世間の流行というものに疎いと自覚したのは
いつ頃だっただろうか。というか、
昔からそもそも流行を追っていたという
意識がなかったような気がする。
必死になって流行に乗ることの見苦しさと、
いまさら流行に乗れない諦めとの間で揺れながら、
結局のところ、世の中から置いてけぼりにされている感は
ますます強くなっている。こんなんで編集とかライターを
よくやっているなあと思いつつ、日々やさぐれて生きております。
と、なんでこんな愚にもつかない
戯れ言をほざいているかというと、
昨日発表された芥川賞で、
「推し、燃ゆ」という作品が選ばれたという報道があったから。
流行に疎いので、宇佐見りんという若い作家さんの
ことは全く知らず、へえそうなんだ。
よくできた娘さんだなあと呟いた瞬間、
このタイトルに見覚えが。
そうだ。昨年の夏に出た
「文藝」のシスターフッド特集号の
巻頭に掲載されているではないか。
特集の方ばかり読んで、この小説は読んでいなかった。
ということで、読む。
決して受賞したから読んでるんじゃないですよ。
たまたま手元にあるから読んでるんですよ、という
めんどくさい言い訳をしながら、仕事場に向かう電車の中で読む。
あっという間にひりひりした小説の世界に引き込まれる。
読むまでの動機がどんなに不純でも、読んでいるときは、
キレイな心になっていると信じる
おっさんの心は、やっぱり汚れているのでしょう。