スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

チャンピオンズマイル&絵画の価値

2016-05-02 19:20:22 | 海外競馬
 香港のシャティン競馬場で行われた昨日のチャンピオンズマイルGⅠ芝1600m。
 モーリスは外の4番手を追走。前半の800mが48秒66の超スローペースでした。3コーナーを回ったあたりで単独の3番手だった馬の外に並び掛け,前をいく2頭を射程圏内に。直線はその2頭の外に。この時点で手応えに余裕があるように見えたので,勝ったのではないかと思えました。追い出したのは残り300m付近から。残り150m付近で先頭に立ち,そこから差をつけていき最後は2馬身差をつけての楽勝でした。
 優勝したモーリスはここが昨年の香港マイル以来のレース。これで大レース4勝目。休養明けを苦にする馬ではないのでその点はあまり不安視していませんでした。むしろ間隔が詰まっていた暮れよりも状態は良かったようで,それがこの快勝につながったのでしょう。自身はあまり差をつけて勝つタイプではありませんし,超スローペースは差がつきにくいという点も考えると,このメンバーでは能力が図抜けていたということだと思います。どういうレースを使っていくか分かりませんが,今年もかなりの活躍を見込めるでしょう。父はスクリーンヒーロー。祖母が1989年のクイーンステークス,1990年の金杯とアルゼンチン共和国杯,1991年のアメリカジョッキークラブカップを勝ったメジロモントレーデヴォーニアメジロボサツの分枝。
 日本馬による海外GⅠ制覇はドバイターフ以来。香港では昨年の香港カップ以来。チャンピオンズマイルは初勝利。ブラジル出身の香港のジョアン・モレイラ騎手は日本馬に騎乗して初の大レース勝利。管理している堀宣行調教師は香港マイル以来の大レース制覇。

 スピノザがフォールブルフVoorburgで下宿していたときの家主は画家でした。また,死んだときに住んでいたハーグの2軒目の家主も画家でした。こうした事実は『人と思想 スピノザ』で説明されている当時のオランダの絵画事情を裏付けているといえるかもしれません。おそらくこの頃のオランダにはそれほど多くの画家が存在していたのであり,職業として成立していたのです。ふたりの宿主は現在では画家として名を残している人ではありません。したがって芸術家としての画家というより,職人としての画家であったといっていいのではないでしょうか。
                                    
 もちろんレンブラントやフェルメールのように,スピノザと同じ時代にオランダで生きた画家の中に,現在でも芸術家として名を残している人がいるのも事実です。ですがそれはレアケースであって,画家が芸術家としてみなされること,同じことですが絵画が芸術としてみなされることは,この当時のオランダではむしろ少なかったといっていいように思います。現にレンブラントにしろフェルメールにしろ,生きていた時代の生活は必ずしも恵まれたものではなかったようなのです。
 したがってスピノザが第二部定理四三備考などで,観念はキャンバスに描かれた無言の絵画とは異なるというときの絵画は,芸術作品としての絵画を意味していないとみておくのが妥当であると思います。これはちょうど,僕が観念とは対象を撮影した写真のようなものではないというときの写真が,写真家が撮影する芸術としての写真をイメージしてそのようにいっているのではなく,僕たちが日常的に撮影するような変哲のない写真を念頭にいっていることと対応します。僕はこのようにいうことで,観念が対象なしに実在し得るということと,また観念は撮影された写真のように静的なものではないということをいおうとしているのであり,写真というものの価値を貶めようとしているのではありません。同様にスピノザも,このような表現で絵画の価値を毀損したいのではないというのは間違いないと思います。ただ,マルタンが絵画に見出す価値とスピノザがみる価値は,明らかに違っているといわなければならないでしょう。
コメント
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