さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

「特別試合」を「勝負」に変えた 長身変則天笠尚、リゴンドーを二度倒す大健闘

2015-01-02 19:55:09 | 関西ボクシング



大晦日、帰宅してTVで観戦しました。この試合だけは生中継でした。
第一試合は3時くらいで、休憩の連続だったそうです。
前日東京の観戦を終え、この日の午前中に帰宅したわけですが、もし会場に行っていたら
それこそへろへろに疲れていたことでしょう。

しかし、それを考えても、会場に行っておけば良かったかも、と思える試合になりました。
天笠尚の健闘は、想像以上のものでした。
それこそ模範試合とまで言わずとも、客観的に見た場合、稀なる「特別試合」であったカードが、
もちろん実力差はあれど、充分、普通の「勝負」の範疇にある試合になりました。


ギジェルモ・リゴンドーは、例えばドネア戦のような張り詰めたものはさすがに感じませんでしたが、
調整不足とか油断という次元のものを見せるでもない。概ね集中しているように見えました。
5回、左を好打したあと、ひとしきり打ったが手を止めたのも、いつも通りのセーフティーな選択だった、と見るべきでしょう。

それに対する天笠は、地道に、果敢に、自らの武器を生かして闘いました。
初回から、ガードの上でも良いから打つ。
一階級上でも抜きん出た長身、リーチを生かして、普段リゴンドーと闘う選手よりも遠い位置から
ボディストレートを叩く。的が高いせいで少しパンチが遠回りになるリゴンドーの打ち終わりを狙う。
広いスタンスで低いダックからサイドに出るところを、本来届かないはずの右で追って打つ。
7回、この形でダウンを奪った右は、長身、変則、強打が売りの天笠ならではの一撃でした。

しかし次の8回、追撃しきれなかったのは、ここまで、過去の試合にはない、濃密な攻防に神経をすり減らし、
好打を再三浴びた上に、相当苦しかった減量の影響も加わっての疲弊が原因だったのでしょう。

リゴンドー反転攻勢、10回に左でダウン、11回終了後TKOで試合は終わりましたが、
天笠は己の特性を生かし、出来ることは全てやり切って敗れました。大健闘だったと思います。


このカードが決まった経緯や事情については、釈然としないものもあり、天笠尚のキャリアにとっても
良い話だとは思っていませんでした。前の試合が10月15日、最終回までリードされての逆転勝ち。
ダメージも疲労もあったでしょうし、最近の報道では体調を崩して休養していたとも。
見た目どおり長身で、ただでさえ減量がきつそうなのに、さらに一階級下のクラスまで落とさねばならない。
そして相手が、言わずと知れたリゴンドー。世界的ビッグネームと闘うには、悪い条件が重なりすぎている、と。


しかし、頭で考えたことが仮に正しくても、試合を見終えたあとに心で思うことはまた別だったりもします。
理だけでも情だけでも語り尽くせぬものがボクシングだとしたら、リゴンドー相手に堂々と闘い抜いた天笠尚は
実に素晴らしいボクサーである、と思わせてくれました。
そして、天笠の果敢さと体格差に苦しみ、若干の緩みもあったかも知れませんが、世界一流の技量を
要所でしっかり見せてくれたギジェルモ・リゴンドーもまた、同様です。


終わってみれば全然悪くなどない、なかなかの好試合だったと思います。
それが両者の技量の差を大前提にした感想であったとしても、意外なほど後味の良さが残る試合でした。

今後、リゴンドーは実力と人気のギャップをどう埋めるのか。
天笠は本来の階級で、新たなチャンスを掴むところまで勝ち続けられるのか。
この闘いを終えたふたりに注目が集まり、期待されることでしょう。


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この日のアンダーカードについてはまた後日。
それぞれに見所がありましたね。高山vs大平は、危うく見過ごすところでした。
あんな放送の仕方がありますかね(呆)


コメント (19)
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