さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

「世界王者」を見たいから、彼を見る ロマチェンコ、英国で難敵を撃退

2019-09-02 08:18:29 | 海外ボクシング




ということで、昨日は早朝からWOWOWオンデマンド生中継を見ました。
簡単に感想。


ロンドン五輪ライト級金メダリストのワシル・ロマチェンコと、バンタム級のルーク・キャンベルの対戦。
しかし相対すると、階級逆ちゃうの、と思うくらい、キャンベルの方が大柄。

キャンベルはスタンス広め、大きく構え、右をリードする、というか、高く掲げて前に出し「見せる」ことで、距離を維持しようという構え。
とはいえ、それで試合を最後まで乗り切れるわけもなし。

キャンベルのこれまでの試合ぶりを見るに、結局は左アッパーをいつ、どこに、どのくらい当てられるのかが問題、と見ていました。
迎え撃ちなのか、出て当てるのか。上狙ってもなかなか当たらないとなれば、当然ボディを狙うことになるが、それをロングで狙えるものか。
ショートだと、ロマチェンコの上下連打と渡り合うことになるが、その攻防でまされるものか、と。

対するロマチェンコは、いつもどおり、足使って回っているかと思えば、前に出て圧力をかけたりと、自分の望む展開をそのまま実現してしまう、圧倒的な巧さと強さを見せていましたが、序盤はというと、キャンベルの距離構築を、ちょっと受け容れてしまった印象。
手数はあまり出ず、キャンベルの左フックなどが目につく。

しかし3回から、はっきりと優勢に立つ。驚くほど振りの小さい左でキャンベルの顔を跳ね上げ、4回はボディ攻撃の応酬ながら打ち勝つ。
5回はキャンベルのボディブローに対し、上への、これまた振りの小さい左を合わせ、即座にボディへ追撃。キャンベルがロープ際に後退。

この一連の攻防で、キャンベルも体格を生かし、得意のボディ攻撃を見せているにも関わらず、毎回のようにそれを上回る技量を見せるロマチェンコに、改めて感嘆させられました。いやー、この人やっぱり凄いなぁ、と。

この流れのまま、中盤か終盤、どこかでストップになるやろうなあ、と思って見ていたら、7回に波乱というか、攻め込まれたキャンベルが、体勢を崩し切られる直前に踏ん張って放った左アッパーが、ロマチェンコのボディに命中。
あの体勢から打ち返してくるとは、さすがのロマチェンコも思わなかったようで、足元が乱れ、自分からクリンチに行き、後退する。

ところがここからの反撃が早い。ボディを返し、右フックを頭部に打ち込み、またボディ。
密度の濃い、激しい攻防でしたが、またしても、さすがロマチェンコ、と終わってみれば感嘆。同時に、キャンベルの健闘も見事なもの。

8回以降、キャンベルがさらに奮戦。ファイター寄りの構えで攻めてくるロマチェンコに、左ボディ、右ボディの連打を、距離の長短を即座に変えて打ち分けたのは見事。
ロマチェンコは攻め落としたいが、キャンベルも負けじとヒットを取る。

しかし11回、均衡崩れ、ロマチェンコが距離を潰して入り、インサイドへボディ連打、追い回して打ちまくり、右でキャンベルが膝をつく。
最終回、ローブローや足払いでなんとか逃れたキャンベルを仕留められずも、クリアに抑えて、ロマチェンコが勝利しました。



ポイントはいずれも大差だったようですが、内容的には、キャンベルの健闘も印象的でした。
地元英国での試合ということもあったでしょうが、体格、リーチの差を生かした展開構築は、離れた距離から始まる攻防においては、ロマチェンコと互角か、ことによってはややまさっていた部分もありました。
地味ながら、実は怖いタイミングで色々狙っていた場面も含め、持てる力を全て出し切った試合ぶりでした。
ライト級の情勢が、王者同士の対戦がない、4分割されたものだったら、そのうちのタイトルひとつを握っていても何ら不思議の無い実力を証明したと思います。



ロマチェンコはこの勝利で、WBC王座も獲得し、三団体統一王者となりました。まあ是非論は様々にあれど、ライト級という伝統階級に、統一王者としての重責を担うに相応しい王者が登場した以上、なんであれベルトがひとつにまとまり、アルファベット要らずの「世界ライト級チャンピオン」が誕生して然るべき、でしょう。そういう意味では、WBC王座決定戦だったことは、喜ばしいことでした。

次のIBFタイトルマッチの結果で、リチャード・コミーとテオフィモ・ロペス、どちらかがロマチェンコと対戦することになるのでしょうが「その後」については、実況の中でも触れられていたとおり、ボブ・アラムがなんやかやと、妙なことを言っていたようで。
やれ相手がいないからスーパーフェザーや、フェザーに下げるとか。その場合、という話で、井上尚弥の名前もちらっと出たとか。
まあ、ロペスが勝った場合に、ロマチェンコ戦を先送りにして、違う階級で戦わせたい、という予防線の意味があるのかもしれませんが...。

いずれによせ、商売人の言葉やな、というだけの話ですが、まともに取って言わせてもらえば、ロマチェンコほどの選手ならばこそ、やれ「ダンスパートナー」がいないからその都度転級とかいう、いかにも当世風なお話とは、無縁の世界に生きていてほしい、と強く思います。

ホルヘ・リナレス、ホセ・ペドラザ、アンソニー・クロラ、そして今回のキャンベルと、世界上位やタイトルホルダーとの対戦において、ロマチェンコはそれこそ昔日の「世界ライト級タイトルマッチ」と同等の試合内容、グレードを示し続けています。
ならばこそ、次にコミーかロペスと戦い、その後もライト級に根を下ろし、デビン・ヘイニーやライアン・ガルシアのような新鋭、下の階級の王者ジェルボンタ・デービスのような相手と戦い続けることで、真の「世界王者」としての価値を、これからも示し続けてほしい、と。

もちろん、いかにロマチェンコといえど、これらの相手に全て勝てるとは限りません。
プロ14戦、そのうち13戦が何らかのタイトルマッチという濃密なキャリアを経て、その疲弊から、ロマチェンコの生命線である速さ、柔軟な攻防動作、そして何より足捌きに衰えが出て、衝撃的な敗北を見る可能性も、ゼロでは無いでしょう。今回の試合内容に、その萌芽があった、と見ることも出来るのかもしれません。
しかしその場合にも、真に世界の頂点を争奪し、勝ち続けてきた王者を破って誕生した新王者に、我々ファンは、「真」の王者に対する期待と敬意を抱くことが出来ます。

何かと余計なことばかり(細かい話をし始めると、本当にキリが無いくらい、各団体それぞれにすっぽ抜けてはりますね)のボクシング界ですが、これほど圧倒的な技量と力量を持つ王者には、それに相応しい「王道」があります。
ワシル・ロマチェンコに対する期待は、その道を堂々と突き進んでほしい、ということに尽きますね。


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日曜早朝の早起き観戦は、なかなか厳しいものがありましたが、起きて見て良かった、と思う試合でした。
セミのヘビー級の試合は、正直言って、二度寝タイムでしたが...。
セミセミのWBCフライ級戦は見られんものか、と思っていましたが、何だか妙なことになったようですね。
メキシコでやってたら、何事もなかったように新王者誕生、だったのかもしれませんが。




コメント (6)
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