スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

妙手②&ことばの問題

2008-09-07 18:53:27 | ポカと妙手etc
 妙手の2回目は第21回朝日オープンの挑戦者決定トーナメント一回戦から。
 戦型は飛車先交換相腰掛銀。先手の攻めに後手が一時的に一方的に受けに回ったので,決まったのではないかと思われたところ,後手がぎりぎりに凌いで迎えたのが第1図。
           
 ここはおそらくこの将棋のポイントのひとつ。▲3三飛と打つ手と▲3五飛と打つ手,どちらも有力そうで迷ったのではないかと思いますが,▲3五飛の方を選択。▲3三飛に比べて,一気に決めにいく変化と思います。以下,△3四銀打▲3三桂成△2二金▲4二金△2一玉▲4三金で第2図。
           
 先手の攻めが決まったかに思えるのですがここで△5六銀と王手するのが妙手。▲同玉に△3五角打▲同飛△同角と無理矢理飛車を取り,▲5七玉△5六飛▲6八玉まで決めて△4三銀。先手は▲3八飛ですがそこで△3三金と取った第3図は,▲同飛成では△5八金で先手玉が詰んでしまいます。
           
 そこで先手は▲2二歩の王手。これを△同玉は▲3一角があるので△3二玉でしたが,先手は▲8七銀と手を戻さざるを得ませんでした。そこで後手は△3七歩と叩き,先手は▲2八飛と逃げましたが,この交換が後のさらなる妙手を呼ぶことになります。後手は△7六桂▲同銀△同歩で銀を入手し,▲2五桂の詰めろに△5七銀▲7九玉で第4図。
            
 ここで△2六飛とぶつける次の一手の問題として作ったような妙手がありました。これを▲同飛では△6八金で簡単な詰み。後手玉を詰ますためには▲3三桂成△同玉に▲2五桂と打つ必要がありましたがこれは△同飛で無効。仕方がないので先手は別の手順で後手玉を追いましたが詰まず,逆に即詰みに仕留めた後手が勝っています。
 米長邦雄永世棋聖は数多くの将棋を指していますが,この一局は棋士生活晩年の名局のひとつだろうと思っています。

 こうしたことを考える際には,ひとつだけどうしても注意しておかなくてはいけないことがあります。それがことばというものの問題です。スピノザというのは,あまりことばというものを重視しません。あるいは別のいい方をするなら,ことばというものにそう多くの信用をおいていないのです。そしてその理由というのは,第二部定理四〇備考二でスピノザが示しているように,人間があることばによって何らかの事物あるいは事象を認識するならば,これは表象すなわち混乱した観念であるというところにあります。よってスピノザはことばと観念をはじめとする思惟の様態とは異なるということを,口をすっぱくするほどにいい続けることになるわけです。そしてスピノザが,哲学的タームというものをわりと乱暴に扱うということの原因も,またスピノザの哲学には唯名論の傾向がることの原因も,この点にあるのではないかと僕は考えています。
 もっとも,同様のことは僕自身にも生じます。僕はスピノザの哲学に準じて考えていますので,これはある意味では当然でしょう。実際に僕は以前にことばの使い方がいいかげんだという批判を受けたことがあります。僕はスピノザがそのように定義していることば,またそうではなくても,ここで僕がこのことばはこのような意味に理解すると決定したことばについては,それ以外の意味では用いませんが,そうではないようなほとんどのことばについては特段に重視はしませんし固執することもありません。したがって,意味が決定されていないことばについては,読者の方が自由にそれをご自身の理解に近いことばにいい換えて構いません。少なくとも,あることばとそのことばの意味が,一対一で対応し合わなければならないというような考え方は,スピノザの哲学からかけ離れてしまうというように僕は考えています。
コメント
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