ビリー・ワイルダー監督「深夜の告白」を見る。
いわゆるファム・ファタール(悪女)映画のはしりと言われている
古典的名作で、光と影の演出に幻惑されつつ、ただただ見惚れる。
バーバラ・スタンウィック演じる人妻は確かに悪女なのだけれど、
彼女の旦那を殺す主人公の保険屋は、悪女の色香に翻弄されるというよりは、
自分の中に眠っていた犯罪者の血が沸き上がったような感じで、
むしろ積極的に犯罪に手を染めるところが特徴的だ。
主人公を演じるのがフレッド・マクマレイ。
同じワイルダー監督の「アパートの鍵貸します」で、
ジャック・レモンの部屋を借りて、
シャーリー・マクレーンと不倫をする会社の上司を演じた俳優で、
ハードボイルドな魅力に溢れている。
そして、主人公の同僚の保険屋を演じたエドワード・G・ロビンソンが素晴らしい。
強面だけど、コミカルで愛嬌のある役どころで、
完全犯罪をもくろむ主人公たちを追いつめていくところがこの映画の白眉。