スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

妙手①&難点

2008-09-02 19:14:50 | ポカと妙手etc
 プロ将棋の醍醐味は何といっても妙手にあります。ポカも出ればまた紹介しますが,妙手の紹介の方が僕としても楽しいですので,新シリーズとして妙手を紹介していきましょう。なお,今日からポカと妙手という新カテゴリーに分類します。
 最初ですのでプロ将棋の妙手の雰囲気を味わうという意味で,新しい将棋ですが昨年度の棋王戦第一局から。後手の一手損角換りから互いに小ミスがあり,先手が攻めきるか後手が受けきるかで迎えた第1図。
           
 ここで後手が△7六香と一旦王手。これが妙手というか,後の妙手を呼び込む手。▲6八玉は危険なので,▲8八玉ですが,こうしておいて△3四金寄から再び受けに回ります。これを▲同桂と取れば一本道で第2図。
           
 相手玉が1段目,自分の龍が3段目にいて,持駒に金があるというのは,一間龍という将棋の詰み形のひとつ。実戦は△2二角で,▲3二金と打てば確かに後手玉は詰んでいますが,△2二角は単なる合駒ではなく,第1図からの2手の交換のために王手になっているのでそれは先手の負け。▲4四歩で王手を防ぎましたが,△3二飛で後手玉はぎりぎり逃れました。
           
 ここから,先手は最善の寄せは逃したようで,終盤のねじり合いが続いて第4図。10手ほど前に受けるために3二に打った桂馬が,第2図以下の逆王手を防ぐために突いた4四の歩を取って跳ねてきたところ。
           
 今見ても,この局面は逆転して後手がよくなっているのではないかと感じます。しかしここで▲5五馬と歩の頭にひとつ出るのが妙手。△同歩でただなのですが,こうしておけば4四の桂馬がさらに跳ねる手が,先手玉に対する王手になりません。この一手の余裕が大きく,後は攻めきって先手が勝ちました。
 将棋大賞の名局賞は1月から12月の将棋が対象。僕はこの将棋は来年度の名局賞に選ばれるべきだと思っていますし,こんなに素晴らしい応酬のあった将棋はほかにちょっと思い出せません。

 明日は竜王戦挑戦者決定戦第二局。羽生善治名人が勝てば挑戦権獲得。先手となる木村一基八段が巻き返せるでしょうか。

 大井ではアフター5スター賞。中心はベルモントサンダー◎。相手筆頭にはディープサマー○を。あとショーターザトッシ△,キングビスケット△,パフィオペディラム△。

 向日町記念は決勝。関東勢と近畿勢で8名。武田-神山-山口の茨城栃木。兵藤は海老根につけて東日本。稲垣-前田-中沢-西岡の近畿。これはどこからも狙えます。

 このようにしてスピノザが実例としてあげている夢遊病者の例が,確かに論理的に証明されている第三部定理二に対して,これを経験的な側面から補強しているということについては,だれも疑い得ないのではないかと思います。しかし一方で僕は,この例は,第三部定理二の経験的側面からの補強としては,ふたつの難点を抱えているように思います。
 僕が考えるひとつめの難点というのは,そもそもこの例が,夢遊病というものをその対象にしているという点にあります。これはとくにこの例に限ってというわけではなくて,一般的に経験的側面からある論理を補強するとするならば,その経験自体が,多くの人が経験するようなことであればあるほど優れているということがいえるかと思います。だれしもが経験するような事柄からの説明であれば,それだけ多くの人が納得できると考えられるからです。しかるに夢遊病というのはそうも多くの人が経験するわけではありません。もちろんこの場合には,自分自身が夢遊病であるという必要はなく,夢遊病者を見るということさえあるならば十分である,いや,むしろその方が重要であるとはいえるのですが,それが万人に共通であるというにはさすがに無理があるだろうと思います。よって,もしもだれしもが経験するような観点から,この第三部定理二を説明することができるならば,それは夢遊病という例よりも優れているのではないかと思います。いい換えれば,夢遊病という例よりは,もっと優った例があり得るということになると思うのです。
コメント
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