ということでLeminoプレミアムでの配信となったフェニックスバトル133、割と地味目のカードが多く、メインに派手な試合する人を置いた、というラインナップでしたが、全体的に見どころある試合内容が連なりました。簡単に感想です。
WBOアジアパシフィック、スーパーフェザー級は王座決定戦。王者だった渡邊海が、日本チャンピオン奈良井翼とのノンタイトルマッチで敗れ、それを受けて王座返上し、決定戦に臨むという形。
相手は長身サウスポー石井龍誠。けっこう難しい相手だとは思ってましたが、渡邊が仕掛ける「斬り合い」に怯まず応じるなど、大胆な闘いぶりで、場内を沸かせました。
互いに離れ気味の間合いでリズムを取り、隙を見て斬り込もう、という腹で、見合う時間の合間に、散発的に打ち合う。
組み立てがない、と言えばそうですが、場面毎のスリルは相当なものでもあり。見ていて面白かったです。
7回、石井が仕掛けて、それを受けた渡邊がボディへショート連打。一歩引いて間を空け、左フックの振りかぶりで石井を誘い、左の相打ち。
構えよりも小さめに振ったパンチで石井を倒す。ダメージ深い石井、立てず、KOとなりました。
このフィニッシュは強烈。リスクが高い、無茶、勘頼り、である反面、「紙一重」の局面で、何度も倒して勝ってきた、渡邊の良さが存分に見えました。
まあ、この上この先、という話を持ち出せば、この極端で偏ったボクシングでは、という危惧もしますが、他の選手にはない技と持ち味、そして天与のパンチ力はやはり魅力的でもあります。
今回は互いに、僅かずつフォームが乱れ始めた段階で仕留めましたが、以前なら序盤が過ぎたらバラバラだったものが、今は中盤に来ても倒せている。
結果として、ではありますが、その辺は進境と言って良いかもしれません。
日本スーパーバンタム級も王座決定戦で、石井渡士也が福井勝也を最終10回にTKO。悲願の日本タイトル獲得となりました。
福井の技巧と好打も目につきましたが、やはり全体的に石井がヒット数で上回り、合間のジャブも決まって、確実にリードしていた内容。
最終回のストップは、場面だけ切り取れば早い、となりますが、積み重なったヒットの頻度と数を見れば、仕方なし。
比較すれば少し身体の力で劣った感のある福井ですが、再三コンビネーションの右を決めていて、健闘だったと思います。
石井は晴れて日本チャンピオンとなりましたが、全体的に力まず、冷静に闘えていたのは良い反面、やはり打たれる頻度はもうちょっと下げたいところ。
パンチのある相手だったら、これでは保たないんでは、という印象も残りました。今後への課題ですね。
日本スーパーフライ級、こちらも王座決定戦。高山涼深の王座返上により、一ヶ月前に確定したカード。
1位山口仁也に対し、2位吉田京太郎は先月18日にも試合をしている(タイ人に初回KO勝ち)という、最近ではあまり聞かない話でした。
サウスポー山口の手数とボディ攻撃、吉田の正確なカウンターからの追撃、拮抗した内容。
6回、山口がボディ攻撃を端緒に、1分以上ノンストップで打ちまくる猛攻。見ていて驚くしかない闘志と体力。
しかりこれを凌いだ吉田、9回には左右連打で右ショートを二発当て、ダウンを奪う。
最終回、ダメージ深いはずの山口がまた前に出て、3分間吉田を抑えきる。判定はこのぶん、山口に行ったか、という印象。
多少数字は違いましたが、勝敗自体はその通りで、3-0で山口が新チャンピオンとなりました。これも激戦でありました。
アンダーカードでは、かつてWBAフライ級の1位まで行ったんでしたっけ、今はIBF11位のデーブ・アポリナリオが、中国のロンギ・フーの猛アタックを受け、3回に軽い(と見えた)右でダウンし、追撃されて二度目。そのまま立てず、KO負け。
決してアポリナリオに目が無かったわけではなく、初回、左アッパー効かせたりもしていました。
しかし、その後の追撃では、自分が打ちたいパンチだけを打っている。これでは詰め切れない。
相手が首振って力を逃がしているのを見たら、すぐボディ狙いに切り換えるとか、緩急付けてガード動かして狙うとかすれば良さそうなのものですが、そういう考えが見えない。攻防ともに、言えば「なんとなく」ボクシングをやっている、という。
もちろんフーの闘志、猛攻が番狂わせを起こしたという試合ですが、相手が来たら安易にその間合いを受け容れてしまうアポリナリオの甘さ、構えの緩さは以前からのもの。
長谷川穂積は気遣いもあってか、世界戦KO負けのダメージが、という推測を語っていましたが、残念ながらこの人、その前からこんな感じでした。
大橋会長、残念ながら貼る札間違えた、というところかもしれません。センスや才能はあるが、同時にこういう甘さを抱えた選手というのは、少なくとも世界云々のレベルになると、ちょっと難しいですね。
大橋ジムの岡聖、元国タイ王者じゃなくて国体王者(なんという変換でしょうか...)だそうですが、デビュー戦はスリーパンチで速攻の初回KO勝ち。
相手のタイ人の倒れ方はまあ、どうこう言うのも辛いところですが、岡自身の力はなかなかのものに見えもしました。次回に期待。
井上尚弥の幼馴染みで知られる山口聖矢、右ロング一発で初回KO勝ち。パンチに身体の膂力を乗せる打ち方は、以前も見たとおり、なかなかの威力。
第一試合は台湾出身、渡嘉敷ジムの劉家瑋が、大橋ジムの竹澤大治郎を4回TKO。初回にダウンを奪い、4回は好機に右アッパー連発でKO。見事でした。
渡邉海くんはまだ若さ、無謀さも残しつつ5、6ラウンドにジャブやバックステップで立て直し計ったのは少し大人になったのかなと。あの最後の左フックはインパクト強かったですね。よく見たら少し頭の位置を後ろに逃していて、このあたりもやや修正加わったのかなと。良き素材なのは確かなので思い切りの良さを残しつつ、ボクサータイプの色が部分的に加わって良い塩梅の試合運びできるようになって欲しいです。
山口くんと吉田くんは面白かったですね。ボディ効いて陥落するかと思ったら吉田くんの見事な右からの連打。この試合は再戦して欲しいですね。前の試合からひと月で試合臨んだ吉田くんはもっと調整してやりたいでしょう。
アポリナリオ…残念ながらこの選手はよほど意識変わらない限りもう無理でしょう。世界ランカーとして負けるような相手に見えませんでしたが、ずいぶん簡単に倒れたなと。矢吹さんと先日試合したアヤラにも負けてましたが、あん時もボディか何かでしたし、弱いなあと。タフネスの意味の打たれ弱いというより根性とかメンタルが脆いようにも見えます。
確かに渡邊海、中盤に入ってちょっと考えてペース変えましたね。ああいう知恵がついて、安定したフォームを維持出来るとしたら、もっと怖い存在になりそうです。石井龍誠も恐れずに打ち合ったので、スリルある試合になりましたが、その中でも一枚上手、だったと言えるかもしれません。
山口と吉田は、双方名を上げた試合になったような。山口の長いラッシュ、吉田の合わせ、どちらもそれぞれの持ち味が存分に出ました。
アポリナリオは、好きにやれる試合だと相当強いし、そこを見てスカウトしたんでしょうが、仰るとおり才能以外の部分で不足ありでした。こういう選手、時々いますね。惜しいなあ、と思いもしますが。