さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

文句なしの「世界」戦

2010-10-24 20:54:54 | 西岡利晃
個人的なこだわりというか、私なんぞが何をどうこだわったところで意味がないんですが、
私は、拙ブログや他のサイトにボクシングについて書くとき、統括団体のアルファベット三文字のあとに
「世界」の文字を書きません。例えば「WBA世界タイトルマッチ」という書き方をしないことに決めています。

チャンピオンが4人おって、何がどう「世界」なのか、という根本的な疑問は当然あります。
ただ、故・白井義男先生の時代や、原田・海老原時代がすべからく、かくあれかしという
タイトルマッチばかりだったわけでもありません。
WBAの前身であるNBA時代にも、欧州連盟や、ニューヨーク州、ペンシルバニア州認定とか、その他諸々、
王者並立の事例はありました。

とはいえ、昨今の世界的なボクシング業界の荒廃は目に余り、単なるローカルファイトに毛が三本生えたような
試合までもが「世界タイトルマッチ」を名乗って、世界各地で挙行されています。
こんなもの「ご近所タイトル」やないか、と罵りたくなるようなものも、ざらに見ます。

一階級一王者はもちろん理想です。何もそれを今すぐ現実に求めるというほど、固いことを言うわけでもないのですが、
せめて一昔...いや、二昔前の二団体時代にもこういう試合はあったよな、と思わせてくれるようなものでないと、
やはり「世界」はつけたくないなぁ、という気持ちがあるわけです。
とはいえ、やはり便宜上「世界挑戦」「世界戦」という言葉の使い方をしてしまっているという矛盾もあるわけですが...。


しょうもない前置きが長くなりました。
今日の試合について、ですが...世界戦でしたね(^^)
心技体、どれを取ってもケチのつけようがない、素晴らしい「世界」を見たと実感出来る一戦でした。
西岡利晃、レンドール・ムンローの両者に、あらん限りの拍手と感謝を届けたい気持ちでいっぱいです。


サウスポー同士の対戦は右リードの巧拙がカギ、なんて言い尽くされたことですけど、
今日の西岡の立ち上がり、右リードの何と素晴らしかったことでしょうか。
長いリーチのムンローが伸ばすロングのパンチの大半を、ボディワークとフットワークで外しきり、
右リードで突き放してはまた動く。攻防一体の見事なボクシングで、これ以上ない好スタートでした。

4Rにちょっと攻め込まれたかな?と思ったら5Rに左を好打、7Rは右フックをみぞおちに決め、
タフなムンローにはっきりとダメージを与える。その後も懸命に粘るムンローを抑えて最終回、
逃げ切りどころか逆に連打で追い込んで試合終了。ジャッジ三者が10点差で揃う大差の勝利で、
欧州最強の指名挑戦者に完勝、5度目の防衛となりました。


今日の西岡は、持って生まれた才能と、長年の経験をフルに生かし切った、最高の試合を見せてくれました。
的確な右リードから、堅固なムンローのガードを左で貫き、接近しても上下の打ち分けを決め、
守っては頭の位置を変えながらサイドに出て、出入りを繰り返す。
左の強打を警戒していたであろうムンローにとり、西岡の総合力の高さは予想以上だったのでしょう。

足を使って離れてもまだ届くムンローのロングパンチや、フェザー級並に見えた体格とパワー、
いったんきっかけを与えたら止まらない連打攻撃は、充分西岡を脅かしうるものに見えましたが、
西岡は常に適切な攻防の取捨選択を行い、ムンローの力を封じきりました。

それにしても、ウィラポンとの4度の対戦が2敗2分に終わったあの頃、今の西岡を想像し得た人は
おそらく彼自身を除けば、そんなにはいないことでしょうね。
私もご多分に漏れないクチで、このブログでも読み返すのも恥ずかしいような感傷を書き連ねたことがありますが(^^;)
今となっては、本当にいい笑いものです...とても嬉しいことです(^^)


そして敗れてなお、尊敬に値する真の戦士、レンドール・ムンローについて。
彼が今日、我々に見せたもの...彼のボクサーとしてのキャリアのみならず、彼の人生、生き様に支えられた、
真の勇気、誇りを、私はけっして忘れることはないでしょう。心から拍手を送りたいと思います。
ボクシングファンなら誰もが、似た気持ちを持つことでしょうね。

まあ私なんか根が軟弱なもんで、終盤なんか「もうええから、自分から座っても、マイッタしても、誰も文句言わんから~」と
思わずTV画面に向かって泣き言が出ましたけど(^^;)



さて、アンダーも凄いカードが揃って、減量苦が無くなったローマン・ゴンサレスは、一度苦戦した相手の
フランシスコ・ロサスを2回にスリーダウンKOで退け、暫定王座とはいえ二階級制覇。
亀海喜寛は元世界王者ホセ・アルファロを6回KO。終わり方がちょっと?でしたが、亀海のボクシング自体は「良」でした。
ホルヘ・リナレスはヘスス・チャベスの棄権によりTKO勝ち。去年の悪夢を振り払ったというところでしょか。
山中慎介も相手があと1回ってとこで棄権してTKO勝ちでした。一応(ってこともないですか)7連続KOとなりました。


今回は生観戦とはいきませんでしたが、WOWOW様による生中継のおかげで、存分に好ファイトの数々を堪能しました。
昨年の同じイベントでは、榎vs細野の新旧強打対決を尻目に、ダブルメインの煽り映像とトークを延々流す、という
ファンにとってはあまりにもあまりな「仕打ち」に、私も文句を書いた次第ですが、今回はそういうことが一切なく、
好カードの数々をかなう限りフルに放送しようという方針だったようです。今日は本当に、何の文句もありません。
WOWOW様、ばんざい(^^)であります。こちらにも感謝、また感謝ですね。

コメント (12)
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