スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

棋聖戦&実在性

2008-07-18 20:01:17 | 将棋
 前にもいいましたが,僕がプロの対局で最も楽しみにしている一戦が,佐藤康光二冠と羽生善治名人の対戦。今日の棋聖戦第五局で,この対戦は当分の間見ることができなくなります。
 振駒で佐藤棋聖の先手。☗7六歩☖3四歩☗2六歩に,羽生名人はいきなり☖2二角成とする一手損角換り。これは紹介していない形ですが,②と③の思想をミックスさせたものという感じです。後手が向飛車,先手が穴熊に。
 中盤も面白い変化が多いのですが,この将棋のハイライトは僕が観戦する直前の部分にありました。
           
 今,歩を取って☗7四銀と進めたところ。ここで後手は☖7三歩と打ちました。これには☗8三銀成☖同銀☗5六角の両取りがあるのですがそこで☖8六歩。以下,☗8三角成☖7二金上☗8四馬。先手は,たとえば☗7四銀と出る前からでも☗5六角と打つ手はあったわけで,この順には意表をつかれたのではないかと思います。
           
 第2図以降も一本道とはいえない変化ですが,実戦は第3図のように進みました。
           
 2一から角を打ったのは,何かの拍子に詰めろ角取りのような手が生じるのを避けたのではないかと思います。ここで☗7六歩と打ちましたが,実戦の手順からすれば☗4三歩と打って対応を聞いた方がよかったかもしれないと思います。☖同角なら☗7六歩と打ち,もし☖7四金なら,☗8三桂を打つかどうかは別に,この金を取って☗4二金と打つ余地がありますし,すぐに☖7四金でも飛車先が楽な分,先手にまだ手段が残る余地があったかもしれません。
 実戦は☗7六歩の後,☖7四金☗8三桂☖6一玉☗7四馬☖同歩☗9一桂成でまた二枚換えになりましたが,これは8一の桂馬も使えて,先手が苦しくなってしまった感じです。
           
 第4図以下,☖8五歩に☗7七銀と逃げたのは少し弱気な感じですし,その後で☗8九銀と打ったのも受けになってなく,後手が押し切って勝ちました。
 羽生名人が連敗後の3連勝で棋聖奪取。これで名人・王座・王将に続く4冠目。再び棋界制覇に向けて動き出したという感じがします。
 一方の佐藤前棋聖は棋王の一冠に後退。棋聖奪取のときは連敗後の3連勝だったのですが,今回は逆のパターンで失冠となってしまいました。
 ここ数年,タイトルの移動は女流を除くとそう多くなかったのですが,今年度は名人に続いて棋聖も移動。今年度はタイトル移動の年となるでしょうか。

 明日から四日市競輪場でサマーナイトフェスティバルが開催されます。これは2日制のGⅡ。山崎選手と小嶋選手が強力ではありますが,明日の予選が1着権利である以上,予断は許さないでしょう。

 第二部定理三六のスピノザの部分的証明から理解できることは,基本的には次のようなことになると思います。
 僕がまず注目するのは,スピノザが証明の冒頭に,第一部定理一五を引用していることです。この定理Propositioは,あるものはすべて神のうちにあるQuicquid est, in Deo estということを示した定理ですが,このとき,あるものというのは,実在的なもの,すなわち何らかの実在性realitasを有するものと考えることができるのではないかと思います。
 次に,神のうちにある観念ideaはすべて十全な観念idea adaequataであるわけですから,混乱した観念idea inadaequataというのは,あるといい得るなら,それは人間の精神mens humanaを代表とする有限な知性intellectusのうちにあることになります。これはこの定理の証明Demonstratioのうちにスピノザ自身が示していることでもありますし,また,ここまでの考察の内容にも合致しています。
 僕が思うにこのとき,混乱した観念というのは二様の意味に解釈できます。すなわちひとつは,Xの混乱した観念が,ある人間Aの精神のうちにあるとみられる場合であり,もうひとつは,この観念が神のうちにあるとみられる場合,すなわち,この混乱した観念がAの精神のうちにあるとして,Aの精神の本性を構成するとともに,ほかのものの観念を有する限りで神のうちにXの観念があるとみられる場合です。
 このとき,後者の場合には,実際にはこれは十全な観念ですから,何らかの実在性を有するということになります。いい換えれば,このように考えられる限りにおいては,混乱した観念にも何らかの実在性があると考えなければいけないということになります。
コメント
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