非国民通信

ノーモア・コイズミ

Kindle微妙にlimited

2016-09-04 22:29:16 | 文芸欄

アマゾン読み放題、人気本消える 利用者多すぎが原因?(朝日新聞)

 今月3日にスタートした通販大手アマゾンジャパンの電子書籍読み放題サービスで、人気のある漫画や写真集などがラインアップから外れ始めた。サービス開始に合わせて多くの書籍をそろえようとしたアマゾンが、出版社に配分する利用料を年内に限って上乗せして支払う契約を締結。しかし想定以上の利用が続いて負担に耐えきれなくなり、利用が多い人気本をラインアップから外し始めたとみられる。

 同サービス「Kindle(キンドル) Unlimited(アンリミテッド)」は、洋書約120万冊のほか、国内の数百の出版社と契約を結び、小説やビジネス書、雑誌、漫画など和書計約12万冊が月980円(税込み)で読み放題になるとしてスタート。電子書籍のダウンロード数に応じて出版社に利用料の一部を配分するとした。

 複数の出版社によると、アマゾンは一部の出版社を対象に、年内に限って規定の配分に上乗せして利用料を支払う契約を結び、書籍の提供を促したという。

 ところが、サービス開始から1週間ほどで漫画やグラビア系の写真集など人気の高い本が読み放題サービスのラインアップから外れ始め、アマゾン側から「想定以上のダウンロードがあり、出版社に支払う予算が不足した」「このままではビジネスの継続が困難」などの説明があったとしている。アマゾン側は会員数を公表していない。

 

 そういえばどこかで、大学で受講できるコマ数に制限を設けようなんて提言がありました。大学側が言い出したのだか財務省に求められて文科省が言い出したのだか記憶が定かではありませんが、自分のように卒業に必要なコマ数を大きく超えて受講する学生が増えたら大学経営なんて成り立たなくなっちゃうんだろうなぁと、当時は思ったものです。どれだけ受講しても学費は同じなら、最低限の受講に抑えてくれる学生の方が、無闇に勉強する学生よりもずっと優良顧客なんですよね。

 ……で、こちらに引用しました記事によりますとアマゾンの読み放題サービスが、想定を超える利用のために早くも躓きを見せているとか。普通の小売りなら利用者が増えれば増えるほど儲かっても良さそうですが、これは定額制のサービスですから単に利用者が多いだけではなく一人当りの利用量も多かったものと推測されます。卒業に必要なギリギリのコマ数しか受講しない学生みたいな利用者ばっかりであったなら、アマゾンの思惑通りだったのかも知れませんが、意外や日本人は読者家だったようです。

 かくいう私も、先月は正規に買えば3万円分くらい、このサービスで読みました。アマゾンも出版社側の取り分を圧縮して自社の利益を捻出しようと頑張っているはずですが、私との間に限ればどう足掻いてもアマゾンの大赤字と推測されます。このままレパートリーが十分に拡充されないどころか逆に縮小されてしまうようであれば事情も違ってくるかも知れませんけれど、少なくとも私にとっては「お得な」サービスなので当面は継続しようと思っています。せっかくですからアマゾンが嫌いな人も、このサービスは積極的に利用してはいかがでしょう。使えば使うほど、アマゾンの持ち出しが増えますから!

 「あんなに混雑しているのに高速道路の利用料金は高すぎる」みたいな意見は筋違いだ、という話を何かの本で読みました。高いのではなく、安すぎるのだ、と。料金が安すぎるから利用者が増えて混雑するのであって、文字通り高速で通行できるくらいに利用者が減るまで料金が引き上げられて初めて釣り合いが取れるもの、にもかかわらず値上げされない、ゆえに利用者が減らない、その結果として混雑が続いているわけで、そこに「料金が高い!」と文句を言うのは非合理だ、みたいな話でした。ではアマゾンの読み放題サービスの場合はどうなのでしょうね。

 引用ばかりが長くなっても仕方がないので省きますが、元記事の後半部によりますと出版社側からも不満が続出しているのだとか(提供している書籍を引き上げるそうで、その辺はラインナップを減らそうとするアマゾンと結果的に歩調が合っているような)。まぁアマゾンと出版社との取り分の多寡はさておき、アマゾンの想定を超えた利用があればそれだけ出版社側にも利益はありそうな話、どうにも不満の声ばかりをピックアップしているだけで、新サービスに乗じて販路拡大に成功した著者/出版社の声は無視されているような気もします。ただ書籍は他の商品と違って再販制度の中で保護されてきた、製造元と小売り事業者との争いに不慣れな業界ですから、対応できるところと対応できないところとで命運は分かれそうです。

 上述の再販制度を巡っても昔から賛否両論があるものでして、この辺は両論併記的になりますが再販制度にも良い面もあれば悪い面もあるわけです。それが電子化によって、行政ではなく民間企業の主導でなし崩しになりつつあるのが現状と言えるでしょうか。個人的には、電子書籍ほど薄利多売が似つかわしいものはないと思わないでもありません(出版部数は減っても出版点数は増える時代なら尚更)。牛丼が半額になったからと言って牛丼を二杯食べたりはしませんが、置き場所にも困らない電子書籍なら話は別ですから。特にアマゾンの想定を覆す要因になった「漫画やグラビア系の写真集」のように「サッと読める本」なんかは、価格を維持するよりも薄利多売に舵を切った方が儲かる出版社は多いでしょう。


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