さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

「鬼気」の猛攻止まず 田口良一、1位挑戦者を沈めV6

2017-07-25 19:23:18 | 関東ボクシング



こちらは日曜日、ディレイでの放送となった田口良一の試合ですが、
相変わらず「鬼気」迫る、としか言いようのない闘いぶりに、またしても圧倒されました。


ロナルド・バレラは、前回の挑戦者だったカルロス・カニサレス戦をフルに見た限り、
一定以上のレベルにあることは確かで、WBA1位のランクもまあまあ、頷ける感じ。

スラリとした体型で、好きなスタンスを取れていると、ポンポンと手が出る。
ナチュラルにパンチ力があるとまではいかないが、パワーもけっこうあるか。

しかし、対田口となると、もっとはっきり足使って動く方が良いかな、とも。
なまじ当てるのが巧いし、力もあるから「来て」くれると、田口にもチャンスがある。
そんな印象でもありました。


立ち上がりはバレラがスイッチしながら動いて当てる。強めに打ってくるパンチもあり。
さてこれを、試合のどの段階で止めて、巻き込めるかで勝敗が決まる...と思っていた
初回半ばに、田口良一の左ボディが、芯食って入ったように見えました。

バレラはここで、昨年大晦日のカニサレスのように、動いて捌くことに専念する、
という切り替えをせず、打ち合うときは打ち合いつつ...という感じの対応でした。
もっと足使える選手かと思っていましたが、試合後語った下肢の不調か、
それとも自信か、スタイル故にそうなったのか。

バレラは懐深く使って、田口のボディブローを外そうという風でしたが、
攻めのとっかかりを掴んだ田口の攻めは、そんな甘いものではなく、
左ボディをインサイドへ、或いは外から巻いて打ち分け、上に左右を返してくる。
このへん、攻めに関しては理に適っている。多少の被弾をものともせず、ぐいぐい迫ってくる。

4回あたりから、バレラがロープを背負う場面が増え、見るからに押されている。
6回は懸命に捌くも、左ボディ食って止まり、構えが落ちる場面あり。
田口も好機で、上へのパンチに精度を欠くものの、執拗な攻めは止まず。

7回はバレラが横向いて下がる。田口が攻め、今度はほぼ後ろ向きに。
田口は左フックを決めて出るが、濡れていた?青コーナー前で滑って転ぶご愛敬。
8回、バレラは最後の踏ん張り、ロングのパンチを出すが威力なし。
田口ヒットを取られながら出て、ボディ攻撃、執拗。一発だけ低いのもあり。

9回、前の回で勝負はついていたようにも思うが、田口が右クロス、左ボディ、
右アッパーと決め、レフェリーストップでした。


これで6度目の防衛となった田口ですが、過去の防衛戦の中でも、
相手の実力は多分、かなり高かったと思います。
しかし、序盤から好打し、自分のペースに巻き込んで闘えたこともあり、
強敵といえる相手を、見事に攻め落とした勝利には、率直に言って感嘆しました。

技術的にどうとか、相手と比べて理に適っているかどうかとか、
防御の問題が...というような、気にかかる部分はいくらでもあります。

しかし、ロナルド・バレラを攻略するために、田口がやれること、やるべきことは、
ジャブの槍衾で正面からか、左サイドに踏み込んで右リードからか、という、
セオリーの選択や手順云々よりも、少々打たれても攻めてボディで止める、というものであり、
その選択、というよりも「覚悟」を決め、闘い抜くこと、だったのでしょう。


昨年末、初めて田口良一の試合を、直に見て、改めてその闘いぶりに「畏れ」を感じました。
もはや果敢だ勇敢だという言葉の枠を越えた、鬼気迫る、としか言いようのない闘いぶり、
それを当然のこととして貫く、美男の拳士の姿には、理屈を越えて圧倒される部分がありました。

しかし、いつまで、こんな闘いぶりが続くものなんだろうか、と思ったのも、正直なところです。
カルロス・カニサレスを執拗に追って苦しめ、しかし同時に、自身も被弾し、捌かれ、苦しめられている。

単にダメージの蓄積がどう...というのではなく、このような苦しい闘いを強いられることを、
何よりも前提にした「覚悟」、心の構えを築き上げて闘う繰り返しは、
この白面の美拳士の心身を、相当厳しく磨り減らしているのではないだろうか、と。


しかし年が明けて、7ヶ月めに組まれた1位との試合で、彼の「鬼気」はなお燃え盛り、
相手を捉え、飲み込み、燃やし尽くしてしまったかのようでした。
相手の出方が、しっかりと割り切ったものではなかったことも幸いしたのかもしれませんが、
田口良一はまたしても、壮絶な闘いを制し、勝利しました。

1位相手にTKO勝ち、見事でした、脱帽です...と朗らかな気持ちになる一方、
そういう賞賛のみに収まらない...というか、それとは別の「畏敬」の気持ちもあります。
もっとも、それは今回のみならず、田口良一というボクサーに対して、以前から変わらず
抱いている思いでもあるのですが。


さかんに選手同士がアピールしている、田中恒成との統一戦については、
実現するものかどうかわからないですが、おそらく田口良一の心身を支えているもののひとつに、
この試合実現への意欲があることは間違いないのでしょう。

個人的には、田中恒成との統一戦を、心底から待望するというほどの気持ちではありませんでした。
しかし、またも壮絶な試合を闘っている田口の姿を見ていると、何とか勝ってほしいな、
そして、田中との試合、実現させてあげてほしいな、と思わずにはいられませんでした。


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さて、今回の興行は、前座に船井龍一vs奥本貴之戦なども組まれていて、
「むむ」(←何が「むむ」なのかはさておいて)と思ったりもしたラインナップでしたが、
結局は馬鹿をやらずに、自宅でTV観戦ということになりました。
これが土曜日だったら、「むむ」という思いを、実行に移していたのやもしれませんが。

奥本は残念ながら王座獲得ならずでしたが、河野公平の再起戦があり、
世界戦も日本勢が2勝して、まずは充実した興行であった...はずなんですが、
今回もまた、TV局の都合優先、観客無視の進行だったようですね。

なんでも、田口の試合は8時前に終わっていて、そこから京口の試合まで、
たっぷり一時間以上空いたのだとか。

先日の有明もそうですが、暇割いて身銭切って見に行ってる観客が、
なんでそんなに露骨なしわ寄せを食らわねばならんのか、って話です。
これに対して、関係者諸氏が、ファンに対して申し訳ないという気持ちにならないのか、
どういう神経してんのかな、と不思議でさえあります。


で、そこまでして、視聴率優先の番組作りをしたその結果が、あの放送です。
長谷川穂積、内山高志、田中恒成という、今考え得る中で、最高レベルのコメンタリーを
3人も並べていながら、あの実況アナウンサーの騒々しさ、くどさが全てを台無しにしていました。

煽りVTRのナレーションに至っては、正直理解を超えていますが、あくまで趣味の問題か。
あれを良いという人も、世の中にはいるんでしょうかね。もう何年も続いてるからには。



で、ラウンドごとに現れたシャッチョさんの「ゲスト解説」。
まるで自分を「ボクシングの元世界王者」だと思っているかのような解説ぶりには、
相変わらず、エエ根性してはるわ、と感心しました。

亀田興毅が元世界王者、というのは、今なら例えば、上西小百合が国会議員だ、というのと同じで、
形式上、ウソではないが何かの間違い、というに過ぎないんですが、
当の本人たちは、素知らぬ顔を作って、一生懸命頑張ってはります。痛々しい限りでありますが。

放送席のお歴々と同席することもなく(させてもらえず?)、それでもあれこれと
一人前に語っていました。まあ「また何か言うとるわ」と聞き流せばそれで良いのですが。

ただ、録画した試合を保存するため、CMカットする作業のときに、けっこう面倒なんですよね。
CMのみならず「亀田カット」をしないといけなくなるんで。
しかもインターバルが終わり、試合が始まっても、まだくっちゃべってやがるときがあって、
音声だけは、どうしても残す形になってしまうときがありましてね。
ほとんどオカルト映像です、姿はないけど声だけ残る、って。困ったものです。
TV東京さんには、視聴者に不便を強いるような人選は自重するよう、お願いしたいものですね。


コメント (5)
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