Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

燃えさかる過去

2021年11月27日 | 映画など
アンドリュー・レビタス監督
「MINAMATA ミナマタ」を見る。
水俣病の存在を世界に知らしめた写真家、
ユージン・スミスの水俣での苦闘を描く。
日本に生きる者として、
やはり見ておかなければいけないというか。
「水俣 患者さんとその世界」など土本典昭の
ドキュメンタリー映画と共に、記憶に残しておきたい作品。


本作のユージンは、とにかく汚いおっさんである。
高名な写真家ではあったけれど、頑固者でアル中。
生活者としては、おそらく破綻していたであろう彼を
ことさらに英雄扱いしないところが好ましい。
ましてやジョニデが演じているのだから、
もっとカッコ良く描くこともできただろうに。
映画は、アル中でおぼつかない体を奮い立たせながら、
カメラのシャッターを切る姿を淡々と追うことに専心する。

胎児性水俣病の少女の写真を撮る場面。
少女とふたりっきりにさせられたユージンが、
ゆっくりと彼女を抱き、
ディランの「フォーエヴァー・ヤング」を口ずさむ。
なんという静謐さだろう。

ジョニデを始めとする
この映画の作り手たちは、
水俣病を始めとする、理不尽な「人災」への
怒りがあることは明らかだが、
それと共に、美しい映画を撮ろうという意識があったと推測する。

土本典昭の水俣映画もそうだ。
水俣病を引き起こした側への怒りがあるのは当然のこと、
あの地で生きる人たちへのリスペクトがあったからこそ、
水銀で汚された水俣の海があれだけ美しく見えたわけで。

真田広之、加瀬亮、浅野忠信といった
豪華な日本人キャストもみんな好演で、
とりわけチッソの社長を演じた國村隼の存在感が出色。
すべての感情をシャットアウトして、
抗議団体と対峙する不気味なメンタリティ。
権力者というものはこういうものかもしれないと戦慄したのでした。

コメント
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