非国民通信

ノーモア・コイズミ

21世紀の政治風景

2011-09-05 23:21:14 | 政治・国際

野田内閣支持率65%…発足時で歴代5位(読売新聞)

 野田内閣の発足を受け、読売新聞社は2日夜から3日にかけて、緊急全国世論調査(電話方式)を実施した。

 新内閣の支持率は65%で、内閣発足直後の調査(1978年の大平内閣以降)としては5番目に高く、不支持率は19%だった。

 野田首相が内閣や民主党人事で、党内各グループの議員を幅広く起用したことについては「評価する」が71%に上り、挙党態勢を目指す首相の姿勢が高い支持率につながったようだ。

 政党支持率をみると、民主は28%で、前回調査(8月27~28日実施)の21%から回復し、自民23%(前回23%)を逆転した。内閣を支持する理由では「これまでの内閣よりよい」48%が最も多かった。「首相が信頼できる」17%、「政策に期待できる」12%などが続いた。

 さて、野田内閣が発足しました。読売調査によると支持率は65%とのことで、好調な出足です。ただ歴史修正主義者でもなければ、わざわざ野田を支持する理由なんてなさそうにも思えますし、往々にして歴史修正主義者は民主党所属と言うだけで極右系議員までもを毛嫌いしているのですから、なおさら野田を支持する人のイメージが浮かびません(石原慎太郎は「評価する」と語りましたが - 「自分の言葉を持っている」石原慎太郎知事が野田首相を評価(産経新聞))。不況期に増税しようなんて考え方は、電力不足の時期に原発を止めようなんて言う人々の発想に相通じるものがあるのかも知れませんけれど、まぁネット世論からは窺い知れないものがあるのでしょう。

 どちらかと言えば注目すべきは65%と言う絶対的な支持率の高さではなく、このスコアが史上5番目という相対的な高さの方です。ちなみに野田より上にいるのは小泉、鳩山、細川、安倍、そして6位に続くのが菅です。細川は長年続いた自民党支配の切れ目に当たったと言うことで別格とすれば、残る上位者は全て21世紀の首相、小泉以降の内閣ですね(引用元記事では触れられていませんが福田内閣が7位と続きます)。どうも小泉以降、日本の政治は新内閣に対して妙に高い支持率を出すようになってしまったようです。もっとも小泉を別とすれば細川も含めた5名は支持率が落ちるのも早かったわけです、おそらく野田も同様の結末を辿るであろうことは想像に難くありません。

 何かと政治否定の気運が強いかに見える昨今ですけれど、それとは裏腹に新内閣発足時の支持率は20世紀のそれに比べると格段に高い値を示しています。昔の内閣では得られなかったような高い支持を、小泉以降の新内閣は得ているわけです。ことによると現代の世論は、むしろ政治に極大の期待をかけるようになったのかも知れません。日々政治家を罵倒しつつも悪い奴をやっつけてくれるヒーローを待望し、新たに発足した内閣に最初だけは期待をしてしまう、そして速やかに落胆する――これが21世紀の有権者像なのでしょう。こうした有権者に振り回された結果として今の政治があります。


一川防衛相「素人だから文民統制」(朝日新聞)

 一川保夫防衛相は2日、正式に就任する直前に一部の記者に対して「私は安全保障の素人だが、それが本当のシビリアンコントロール(文民統制)だ」と述べ、朝日新聞の取材にもそう発言したと認めた。これに対し自民党の石破茂政調会長(元防衛相)は「閣僚解任に値する。任命した野田佳彦首相の見識も問われる」と批判。国会などで追及する考えを示した。

 文民統制は本来、国民から選ばれた政治家が軍隊を統制するという考え方。一川氏は朝日新聞に「私は軍事の専門家ではないし、銃器を扱ったこともない。国民目線で判断しながら、国民に防衛政策や安全保障を理解してもらったうえで政策を推進しなければいけない、という気持ちで言った」と説明した。

 さて、野田内閣の人事を見ると相変わらず女性閣僚の少なさが目立つところで、この辺は自民党時代からも政権交代直後からも一貫しているわけですが、不思議と自民党時代の女性閣僚の少なさを批判していた人が民主党政権下の女性閣僚の少なさを批判しているケースは非常にレアなように思われます。まぁ、その辺は偶々私が見る機会がなかったということで、今回は防衛相の発言を取り上げてみましょう。曰く「私は安全保障の素人だが、それが本当のシビリアンコントロール(文民統制)だ」と……

 言うまでもなく、引用元の記事でも指摘されているようにシビリアンコントロールとは素人が統治するという意味ではありません。軍事ではなく、政治の専門家が統治してこその文民統制なのですが、しかるに一川氏は「素人」「国民目線」辺りをアピールしたがっているようです。この辺もまた昨今の世論に媚びた結果でもあるのかも知れません。往々にして「専門家」よりも「素人」の方が、政治家の目線よりも「国民目線」の方が正しいものと扱われがちなだけに、前者ではなく後者に近い風を装った方が得だと判断する政治家は少なくないでしょうから。

 確かに専門家の言うことさえ聞いておけば済むかと言えば必ずしもそう上手くは行かないもので、時には外部の視点が加わってこそ多面的な対処が可能になる場合も多いわけです。ただ、この頃は単に大学に籍を置いているだけでマトモな論文を出したこともなく学会では相手にされていない人とか、市民団体の中でブイブイ言わせているだけでやっぱり学会からは相手にされていない人、あるいは写真週刊誌報道や諸々の「ジャーナリスト」の語ることが幅を利かせていることの弊害を目の当たりにすることも多いだけに、むしろ現代の日本ではもう少し「専門家」の言葉に耳を傾ける方向にバランスを取っていかねばならないのではないかと強く感じるところです。素人考えや国民目線で政治を混乱させるのは、もういい加減にお終いにしてほしいと願わずにはいられません。

 

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(追加)
武器輸出3原則「検討あっていい」…一川防衛相(読売新聞) - goo ニュース

 一川防衛相は5日の記者会見で、武器輸出3原則の見直しについて、「平和国家の理念と目標を曲げない中で、検討することはあっていい」と述べ、検討していく考えを示した。

 さて、問題の一川氏はこのように発言したそうです。とりあえず一川氏にとっての「国民目線」の結果として、武器輸出3原則の見直しがあるということなのでしょう。素人に検討させるのは不安で仕方がありませんが。


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12 コメント

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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2011-09-05 23:34:48
あまり知られていないから「ノンポリ」の人は期待するのかもしれないですよ。
いずれにせよトップになったのですから立場をわきまえて発言して欲しいですがそうしたら人気が落ちそうです。
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Unknown (IBA)
2011-09-06 03:25:45
 支持率なんてのは、ご祝儀相場で、どうせすぐ暴落すると思いますが。
 それにしても、長い間独裁が続いてるどこかの国と、ころころ変わる日本と、どっちがいいんだか、なにがなんだか、分からなくなってきます。
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紋切り型 (ヘタレ一代)
2011-09-06 07:33:52
「素人」の方が正しいものとして扱われることが多いせいか、政治家を評価する時にステレオタイプ思考な人が多くなった気がします。
「官僚の言う事を聞かないのがリーダーシップのある人」、「自身の給与を返済するのが痛みを共にする人」「女性を登用すれば男女平等に意欲的」等とこれを行わない人間は評価しないなどという言葉をよく耳にします。いずれもポーズばかりで、具体的にそれぞれの課題をどうするかということはここでは問われていないことが多いみたいです。
これは昔からそうなのでしょうか。それとも長引く不況により、なんでもいいから今の自分を(例え気分だけでも)良くしてくれる人間を望む人が増えたからなのでしょうか。
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Unknown (yasu)
2011-09-06 09:02:55
国民目線の政治っていつから始まったんでしょうね
何を目的にしていたんでしょう。
やはり小泉政権前後なのでしょうか。

なんとなくですが民主党が考える脱官僚路線ともバッティングしているような感じもするんですが。
何にしても官僚を敵視してばかりで政治を前に進めない風潮って変わらないと思うんですよね。
・・・難しいとは思いますが上手く官僚を使うしたたかさがないとやっぱり外交でも弱くなってしまうんじゃないかと思うんですよね
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Unknown (Mary-Jane)
2011-09-06 20:59:38
なんとも心もとない一川氏の発言!
(訳わかんない!) 

政治家は、すべて「シビリアンコントロール」の任があるのです。
市民である我々は、それぞれに自分の仕事や役割があるなかで、
選挙によって、国政は政治の専門家を頼んでいるのです。
我々と同じなら、政治家ではありません。
オールラウンドに、国政についてを学んでおいて下さいと言いたいです。
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Unknown (street-man)
2011-09-06 22:58:22
民意とか、国民目線とかってなんなんでしょうかね?
この良く解らないものに、翻弄され続けている事が政治のグダグダの原因じゃないでしょうか。

防衛大臣が素人というのもねえ。普天間の問題はどうするつもりなんだろう。
武器輸出3原則の見直しは、個人的にはいいと思う。但し、売れる様な武器があればの話ですが。
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Unknown (非国民通信管理人)
2011-09-06 23:02:36
>ノエルザブレイヴさん

 でも名前の知られている人にだって、野田と同様の高い支持率を与えましたよ。まぁ、野田の支持率は安倍と似たような結果を辿ることにはなるでしょう。

>IBAさん

 どの政治体制にもデメリットもあれば、メリットもありますからね。良いところを組み合わせていけばと思うのですが、どうも日本の政治は悪いところばかりを集めているような気がしてなりません。

>ヘタレ一代さん

 政治家の役割が、有権者へのご機嫌取りみたいになっているところはありますよね。有権者にとって、胸が空くような発言(官僚への罵倒等々)を繰り返してこそ良い政治家みたいな。仕事の能力はなくとも就職する能力だけは高い学生を日本社会は育てようとしているわけですが、政策はないけれど有権者の支持を獲得する能力にだけは秀でた政治家を、日本社会は既に生み続けているのかも知れません。

>yasuさん

 少なくとも数値上、小泉以前は新内閣はこんなに高い支持率を獲得することは細川内閣を例外としてなかったはずなんですよね。しかし小泉以降「民意」と官僚等との対立が煽られ、何かと二極化が目立つようになったと言えるでしょうか。

>Mary-Janeさん

 「文民」もしくは「政治家」としての専門性が求められるわけであって、決して素人であって良いものではないはずなんですが、それが通用しないのが今の政治なのでしょう。素人と同レベルに目線を下げて国民目線、それは何かが違うはずです。

>street-manさん

 私は少なくとも素人に武器輸出3原則の見直しを考えさせるのは、危険極まりないと思いますけれどね。まぁ、現時点でも部品レベルなら普通に輸出している代物でもありますが、箍が外れるのは危ないです。
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Unknown (Unknown)
2011-09-07 09:48:53
でも、政権がまたすっぽり抜けて落ちることになるともう派閥政治はできなくなる、だから→また改革路線になるのかなってきもしてるんですよね。
うねうねした政治になってくるとまた数に任せた政治が出てきて熟議なんて吹っ飛んでしまいますよね。


そこで参加型の自治って概念を持ち出しても、なんだかんだいって官僚を対決することになってますます悪くなる。
やっぱり、専門家って必要だし、言えないとダメですよ。
専門家を疑うにしても決然として聞かないなんてスタイルはないと思うんですよね。(一致しましたね。
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Unknown (yasu)
2011-09-07 10:00:22
ちなみに一応野田さんは今朝の報道では、協調してやっていくらしいんですが、協調するにしても上手く役人を使えるかどうかにかかっていると思うんですよね
したたかというか戦略的というかどちらを指すかでまた方向性が変わってくるんでしょうが・・・。
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Unknown (非国民通信管理人)
2011-09-07 23:36:11
>yasuさん

 一つ上の名無しのコメントもyasuさんでしょうか。どこか他でも書きましたけれど、批判的に検討するのと全否定するのとでは、全く違うんですよね。そして昨今、官僚なり専門家なりに向けられているのは単なる全否定ですから。これでは使いこなすことなど無理、ただただ対立するだけになってしまいますが、さて新首相のお手並みは……
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