ということで、みんなの憧れ、ウェルター級。
マガジンによるエントリー、一回戦の組み合わせは以下の通り。
フロイド・メイウェザーJr.vsヘンリー・アームストロング
フェリックス・トリニダードvsホセ・ナポレス
シュガー・レイ・レナードvsオスカー・デラホーヤ
パーネル・ウィテカーvsマニー・パッキャオ
フロイド・メイウェザーについては、拙ブログでもカテゴリひとつ設けて、長年に渡り「ウォッチ」してきた対象です。
良い表現をすれば、ボクシングという競技形態の中で、ひとつの極限にある「天才」を体現する、希有なる存在です。
しかし...まあその辺は長くなりますし、今更という感もありますので省きますが。
動画、ひとつだけ貼っておきます。
この人、ロイ・ジョーンズとも通じますが、ハイライトで見ると、実際、リアルタイムでフルラウンドの試合を見たときよりも、ずっと見映えが良いですね。
まあ実際、
ていうか、素直に感心せえよ、と言われれば返す言葉もないですが。
※動画貼り替えました。こちらの方が画質が良いので。
対するは三階級同時制覇のヘンリー・アームストロング。
フェザー、ウェルター、ライトの順で連続して世界王座を奪取。
ルー・アンバースに勝った時点で、確かに三階級の世界タイトルを同時に保持していたことになります。
その後、ウェルターで19度防衛を果たした伝説のファイター。
ただし当時から、短期間で防衛を重ねる中、挑戦者の質が疑問視されることもあった、とのことですが。
試合ぶりは前進して身体を寄せ、打ちまくるというもので、この時代の中でも抜きん出てタフで、スタミナがあったとのこと。
動画は正直、あまり見ようとも思わなかったですが、今回検索してみると、ミドル級で引き分けたセフェリノ・ガルシア戦や、バーニー・ロス、ルー・アンバース戦なんかにカラーをつけた?動画などが色々とありました。
皆さん、色んなことして楽しんではるんですねえ(笑)。
引退後、確かハーンズが史上初の4階級制覇に挑む前、マガジンに、林一道氏によるインタビューが載っていて「ハーンズの幸運を祈る」と語っていたのを覚えています。
見た目は厳つい老人でしたが、同席した奥さんのバイタリティに圧倒されていたり(笑)気の穏やかな人なんだろうなあ、という感じでした。
ただ、メイウェザーと対戦となると...まあ、仕方あるまい、というところでしょうね。
その凄まじい闘いぶりに敬意を払いたいのはやまやまなれど。
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こちらはプエルトリコ史上最強のパンチャーかもしれません、みんな大好き、フェリックス・トリニダード。
無理な筋肉をつけない柔軟な体つきから、当て際で伸びて撃ち抜く左右の強打と、打たれたらサクッと倒れる打たれ脆さを併せ持ち、でもすぐ立ってきて逆襲する。
その試合ぶりはスリルに溢れ、実に魅力的でした。
こちらは主要試合のハイライト。正味12分弱。負けた試合はもとより、逆転して勝った試合のダウンシーンも外してあります。
この辺は「わかってないなぁ...」と思うところですね(笑)。
ウェルター級時は無敗で乗り切っていて、デラホーヤ戦がラストでしたが、この頃は減量もきつかったのでしょうね。
唯一、アイク・クォーティー戦が見たかったですが...同時代にその強さをつぶさに見られて幸福だった、と思えるチャンピオンでした。
個人的にはマヘンギ・ズル戦のノックアウトが一番好きですね。左フック二発によるフィニッシュですが、独特の「間」を感じるKOシーンでした。
そして対するがキューバ生まれ、メキシコ亡命により開花した技巧派のKOアーチスト、ホセ・ナポレス。
以前、亡くなったときに少し記事で触れましたが、もしキューバ革命が起きず、キューバで闘い続けていたら、技巧派の選手としては評価されても、歴代屈指の名王者にはなっていなかったかもしれません。
実際、レコード見たらキューバ時代は判定ばっかりです。メキシコに亡命して以降、明らかに闘い方を変えたのがわかります。
ナポレスに限った話じゃないですが、昔の選手の動画を探すと、どうしても画面の縦横の比率が違うものが多くて、気になります。
その中でこれは、きちんど当時のサイズに合っているので、ご紹介。
2分52秒くらいから始まり、唐突なストップで終わる(バッティングによる出血だが、当時のルールでTKO負け)試合が、ビリー・バッカスとの初戦。
次が再戦です。
防御に自信があり、前に出る頻度が高い割りに打たせない。しかしその自信がやはり仇となることもあり、傷については数少ない泣き所でした。
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さて、80年代黄金の中量級シーンにおいて、メインキャストとして活躍したスーパースター、シュガー・レイ・レナード。
アリが晩年を迎えたボクシング界が求める、明朗快活なニューヒーローの役割を全うして見せた、実力とスター性を兼ね備えたボクサーでした。
引退と再起を繰り返した後年、毀誉褒貶に晒された時期もありますが、それも含めて、このボクサーの持つナルシズムは、ビジネスの算段を時に超越し、蹴たぐってしまう「頂点への挑戦」への意志に貫かれてもいて、再起即ハグラー挑戦という、当時誰もが無謀と思った一戦での僅差勝利など、好悪を超えて畏敬の念を抱かざるを得ないものでした。
ただし、この、ボクシング界全体が価値観の転換期を迎えた、という意味で時代の岐路となった一戦の後、レナードは記録達成や、自分のコンディションの限界を糊塗するための政治的策謀により、そのエゴイズムを批判されるようにもなりました。
皮肉なことに、時代は変わり「ハグラー的」な価値観を捨て「レナード的」なものにボクシング界が靡くようになったのに、まさにその時、その時代を担う力量が、当のレナードにはもう、残っていなかった。
実質、そのキャリアの終焉となったノリス戦は、その現実が如実に表れた一戦でした。
しかし、そういう話より前、ウェルター時代はベニテスとの緊迫の攻防、デュランとの連戦、宿敵ハーンズとの名勝負など、ただただ輝かしいキャリアを残しました。
今回の顔ぶれの中で、心情的にナンバーワンに推したいのは、やはりこの人です。実際の対戦を想定するとあれこれあるにせよ。
ざっと見てみると、改めてベニテス挑戦への過程で、それが近づくにつれ、徐々に「仕上がっていく」様は見事だなあ、と思います。
試合数自体も多いですが、ランザニーやプライスといった強豪と当たる段階で完成に近づき、タイトルマッチでピタッと嵌まる、というか。
この辺はマネジメントやトレーニングの環境が最高だった、と言えるでしょう。また、レナードがそういう環境を得るに相応しい逸材だったのだ、とも。
で、対するのが90年代、レナードが去ったボクシング界で、その後継を期待された「ヒスパニック版レナード」オスカー・デラホーヤ。
この人のベストはライトかスーパーライトで、ウェルターでも優れた王者ではあったが、真に唯一の頂点に立てたか、というと、僅かながら届かず、というところだったかな、と思っています。
ウィテカー戦やトリニダード戦において、実際の勝敗や内容の優劣とは別に、その限界が見えたように思います。
名勝負となったクォーティーも、倦まずに逆襲の機会を狙い続け、最終回に猛攻した姿に感動はしたものの...という。
しかしその全キャリアを通じて、時代が求めるスターボクサーとして健闘を続けたことは、称賛に値すると思います。
ホプキンスと、メイウェザーと、しまいにはパッキャオと闘って見せてくれたわけですから。
なんのかんのといって、これは良い試合だった、ということでクォーティー戦。
ゴールデンボーイ、全キャリアを通じて最高の試合だった、と思います。
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こちらも、ウェルターに持ってくるんか、と思ったりもしますが、パーネル・ウィテカー。
この人もすでに故人ですね。なんともかとも...。
昨年、亡くなったときに少し触れた記事に、思うところはだいたい書きました。
ウェルターでの「ベスト」といえば、その記事に貼ったチャベス戦が一番わかりやすいと思います。145ポンドでしたが...。
当時、誰と闘ってもこの感じになってしまうんやろうか、と思ったものですが、デラホーヤ戦では、論議を呼ぶ判定ながら、大柄な相手が手数で押し込んでいけば可能性はある、ということも見えました。
そしてトリニダード戦では、しっかりと攻略されてしまいました。これは晩年、仕方ないところでもありましょうが。
最後に来るのが、まだ現役「アームストロングの再来」「アジアのデュラン」マニー・パッキャオです。
デラホーヤ戦以降、ウェルター近辺で大きな試合を闘っていますし、その闘いぶり、勝ちっぷりはもとより、負けた試合でも強烈な印象を残す。
あらゆる意味で規格外のスーパーボクサーですね。
ベストと言えばハットン、デラホーヤ、コットにマルガリート戦あたりでしょうか。本当に、どこまでも天高く飛翔していた、というイメージです。
この頃にメイウェザーと闘えていればなあ、とは、いまだに思うところですね。
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実際の対戦、あくまで私見ですが、メイウェザーがアームストロングの猛攻を外して勝ち。
トリニダードvsナポレス、どっちも好きですが(誰もそんなことは聞いていない)、ベストならナポレスがカウンター決めて競り勝つか。
レナードvsデラホーヤのスター対決、レナードがスピードで勝る。
ウィテカーvsパッキャオは、パッキャオの爆発的スピードがウィテカーの防御勘を僅かに狂わせ、パッキャオ。
準決勝、メイウェザーvsナポレスは、前進してくるナポレスに対し、メイウェザーが止まって食い止めようとするも難しく、頑張って動いて捌き、辛勝。
ナポレスは追い足の部分に若干の不足あり。
レナードvsパッキャオ...難しいですが、パッキャオのワンツーに、レナードがアングルを変えつつ速い連打で対抗。足も使えるレナードが逃げ切るか。
決勝、メイウェザーvsレナード。夢対決のひとつ。
止まって外し、マイペースで闘いたいメイウェザーに、レナードがその想定を超えた高速連打でまさるか。
足使い合ったら、このクラスではレナードが速い。
メイウェザーは相手が自分以上に速く、リードパンチを外せないとき、ファイター化して捉えにかかり、またその展開でも地味に強い。
しかし、そのスタイルではレナードを捉えきれない。
従って微妙ながらレナード。
ベストの比較という前提、そしてウェルターでという縛りでは、こういう風に思いますが、如何でしょうか。
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あと、ベスト8に入れないのは納得していますが、個人的にウェルター級の歴史上、もっとも印象的なノックアウトってこれじゃないか、と思う試合の動画。
お察しの通り、ドン・カリーvsミルトン・マクローリーの世界ウェルター級王座統一戦です。
レナードvsハーンズ戦に続く、ウェルター級の頂点を決めるスーパーファイトは、違った趣きながら、鮮烈な印象が残る結末になりました。
以前も貼ったことあると思うんですが、本当に、後にも先にも、これ以上のものを見たことがあるのかな、といまだに思う、見事なダウンシーン。
この試合を見て、近い将来「帝王」ハグラー打倒を果たすのはこの男なんじゃないか、と思ったし、そういう評が世界的に広まった時期が確かにありました。
実際には、多くが見たとおりの夢は、実現せずに終わるわけですが。
あと、同級史上最高の試合といえば、当然レナード、ハーンズ第一戦です。
今更紹介するまでもないんですけど、一応貼っておきます。
当然、フルラウンドで見るべきものです。未見の方、もしおられましたら、お時間あるときに是非。
ただメイ、、ボクシングマガジンに書いてある通り、強いから面白いとは限らない、確かにその通りです。ロイジョーンズは(ヘビー級あたりは別ですが)メイよりエンターテイメント感はありました。ただメイはお客さんを見ていない。あのUFCの人とやる前の実質最後の試合、香川照之さんのラスト10秒の嘆きが忘れられないんですよね。だから希望も込めてパッキャオ様が優勝で。
と思いましたが、他の階級はみんなすごいですからね。
どこで間違えたのでしょう。
メイウェザー1位というのは、そういう基準で見ればそうなんだ、ということですね。納得しない、というのは理屈では難しい。でも...という気持ちですね。
カネロはデビューはウェルターでしたかね。スーパーウェルターで入れればいいか、とは思います。でも外しても構わない(笑)まあ、スーパーミドルに「でも」入れとけ、ってなものだったんでしょうかね。スーパーウェルターに入れると輪島さんが以下略になってしまう、ということもあったのでしょう...か。