さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

「二極化」の流れ止まらず、悩ましい現状を見た 西日本新人王決勝2019観戦記

2019-09-16 11:48:50 | 新人王戦



ということで、昨日はせっかくの連休、昨日と今日で複数の興行が重なる関西リングということもあり、どれかひとつくらい見に行かんと、と思い、予定の空けられた昨日、府立に行ってきました。
西日本新人王決勝戦です。こちらの記事に結果がありますが、とりあえず見てきた感想などを書いておくとします。


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ミニマム級は、最軽量らしくなく、パワーを押し出してくる初田翔(寝屋川石田)が、2-0で勝利。

今回、この決勝まで勝ち残ったグリーンツダ勢のひとり、木村彪吾は技巧に優れた選手だが、相手のパワーに影響されたか、心持ち動きが硬めに見える。
初田はリーチがあり、大柄で、強振してくる。木村は速いパンチを返すが、離れたらリーチが嫌で、接近してもパワーのある初田に、ちょっと迷った印象も。
3、4回と進むにつれ、身体を寄せての打ち合いが増える。木村は巧いブロックを見せ、右のヒットもあるが、初田のボディブローや左ダブルの威力も印象に残り、そちらが評価された、という結果。
さうぽん採点は迷いつつ38-38でした。どちらもタイプが違うが好選手同士で、順調に伸びてほしいと思います。



ライトフライ級は、表祥(おもて しょう/SFマキ)が初回TKO勝ち。

5勝1敗の表に、1勝5敗の岩崎零(明石)というカード。
新人同士、いざとなれば勝負はわからん、とも言えましょうが、早々の打ち合いで、やはり当て勘、防御の差が出て、表の右ストレート、返しの左が続けて決まり、岩崎ダウン。
表が追撃の連打、レフェリーがストップ。岩崎はレフェリーの腕を振りほどき悔しがっていましたが、これは残念ながら妥当、と見えました。
短い試合ながら、果敢に打ち合っていましたし、伝わってくるものがある闘いぶりでしたが...。



フライ級は神崎靖浩(倉敷守安)が3-0判定勝ち。

サウスポー森青葉(泉北)は、左当てて回る、まずまずのスタートだったが、徐々に神崎が右リードを上下に散らして主導権を引き寄せる。
神崎は右ボディから左フックを返し、右のヒットを重ねて抜け出す。
師匠と違い(笑)かちっとしたスタイルで冷静な試合運びが光りました。
爽やかな姓名が印象的な森、序盤の展開を維持したかったところ。



スーパーフライ級は岩崎圭佑(オール)が3-0判定勝ち。

三浦勇弥(ハラダ)と、体格が似通っていて、距離が合い、噛み合う印象ながら、スピードで岩崎がまさる。
三浦はパンチを溜めて打つ。左ボディの好打は威力を感じたが、岩崎のスピードに阻まれ、残念ながら数が少ない。
岩崎は常に先手。構えから最短距離を通るジャブが冴え、右から連打とヒットを重ねる。
最終回、三浦も奮起し打ち返すが届かず、終了。



バンタム級は森田翔大(森岡)が初回KO勝ち。

サウスポー岡本大智(井岡)に対し、早々からビジーファイトを仕掛けた森田、忙しなく手を出し、クリンチになっても攻める。
岡本を守勢に追いやり、右から返しの左を決める。岡本ダウン、ダメージ深く、カウントアウト。
見事な速攻での勝利で、MVP受賞。



S・バンタム級は、津川龍也(ミツキ)が不戦勝。中山廉温(倉敷守安)が棄権したため。
フェザー級も、今回の注目選手だった強打のサウスポ-、前田稔輝(グリーンツダ)が不戦勝。
こちらも切東功之介(井岡)の棄権による。



スーパーフェザー級は岸田聖羅(千里馬神戸)が3-0判定勝ち。

三尾翔(グリーンツダ)が、長身の岸田に右ヒットして先制。
しかし岸田、ジャブを決めてクリンチ、という流れを数回繰り返し、試合展開を「冷ます」。
三尾は流れを戻そうと攻めるが、岸田がよく見てジャブ、ワンツー、左フック、ボディ打ちも。

3回、三尾がボディを攻め、岸田も返すが、ローブローになり、休憩あり。
この後、4回まで打ち合いになり、三尾の右カウンターも決まったが、総じて岸田の左ボディなどが多く決まっていた。

岸田は初回の立て直しを含め、終始冷静に試合を運んでいて、新人らしからぬ、と見える落ち着きぶりが印象的。
技能賞受賞とのことですが、個人的にはMVPもありかな、と。



ライト級は藤田健介(千里馬神戸)が2-1判定勝ち。

石川耕平(オール)は34歳という年齢に驚き。
心中期するものあり、ということか、闘志が伝わってくる奮闘を見せましたが、色々あって惜敗でした。

肩幅広く、良い体格の藤田が左ジャブ、フックで先制。2回に左フックで石川がダウン。
再開後、藤田が追撃、ダメージありの石川が再びダウンか、スリップか、という場面で、レフェリーが割って入ったあとだというのに、勢い余った藤田が左を打ち込み、石川さらにダメージを負う。
悪質な反則の場合に適用される、減点2の処分が藤田に下る。適切な裁定。さすがにこれはいかん、というところ。

1分休憩の後、再開。石川、足元が定まらないほどでしたが、ここから奮戦。
3回は藤田のボディ打ちを堪えて手数を出す。
4回も、藤田の派手なアッパーが出るが、石川もインサイドに右ショートを返す。

判定は37-36で割れ、2-1。
さうぽん採点は、初回10-9藤田、2回10-8藤田ながら、藤田から減点2で、8-8。
3回、迷うが10-9藤田、4回10-9石川で、合計すると37-36で藤田。

ひょっとすると逆もあるのか、と思ったくらい、石川の奮闘は印象的でした。
勝った藤田は、ダウン後の加撃がなく、すんなり勝っていればMVPものでしたが、ちょっと残念。

これで千里馬神戸は二階級で新人王獲得。しかも、共になかなかの好選手。今後に期待します。



スーパーライト級は、高橋拓也(寝屋川石田)が不戦勝。暴礼ゲンキ(グリーンツダ)が棄権。
ウエルター級も、安井誉(森岡)が不戦勝。市川友也(アポロ)が棄権。



ミドル級は、国本泰幸(金沢)が3-0判定勝ち。

体格抜群のサウスポー、関涼太(陽光アダチ)だが、初回、左をミスしたところに国本が右をヒット、ダウン。
手が届けば連打が出るが、リードパンチがなく、それ以外の距離では手が出ない関に対し、国本が散発的に右をヒットしていく。
関はダメージか疲れか、最終回には何も無いところで膝をつくなど、ちょっと心配になるほどでした。



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全体の印象ですが...まず不戦勝が4階級も、というのは、ちょっと多いなぁと。
フェザー級の前田稔輝のような注目選手の試合が飛んでしまうと、見る側としては、やはり辛いところ。
また、強打を秘めるとはいえ、アマチュア経験が多いわけでもなく、プロでも2戦しかしていない新人選手の、貴重な試合の機会が、こういう形でなくなってしまうのは、残念としか。


あと、階級によっては、ですが、西日本の段階とはいえ、新人王決勝とついた試合に、こういう戦績の選手が出てくるのか、と思うカードが、以前よりも増えている印象。
もちろん、これまでも「えらい組み合わせになってしもうたな」と思うことはありましたが、あくまで「たまに」でした。
しかし今回、パンフレットで出場選手の戦績を一目見ただけで、勝ち星が1勝しかない選手がけっこういて、これはちょっとなぁ、と改めて考えてしまいました。

それは新人王戦の出場資格、その規定がかなり変更されたことも影響しているのでしょう。
実質、アマチュアの有力選手を排除するような規定になっています。
インターハイ王者など、高校までのタイトル獲得者は出場出来るのですが、同時に戦績が40勝以上だと出場不可。
さらに、成年の戦績だと、これが20勝まで。
従って、このクラスの選手でも、普通にトーナメントに名前を連ねていた頃とは違い、今は実質、俗にいう「プロ叩き上げ」選手中心の新人王を決める大会になっています。

88年から89年にかけて行われた大会だと、アマチュアで53勝5敗のピューマ渡久地を含め、鬼塚勝也に川島郭志といった面々が揃って出場していて、後になんと豪華な顔ぶれだったのか、と振り返られたものですが、最近の新人王ではなかなか、ああいう現象は起こりえません。
伊藤雅雪を始め、アマチュア経験が無かったり、少なかったりする事例も皆無ではないですが、昨今のキッズボクシングからアマチュアを経てプロ転向、という流れを経る選手が増えている趨勢を考えると、出場資格の見直しなど、新人王戦の在り方を見直す時期に来ている、と思います。

個人的には、アマチュア戦績、それもジュニア年代で40勝したくらいで、新人王に出られない、なんていうのはナンセンスだと思っています。
極論すれば、それこそ五輪や世界選手権でメダル獲った、とか、全日本連覇した、とかいうでもないなら、新人は全員、出場して良し、くらいでも、と。

しかし、昨今のさまざまな情勢下、有力選手が一部大手ジムに固まり、大手が「独自路線」を行き、中小がトーナメント大会やユースタイトル関連を頼りにしている、という現状、こういう二極化、分断化が止まることはないのでしょう。

そして、それだけが原因だとは言いませんが、出場選手層の薄さを反映するように、昨日の会場は、西日本決勝としては、若干寂しい客入りでもありました。
以前なら決勝と言わず、準決勝の段階で、昼夜二部興行が大盛況のうちに行われ、全階級で20試合になろうかという興行を全部見るのが年に一度の楽しみ、今日が関西ボクシングマニアの正月や、というノリの知り合いもいたものですが、今や選手個人を応援する方々、立ち見や自由席は盛況ながら、指定席はガラガラで、全試合通しで見ている第三者的観客はもはや、少数民族と呼称されてやむなし、でした。

こういう現象は、何も新人王戦に限った話ではありません。
しかし、昨今の日本ボクシングが置かれた状況を、この大会もまた「露呈」しているなあ、と思ったのも事実です。
ライブで試合を見る楽しみを感じつつ、複雑な思いになってしまった、昨日の観戦でした。




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