永井荷風の「夏の町」から:
「何処へ行こうかと、避暑の行先を思案している中、土用半ばに早くも秋風が立ち始める。
蚊遣りの烟に、なおさら薄暗く思はれる有明の灯影に、打水の乾かぬ小庭を眺め、
隣の二階の三味線を簾越しに聴く心持・・・・東京と云ふ町の生活を最も美しくさせるものは夏であろう。
一帯に熱帯風な日本の生活が、最も活々として心持よく、決して他人種の生活には見られぬ特徴を示すのは、
夏の夕だと自分は信じている。
蟲籠、絵団扇、蚊帳、青簾、風鈴、葭簀、燈籠、盆景のような洒々たある器物や装飾品が、
どこの国に見られよう・・・・」
明治43年の夏に書かれた小品です。倉嶋厚「日和見の事典」より
読んだ感想はいかがですか。
敢えてルビをふりませんでしたが、分からない言葉ありました?
いいですね。明治の人は。
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