さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

敵を寄せ付けて打たれた 大森将平、必然の初黒星

2015-12-17 07:15:12 | 関西ボクシング



昨夜は京都にて観戦してきました。
GAORAで生中継もされた一戦ですが、終わってみればあまりに厳しい結果でした。
感想を簡単に。


初回早々、正対したふたりのサウスポーの位置関係を見て「こりゃまずい」と思いました。

試合前のアナウンスを聞き間違えていなければ、116ポンド1/4で計量パスしたという
マーロン・タパレスは、大森将平と比べて小柄に見えましたが、やや広めのスタンスを取った
彼の右足は、踏み込みひとつ、というより、時にそのまま打てる位置を、早々に確保している。

TV画面で見てどうだったかはわかりませんが、会場で見ていると、そういう風に見えました。
「いかん、近い近い!」と。


対する大森将平は、小柄な上にスタンスを広めに取り、当然重心の低い相手に、
右リードを出しましたが、強く撥ね付けるヒットを取る角度を見つけられずにいました。
これはジャブだけでは止まらん、他のパンチも出して止めないと、いつでも打ってくる...
と思った直後、あの左クロスが来て、大森がダウン。あとは一気呵成でした。

見るからに足に来てるとか、それこそ目の前真っ暗で、星が飛んでいるとかいうのでもないでしょうが、
思うように動けず、外せず、相手が思うより速く来る。おかしいなおかしいな、という感じだったか。
大森は右ジャブと右フックでさらに二度ダウンを追加されました。

2回、右アッパーなどを見せて、タパレスが来るところを打つ手立てが見えたか、と思ったのですが
タパレスは自分の良い流れを手放しませんでした。左を叩いて大森を脅かし、返しの右で強烈に倒す。
追撃されてバランスを崩した大森を、レフェリーが救って、試合が終わりました。



これまで、大森が圧倒的な強さを見せた試合では、相手が思うように打てる位置に立つより先に、
鋭く伸びる右のリード、左ストレートで突き放し、相手を寄せ付けない展開がほとんどでした。
加えて、柔軟な下肢から良い感じのリズムが身体全体に連動し、攻防が一体化していて、
積極的に攻めつつも迎え撃ちが出来て、しかもパンチ力がある。

しかし、前回の向井寛史戦では、右ジャブの差し合いで後手に回る場面があり、下肢の柔らかさも
あまり感じられなかったことを、少々不安に思いはしました。
日本王座を圧倒的な強さで手にし、注目度も上がり、様々にこれまでとは違う風景の中で闘うことが、
彼に少々の停滞をもたらすことがあっても仕方ない、というくらいに思っていたのですが。


結果的に、このタイミングで組まれた世界ランカーとの試合は、その僅かな停滞を、決定的な破局へと変えました。
序盤というか立ち上がり、僅か10秒か20秒かの間、相手に悪い位置に立たれてしまっても、
例えば日本タイトルの防衛戦で対する選手なら、それを逃さず打って倒す力は無い場合が多いでしょう。

しかしマーロン・タパレスには、最初の好機を逃さぬだけの力があった。それが全てでした。


こういう内容と結果は非常に残念に思いますし、結果論として、今やるにはちょっと早い試合だったかもしれません。
これまでの試合における、良い展開で見せた大森の、圧倒的な強さ、素質の輝きにばかり目を奪われていた者が、
こんなことを言えた義理では無いのですが。

しかしまだまだ若く、心身のダメージを回復させ、敗因から課題を見出す可能性は充分あるはずです。
言ってみれば、敗因はかなりはっきり見えた試合でもありました。幸いにも、とは言えない部分もありますが。


京都の逸材、大森将平の初黒星は、ボクシングの持つ勝負の厳しさ、怖さを改めて知らしめる、
優勝劣敗の掟に基づいた、必然の敗北だった。そういう試合だったように思います。




コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする