非国民通信

ノーモア・コイズミ

事業仕分けが好評なのは

2009-12-03 22:59:32 | 編集雑記・小ネタ

 世間一般では事業仕分けは大好評のようです。どうも私には小泉カイカクの焼き直しにしか見えないのですが、それだからこそ構造カイカク路線を信奉する河野太郎から「うらやましい」と評価されたり、かつて小泉カイカクを大歓迎した無党派層からも同様の賛同を得たりするなどしているような気がします。小泉以降の自民党と昨今の民主党に「同じ匂い」を感じ取る人は、私と見解を異にする人(つまりはカイカク原理主義の河野太郎や小泉自民から鳩山民主に鞍替えする無党派層)の中にも多いのではないかと思います。「民主党のやることは全部ダメ」な(主としてネット上の)コアな自民党支持層や、「民主党のやることに文句を付けるな」な(これまた主としてネット上の)コアな民主党支持層ならば、両者の違いがわかるらしいのですが……

 自/民両党のコアな支持層はさておき(この辺の人は何を言ってもムダですから)、担い手が自民党か民主党かに関わらず事業仕分けの類に共感してしまうような人は、いったい何を基準にして物事を考えているのでしょうか。それはある意味、私の場合――担い手が自民党か民主党かに関わらず事業仕分けのようなやり方には賛同できない――とは対極に思えます。根本的な発想が違うのかも知れません。言うなれば、減点法か加点法か、ぐらいの。

 世間一般の感覚(及び、それに便乗する民主党と財務省)としては「天下りがいる」→「ダメ」ということになりがちです。減点法ですね(天下りがそんなにダメかどうかと言う議論もできると思いますが、それは別の機会にでも)。どこか「悪いところ」を見つけて、そこから点数を引いていく、このような採点方法、評価基準の持ち主ですと昨今の事業仕分けにも大いに共感できるのではないでしょうか。まぁ誰だって叩けば埃はいくらでも出てくるものなのですけれど。

 例えば仕事をサボりがちだけれど、割り振られた仕事は卒なくこなす人がいるとしましょう。この手のタイプの評価はいかに? 減点法の評価基準ですと、「サボり」という要因によって仕分けされてしまうものだと思います。その人の成し遂げた「成果」が十分なものであろうと、マイナスの要因を抱えている以上は色々と非難されるわけです。仕事はちゃんとやったけれど、途中でサボったからダメだ、と。減点要因を廃さない限り、絶対に及第点が取れない仕組みでもありますね。

 逆に加点法で見るなら、「仕事をこなした」という要因によって評価されるはずです。途中でサボったかもしれないが、仕事はきっちりやり遂げた、と。そして私はこうした加点法的なものの見方をするわけですけれど、世間一般では減点法が標準になっているような気がします。トータルで見て良いところがあれば結果オーライではなく、どこか欠点があればそれが許せない、そうした価値観が幅を利かせているのではないでしょうか。成果主義云々と言われて久しいにも関わらず!

 国民が幸せなら、権力者(政治家でも官僚でも経営者でも投資家でも)が私腹を肥やして贅沢三昧でも構わないと思うわけです。国民もまた豊かであるならば、ですね。加点法ですからポジティブな要素こそ全てであり、国民の生活さえ十分に満たされているのなら、それで良いのではないかと私は思うわけです。ところが逆に減点法ですと、ネガティブな要因が取り除かれていなければ我慢できない、つまりは国民が幸せでもトップが清く貧しくないと不満に感じてしまうのではないでしょうか。だから、政治の中身云々よりも「カネ」と「オンナ」などの「個人的にイイ思いをする」タイプの不祥事ばかりが致命的になったりもするわけです。

 ……で、自称加点法の私の場合ですと「多少のムダがあろうと何か評価できるポイントもあるのなら結果オーライ」と感じることが多いわけです。一方で減点法的な思考ですと、「結果がどうあろうとムダがあるのなら排除すべきだ」みたいな結論にいたりがちなのではないでしょうか。その極致が来年以降も繰り返される予定の事業仕分けであるように思います。一応、事業仕分けは民主党の公約実現に必要な財源確保の一環ということにもなっているわけですが、民主党の掲げた公約ではなく「ムダ削減」そのものこそが国民の圧倒的な支持を集めている、すなわちムダ削減そのものが追求すべき目的に成り代わっているのも事実です。その指し示すところはすなわち、何よりマイナスの要因、相手を非難できる要因にばかり目を向けたがるこの国の「民意」の到達点なのかも知れません。

 

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12 コメント

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Unknown (非国民通信管理人)
2009-12-13 13:56:03
>ノエルザブレイヴさん

 同じスポーツ選手でもちょっと問題を起こしたり、あるいは芸能人でもちょっとクスリに手を出せば非難囂々ですが、ウッズくらいの大物になると話が違ってくるのでしょうかね。仰るようにウッズに見せた「優しさ」を他の人にも向けてくれればいいのですが。
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「個人的にいい思いをする不祥事」の話 (ノエルザブレイヴ)
2009-12-13 12:24:45
ゴルフのタイガー・ウッズ選手が飲酒運転(現代ニッポンでは蛇蝎の如く嫌われておりますな)+下半身(道徳優先主義者には我慢できないでしょうな)で問題を起こしたようですが、「コメントの質が~」とこちらでも話題になっていたヤフーニュースでは割に擁護的なコメント(仕事とプライベートは分けろ、こんな事で才能を無駄にするな、とか)が上に来ています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091212-00000187-sph-golf

私もこうやって「優しい」態度を取ること自体はむしろ賛成なわけですけど(道徳優先主義はあまり好きではないわけで)、何か釈然としないものがあります。
そこでウッズ選手に「優しい」態度を見せることができた人々は願わくばそういう「優しさ」を他の人にも見せてくれないかな、と思うわけですよ。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-12-05 15:03:13
>ROM専さん

 そういえばサッカー選手の育成でも、日本では「欠点のない選手」ばかりが選別されると、よく言われますね。その辺も日本的な好みなのかも知れませんが、政治的にも欠点のないものしか許されないとなると、いやはやスケールの小さいものばかりになりそうです。
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Unknown (やす)
2009-12-05 12:28:41
努力できない人間は信用できない・・・。
もっともらしく聞こえるけどそのチャンスさえない人間はどうすればいいのかと。

ますますつまらなくなっていくような・・・。
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Unknown (ROM専)
2009-12-05 08:56:08
日本人は「俺たちの給料を上げろ!」とは言わず「あいつらの給料を下げろ!」って言いますよね。問題は全く解決していません(笑)

あと日本人が減点方式なのは完璧主義な国民性も影響しているかと思われます。0か100でしか考えられず、欠点あら探しに終始するのです。

ROM専の戯言失礼しました。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-12-04 23:49:13
>こっぱなお役人さん

 なんといいますか、支持率一桁の不人気総理の次の代あたりから、とにかく「悪者」を仕立て上げて非難することで喝采を浴びるタイプの政治家が主流になりましたから。叩いても反撃されないところを狙うのが彼らの基本なのでしょうけれど、それが障がい者にまで及ぶとなると人格を疑うところなのですが、支持率の方は相変わらずなのでしょうか……

>やすさん

 まぁ国益云々より、横並び意識の方が重要なんでしょう。底の方へ底の方へと引きずり下ろすような。

>とおるさん

 革命ってのは常に戦うべき「敵」を必要とするという話を聞いたことがあります。だから皇帝を打倒して労働者が政権を取った後も、「敵」を探さなければならない、故に粛正や文化大革命に繋がるとか。民主のカイカクも同様、戦うべき敵を探し続けることになるような気がしますね。

>ノエルザブレイヴさん

 そうなんですよね、被差別者、社会保障受給者などの弱者があたかも「特権」を得ているかのように語りたがる人はまさしく、そういう考え方の持ち主なのだろうとも思います。
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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2009-12-04 22:48:01
甘い汁を吸っているように見える、というのがポイントでしょうね。そう考えだすと被差別者すら特権階級に見えるのでしょう。しかし、「特権」を取り上げた後の具体的プランまでは考えられないようですね。
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Unknown (とおる)
2009-12-04 05:46:19
来年以降もやるんですか?

来年以降のは民主の政治主導で決めた予算なのに、また、官僚をスケープゴートにするんですか。
ひどい茶番劇ですね。
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Unknown (やす)
2009-12-04 00:29:45
政治家に期待しか出来ないという点では進歩していないかもしれません
ムダ削減だけに注目してそれ以外の例えば権利保障とか母子加算復活とか授業料無償化とかには「清く貧しく」の精神で反発するというのではやはり自分のカネにしか興味がないと思われても仕方がないでしょう
今の観点しかない(もちろん右へ習えの教育ではなく
これが国益につながるのか。
自称中立な(もしくは忠道)方々にはよく考えていただきたいのですがあれだけ圧勝したことを考えるとなかなか難しいなと思います

事故責任論の怖さと言うか根深さを考えずにはいられませんでした
返信する
この国の好きなことは「排除」と他人の不幸らしい (こっぱなお役人(北のほう))
2009-12-04 00:14:33
自分の事務所の仕事が「事業仕訳」に引っかかって来年度「生活費(といっても事務所の維持費とか、道路についている照明代とかですが)」が、かなり厳しいという話をこのごろよく聞きます。
(まあ、電気代だけで月100万以上かかるから…後道路に水をまく水の水道代のシャレになってないし)
でもこの手のお金を切ると「国家賠償法第2条案件で訴訟起こされると確実に負ける」事故が多発すると思うんですがね…
まだ国賠法第2条は求償を行わないことになっているから良いのですが…これを求償するということにでもなったら…破産による失職が続出します。

と暗いことを考えていてもなるようにしかならないので別件を…

http://kyushu.yomiuri.co.jp/news-spe/20090210-154510/news/20091130-OYS1T00700.htm
ついに未払い給与払えという訴訟まで起こされましたこの国の地方分権のトップを斜め上43度あたりを飛んでいる阿久根市(しかも弁護士費用の予算が議会を通らないので市長自ら弁論…裁判官に「議会との調整が必要でしょうが、弁護士によって、きちんと法律に基づいた主張をすることが良いでしょう」と忠告されるも、「私に市議会を説得する能力はない。裁判官に説得してもらいたい」とのたわっている)
この市長こんなことまで言い出しました…
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news-spe/20090210-154510/news/20091203-OYS1T00198.htm
まだ、私ら役人をいじめてるのはともかく、障がい者を敵に回しちゃ…でこの考えで今行政を行っていると(弱者保護の関係事務の相当数は市町村の事務)…
役人いじめの場合は役人自体も自衛手段(法的反撃)があるから良いのですが、弱者いじめを行政が組織的にやると死人が出ます。(これは病死だけじゃなく自殺とかもありうるし、法的反撃が間に合わない恐れすらある)

まあ、一言「こんな日本に誰がした(怒)」
小渕さんの時代はこんなんじゃなかったよなぁ(ため息)
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-12-03 23:54:35
>Bill McCrearyさん

 反対に加点法で事業仕分けが行われていたら、それこその国民の評価も反対になったでしょうね。ムダ云々とマイナス点をクローズアップして、予算削減というまさしく「減点」措置を繰り返したからこそ共感を得られているような気がします。

 一方の成果主義ですが、本当に成果主義というならサボっても結果を出せば~となると思うのですよね。そのはずが、やはり評価の仕方は減点法、これでは色々と矛盾する、上手く行くはずがないのではないかと。
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日本の社会ってのは (Bill McCreary)
2009-12-03 23:12:55
基本的に減点法ですよね。そういう意味で言うと、民主党の「事業仕分け」はうまい方法ではありますね。日本人の好みをよくとらえています。

>成果主義云々と言われて久しいにも関わらず!

成果主義も、どうもどこの企業もあんまりうまく機能していないという話ですけど、やはり日本の社会には現状では(将来はともかく)そぐわないところが多いんでしょうね。
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