スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

NHKマイルカップ&「天文学者」のモデル

2016-05-09 19:21:55 | 中央競馬
 昨日の第21回NHKマイルカップ
 ティソーナとペルソナリテは立ち遅れ。メジャーエンブレムがすぐさまハナへ。逃げる可能性も指摘されていたシゲルノコギリザメは無理せず2番手に控えました。シュウジ,アーバンキッド,ブランボヌールの3頭が集団で3番手。エクラミレネール,イモータル,ダンツプリウスの3頭が中団の前。中団の後ろはシャドウアプローチとレインボーライン,追い上げたティソーナとストーミーシーが2頭ずつ並んで追走。ブレイブスマッシュがいて,トウショウドラフタとカネノイロ,ハクサンルドルフとロードクエストという隊列に。前半の800mは46秒0のミドルペース。
 直線に入るあたりでシゲルノコギリザメはすでに苦しそうな気配。コーナーで内目を回った馬がメジャーエンブレムを追い掛けようとしましたが,メジャーエンブレムはその時点でまだ持ったまま。むしろ追った側が苦しくなり,逃げ切ったメジャーエンブレムの優勝。先行グループが勝ち馬に潰される展開となり,直線の入口でも離されていたペルソナリテを除けば最も後ろに位置していたロードクエストが大外から追い込んで4分の3馬身差の2着。中団後方から馬群を割って追い込んだレインボーラインがクビ差で3着。
 優勝したメジャーエンブレムは2月のクイーンカップ以来の勝利。大レースは昨年の阪神ジュベナイルフィリーズに続いて2勝目。瞬発力は欠きますが,スピードの持続能力は高いので,今日のようなレースをすれば,牡馬相手でもこのレベルなら勝てると考えていました。前走は明らかに失敗したレースと思えましたから,騎手の心中にも期するものがあったのではないかと思います。スプリント戦では短いでしょうし,持続能力が高いとはいえ,あまり距離が伸びるのもよくないかもしれません。ただこういう馬は能力は非常に高い可能性もあり,同じ牝馬でいえばダイワスカーレットのような活躍をする可能性もまったくないとはいえないと思います。父はダイワメジャー
                                    
 騎乗したクリストフ・ルメール騎手と管理している田村康仁調教師は阪神ジュベナイルフィリーズ以来の大レース制覇でNHKマイルカップは初勝利。

 画板に描かれた無言の絵(mutum instar picturae in tabula)というのがどういう意味であれ,スピノザが観念ideaが永遠aeterunusであるように絵画が永遠であるということを認めないと僕が考える理由はお分かりいただけたと思います。このゆえにマルタンJean-Clet Martinの公式は成立せず,よってそれを契機に推理されている「天文学者De astronoom」のモデルがスピノザであるという仮説の信憑性も,僕には大変に疑わしいものになっているのです。
 コレルスの伝記Levens-beschrijving van Benedictus de Spinozaの第五節では,スピノザは自画像も含めて種々の人物画を描いたとされています。コレルスJohannes Colerusは実際にそれらの絵を見たといっているので,この部分は真実ではないかと思われます。またファン・ローンJoanis van Loonが親友であったレンブラントRembrandt Harmenszoon van Rijnについて書くきっかけをスピノザから与えられたとき,スピノザはレンブラントのエッチングを嘆賞していたと語ったと書かれています。この部分は虚偽でなければならない理由がありません。人物画とかエッチングというのは,確かに描かれる対象なしにはあることも考えるconcipereこともできないものであり,同時代またそれに近い時代に書かれたこれらふたつの記述は,スピノザが絵画をどのようなものと解していたかを窺わせる内容になっていると思います。スピノザが絵画をそのように解するなら,第二部定理四三備考のように,観念は絵のようなものではないという比喩を用いることと整合性がとれるからです。
 同時にこの部分は,スピノザには芸術としての絵画を十分に鑑賞するだけの能力が欠如していたということの証明にもなり得るでしょう。そしてそう解する限り,それはマルタンにとって有利な材料になります。ですが『フェルメールとスピノザBréviaire de l'éternité -Entre Vermeer et Spinoza』の説明の要旨は,スピノザが存在しなければ「天文学者」は存在しなかったというように読むことができるようになっています。精巧なカメラ・オブスキュラcamera obscuraのレンズを製作してくれたお礼として,スピノザをモデルとした絵をフェルメールJohannes Vermeerが描いたのだとすれば,それはスピノザなしにこの絵画は描かれなかったといっているのと同じだからです。なのでどんなにマルタンに有利な材料があったとしても,僕は「天文学者」のモデルがスピノザであったという仮説を,信じることができないのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする