スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

棋聖戦&観念と意志の関係

2016-08-01 19:32:32 | 将棋
 岩室温泉で指された第87期棋聖戦五番勝負第五局。
 振駒で永瀬拓矢六段の先手となり羽生善治棋聖の一手損角換り。変則的な手順からの進展で,1-Ⅱで9筋も突き合っている形。後手が腰掛銀で先手は右玉も含みになかなか形を決めませんでした。ただ,この将棋の序盤は先手がひとり千日手をやっているようなものに僕には思えましたから,作戦負けに陥っていたのではないかと判断します。
                                     
 これは6六で銀が交換された局面。後手は△8四角と打ちました。成算があってのものかは不明ですが,角を手放す以上,この後の折衝如何で優劣が決する勝負所を迎えたといえるでしょう。
 このまま△6六角と出られてはひどいので▲6七金。後手は△7八銀と空いたスペースに打ちました。先手が▲7五歩と突くと後手は△6七銀不成▲同金と交換してから△7五角。先手は▲7六銀と打ちました。
 ここから△6八金▲同金△6六角というのは強引な手順ですが,8四に角を打って7八に銀を打っていった以上,仕方がなかったのかもしれません。先手は▲3八玉と逃げ△9九角成はこの一手。ここから▲7一角△7二飛▲1七角成と進んでいますが,この手順はもしかしたら甘かったのかもしれません。後手は△2五香と打ちました。
                                     
 先手に歩があればこんな手は何でもありませんがありません。仕方がないので▲4九飛と逃げることに。ただ後手も持ち駒がないので△4四歩と催促。対して▲5三金△同金▲同桂成ですが,駒を補充しようとしている後手に対してすぐに駒を渡す手順なので,ここも問題があった可能性はあると思います。
 △6六馬と戻ったのに対して▲6七銀。後手は△9三馬ですがこれは逃げただけでなく先手。△5七桂成を受けて▲5八銀と引きましたが△5七金の数の攻めが残っていました。
                                     
 第3図まで進んでしまうともう先手は受けきれません。ここは後手の勝勢でしょう。
                                      
 3勝2敗で羽生棋聖の防衛。第62期,63期,64期,65期,66期,71期,79期,80期,81期,82期,83期,84期,85期,86期に続き九連覇で通算15期目の棋聖です。

 岩波文庫版の113ページの第二部自然学②定義および諸感情の定義Affectum Generalis Definitioまで含め,『エチカ』に示されているほかの定義はすべて第一部定理八備考二でいわれている条件を満たしていると僕は考えます。つまり『エチカ』には例外的な定義がふたつ含まれていると僕は考えるのです。ただし,これをもって定義論の結論とすることはできません。一般に定義論を探求するためには,『エチカ』に示されている定義だけを検証すれば十分ではなく,むしろそこに含まれていない定義まで含めて結論を出す必要があるからです。
 スピノザは第二部定理四九,すなわち観念が含んでいる肯定ないし否定のほかにはいかなる意志作用volitioも存在しないということを証明するために,ひとつの実例をあげていました。それは,三角形の観念はその三角形について内角の和が二直角であることを肯定する意志作用なしにはあることも考えることもできず,逆にある図形についてその内角の和が二直角であるということを肯定する意志作用というのは三角形の観念なしにはあることも考えることもできないというものでした。スピノザはここで第二部定義二に訴え,意志作用の方が三角形の観念の本性に属するとしています。この帰結として第二部定理四九系では,知性intellectusと意志voluntasが同一であるといわれるのです。
 個々の観念には必然的にその本性に属するものとして個々の意志作用が含まれているということ,ならびに個々の観念の集積である知性の本性には必然的に個々の意志作用の集積としての意志が属しているということについては,僕は定義論の範疇では考えません。これは観念の本性に属しているあるものが意志作用といわれるという説明なのであって,A群の定義に属そうとB群の定義に属そうと,定義内容が定義された事物の本性を含むということを大きく逸脱するとはいえないからです。むしろ第二部定義三で示されていることが観念の本性を含んでいるのであり,意志作用は観念の本性そのものというより本性に属するものなのです。実際に第二部定義二というのは,本性の定義というより,本性に属するものについての定義であるとみなせる文言になっていることに注意してください。

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