森田芳光監督
「ピンクカット 太く愛して深く愛して」を見る。
83年製作だから、もう38年前の映画なんだな。
すっとぼけた演出が満載のライトコメディの傑作で、
80年代の邦画を代表する青春映画だと確信した次第。
ものすごく久し振りに見返して、あらゆるところに感動している。
ポルノ界の聖子ちゃんとして人気を博した
寺島まゆみのポップな個性。
相手役で森田映画の常連だった
伊藤克信の棒読み演技のおかしさ。
アンニュイ(当時でも死語)な魅力で、
ポルノ界の百恵ちゃんと言われた井上麻衣。
レジャーランドと揶揄された
当時の能天気なキャンパスライフ。
それでもバブル前だから、みんなどことなく
野暮ったくて貧乏くさい。
私鉄沿線にある狭いアパートで、
本や雑誌、映画スターのポスターなどに囲まれ
若さを持て余しているという。
両親が死に、実家の理容店を
やりくりしている寺島まゆみも、
就活がいまひとつうまくいかない伊藤克信も、
どこか能天気で、浮かれてフワフワした感じ。
神代辰巳や田中登といった監督たちのような、
情念たっぷりの性愛を歌い上げる、
70年代的なロマンポルノとは遠く離れた世界。
そんな価値観がわかるのは
同時代に生きた人だけ、と思ったりもする。
初めて本作を見る若い人(いるのか?)はどう思うのだろう。
やっぱり軽いのかな。能天気なのかな。
でもそこがいいんじゃない、
とみうらじゅん的なフォローを入れつつ、
幸福感にあふれたラストのミュージカルシーンで
すべてを許したくなる映画なのです。