Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

ダメダメで深刻な

2021年11月18日 | 映画など
イングマール・ベルイマン監督「冬の光」を見る。
苦手な苦手なベルイマン映画も、
少しずつ見ていくに従って、だんだん慣れてくるというか。


この映画で驚くのは冒頭だ。主人公の神父が礼拝をする場面。
神父の教えを聞く信者たちの顔。顔。顔。
男もいれば女や子供、老女もいる。
彼ら彼女らの顔を見るだけで、
この人たちはものすごい苦悩を抱えているんだろうな、
と思わせてしまうわけで、それはきっと
監督の術中にはまったということなのかな。
シャープだが儚い光が教会に差し込んでいて、
なんとも冷え冷えとした空間の凄み。
撮影監督スヴェン・ニクヴィストの功績も大きいのだろう。

神父とねんごろになる女を演じたイングリット・チューリンや、
自殺願望に苛まれた男のマックス・フォン・シドーなど、
ベルイマン映画にお馴染みな俳優たちの苦悩する姿を見届けながら、
一人の神父が自分のダメダメな人生を悔やむあまり
神への信仰がゆらいでいく物語なんだなあ、と。

ふつう、過去の映画の再評価というのは、
その作品をより高みに持って行くためのものだけれど、
今回のベルイマン作品のデジタルリマスター版の送り手たちは、
なるべく敷居を低くして、
観客にとって身近な題材を扱った映画であろうとしている。
ある意味それは、作品をおとしめるような
再評価になるかもしれないけれど、
それはそれで興味深い。時代によって映画の評価は変わるわけで。
コメント
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