ということで昨日まで、あることを知らなかったライブ配信をしかと見届けました。
試合のたびに「劇的」という言葉を通り越した、凄まじい試合の数々を見せてくれた「浪速のターミネーター」矢田良太、ついに引退。
この試合の結果にかかわらず、ラストファイトと決めていたらしいですが、対する日本スーパーウェルター級チャンピオン、松永宏信の闘いぶりは、最後にこの相手と闘えたことに対し、試合後矢田が感謝を述べていたとおりの、素晴らしいものでした。
初回から矢田良太の右が、けっこう際どいタイミングで飛ぶが、松永は打った後も足で外し、前のパンチは締めたガードで止める。
2回に右アッパーで矢田の顎を跳ね上げる。それ以降も、好打しても惰性で追撃はせず、しっかり見た上で外し、また攻める。
矢田というのは、攻防ともに不器用そうに見える(というか、実際不器用なのでしょう...)が、劣勢のさなかに、どういう「理」なのかわからないまま、突然「当たるパンチ」を見つけ、それを決めて相手を窮地に追い込む、という試合を何度もやってきました。
永野祐樹や別府優樹といったタイトルホルダークラスのボクサーも、それでえらい目に遭ってきたものです。
それはまさに「矢田劇場」と言いたくなる、理屈を超えた凄絶なドラマでした
しかし、矢田の試合を直に見たり、その動画をA-Signで配信してきた石井一太郎会長は、当然そのような矢田の姿をしかと見ていたでしょうし、その脅威を松永にも伝えていたのでしょう。
昨日の試合を見ていると、松永は何よりも「劇場」の開幕を避けるために、万全を期して闘っているように見えました。
試合の形式こそ、連敗中の元王者相手のノンタイトル戦、というものでしたが、ある意味それに見合わないほど、油断も隙もない姿は、驚くべきものでした。
6回、松永が残り1分くらいからストップ狙いの猛攻。
ラッシュ半分、コンビ半分という感じながら、休み無く1分弱の間、攻め続ける。
ヒットは取るが、無理に打ち込みには行かない。しかし休み無く打ち続け、矢田に反撃の機会を与えず、手を封じて、レフェリーがストップせざるを得ない状況を作る。
そういう冷静な狙いと、スタミナの消費を覚悟した決断力もまた、一級品の王者ならではのもの、でした。
王座返上と海外リングへの挑戦を宣言した松永宏信の、さらなる健闘に期待し、応援したいと思います。
試合後、矢田良太は松永と石井会長に対し、清々しい感謝の言葉を述べて、リングを去りました。
正直言って、引退のタイミングはこれまで何度もあった、と思ってもいましたが、傍目の勝手な見方には収まらない様々な思いは当然あって、今回の試合に至ったのでしょう。
そして、遂に、本当に、良い形で「劇場」の幕が下りた、のだと思います。
数々の熱戦、激闘、信じられないような展開の試合を、いくつも見せてもらいました。
ファンとして、改めて感謝したいと思います。お疲れさまでした。
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