非国民通信

ノーモア・コイズミ

失業者に紹介する仕事か?

2010-09-25 22:57:32 | 編集雑記・小ネタ

 前の派遣先が意外と長かったこともあって、就職活動をするのは割と久しぶりになったのですが、3~4年前と比べると格段に状況が悪くなっているように感じてなりません。以前ならばある程度まで妥協すればそこまで苦労せずとも仕事は見つかったものですが、何しろ昨今の有効求人倍率は0.5前後と、選ばなくても仕事はないわけです。5年前だったら書類選考の段階で落とされることなんてほとんどなかったのですが、今となってはハナも引っかけられない有様です。この辺は景気動向もさることながら年齢的な要因も大きいのだろうなと思われるだけに、何かと手詰まり感が漂ってきます。

 で、先日ある派遣会社から求人案内のメールが届きました。

「本日は○○区役所様に常駐いただく、キャリアカウンセラー募集の案件を御案内いたします!」

 ……ですって。

 ちょっと遠いなりに通勤可能なエリアではありますし、時給も前職に比べると低いですが許容範囲でしたので、つべこべ言わずに応募できるものはと応募してみました。たぶん、週明けには向こうからお断りのメールが帰ってくるでしょう。募集要項には人材紹介会社や学校の就職課、あるいはハローワークで3年以上働いた経験がある人を募集とありましたので、万に一つも見込みはありません。そもそも派遣会社には私の職歴を登録しているわけで、今回の募集で要求されている職務経験を満たしていないってことはわかりそうなものですが、たぶん派遣会社側は通勤可能圏の登録者に一斉送信しているのでしょう。

 ハローワークの窓口相談の人は基本的に非常勤であると以前から聞いていましたが、そうした仕事の口が、まさか私にまで紹介されるとは思っても見ませんでした。普通に考えれば就職に関して相談に行く側である失業者に対して、そうした相談を受け付ける仕事を紹介するという行為は、もはや派遣会社からすれば当たり前なのかも知れませんが、私からすればシュールにすら感じられます。まぁ身をもって失業を経験している人であればこそ、仕事を探している人の置かれた状況を理解できるフシがあるとも言えるのかも知れませんね!

 以前に、セクハラでクビになった大学の就職課職員の話を取り上げました(参考)。その時の職員もまた、当初は人材派遣会社からの派遣で働き始めたことが報道されていたものです。ハローワークの窓口相談役にせよ学校の就職課にせよ、そして役所の「キャリアカウンセラー」にせよ、この手の就職相談を受ける人の非正規雇用率は相当に高そうです。定年退職した人が年金受給年齢までのつなぎとしてハローワークのバイトをしているくらいならまだ理解できますが、それなりに若い人も少なからず目にします。詰めかける求職者の相談に応じているのは、実はいつクビを切られて失業するかわかったものではない、そんな不安定な立場に置かれた人たちでもある、何とも不思議な光景ではないでしょうか。

 どこの世界も営業は激務が多いのか、派遣会社の営業も結構頻繁に辞めていくイメージがあります。それこそ私が雇い止めに遭うより、担当営業が退職していく頻度の方が高いくらいです。今回のキャリアカウンセラーの募集要項にあるような類の勤務経験なんてどこで得られるのか、それこそ普通の派遣社員では得られないような職務経験を派遣の求人において要求されているように見えるわけですけれど、たぶん派遣会社の元営業などの元・正社員が派遣として働くことを想定しているのでしょう。日本の雇用は流動的ですから、それなりにキャリアのある人でもどんどん下に落ちてくるものです。

 ともあれ「世間」の感覚からすれば、これも必然的な流れなのでしょう。とにかく公務員を減らすことが是とされる中では、ハローワークや役所の、国公立の学校でも正規職員から非正規への切替が進められる、そうなると就職相談を受ける係も非常勤に置き換えられるものです。あるいは善意の人に「貧しさ」を求める風潮もあるはずです。貧困や格差の問題に取り組む人に対して、その人自身が貧しくあることを求める風潮はないでしょうか? 貧困層や社会的弱者のために活動している人に対して、その人が裕福であることを非難めかして強調する輩も少なからずいる、自らも貧しくなければ貧困問題に言及する資格などない、みたいな態度を取る連中は珍しくないわけです(参考)。そういった点では、失業して仕事を探している人の相手を、これまたいつ失業するかもわからない不安定雇用の人に任せるのは国民の感覚に沿ったことなのかも知れません。

 

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コメント (6)
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