進出に意欲を示すカジノ業者が、最大の利益をあげるのに都合のいい制度設計を事細かく求めているが、今回の法案もそうした要求に沿ったものとなっている。アメリカのトランプ大統領の大スポンサーで、「世界一のカジノ王」といわれるラスベガス・サンズのアデルソン会長は、日本市場の参入にあたり100億ドルを準備できると強調し、日本のカジノ導入に向けて本格的に始動している。カジノを解禁すれば、日本進出を熱望しているアデルソン氏が喜び、トランプ氏にもメリットになることから、安倍政権の側には、カジノ解禁でトランプ氏とよしみを通じようという狙いもあるようである。カジノを規制するカジノ管理委員会の事務局に事業者も加入可能であり、カジノ事業者に外資規制もないことから、結局外資に富を吸い上げられることになりかねない。
7.安倍政権は、カジノを成長戦略に位置づけるが、「命よりギャンブル」が、果たして「美しい国」の姿なのか。そもそもギャンブルは富を生み出さないし、「カジノリゾート」の経済効果について、ギャンブル依存症の増大など負の影響を含めておらず、具体的な数字を伴う政府試算も示されていない。
また、安倍政権は、「カジノ解禁」の批判をかわすためか、「IR」(=Integrated Resort)との用語を用い、カジノは施設の一部であり、国際会議場や展示場・宿泊施設などと一体的に設置・運営する「リゾート施設」だとの説明に躍起になっている。IRと言えば聞こえはいいが、要は「カジノリゾート」、カジノを中心にリゾート開発を促進するものであり、バブル期のリゾート開発の失敗を想起させるものに他ならない。
9.カジノ設置箇所数は、3か所とされているが、最初の区域認定から7年後に見直すとしており、今後、カジノが野放図に拡大するおそれがある。多くの問題や危険性を有するカジノは断固、廃止すべきである。社民党は、多くのカジノ反対の皆さんとともに、野党で共同提出しているカジノ廃止法案(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律を廃止する法律案)の成立を目指すとともに、パチンコを含む既存ギャンブルへの規制強化、ギャンブル依存症対策の強化等を徹底して求めていく。
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