非国民通信

ノーモア・コイズミ

なんともお寒いスポーツ界

2008-01-07 22:51:05 | ニュース

清原、視線の先は格闘技…大みそか秋山KO負けに怒り(夕刊フジ)

 復活の舞台はどこになる? 左ヒザ手術からの復活に賭けるオリックス・清原が4日、自主トレ先のハワイに出発した。

 そんな清原の心を燃え上がらせたのが、大みそかに行われた格闘技イベントで三崎和雄にKO負けした親友の秋山成勲の姿。「すごくショッキングだった。ああいう時こそ、セコンドに入ってあげたかった。あれだけの大ブーイングの中でやっている姿。(鼻の)骨が折れる姿を見て、完全に戦闘モードに入った。オレもああいう舞台に立てるように、ハワイでしっかりヒザを鍛えたい」と、改めて気合が注入されたという。

 また、三崎がKOしたキックが、秋山が両手両足をついたときに放った反則である可能性が出てきたことに、清原の怒りは大爆発。「あの日は悔しくて、朝4時まで眠れなかった。三崎はリングに残って秋山に説教したが、ボクも言われた気がする。オレはいつ戦おうかな? あいつの顔面オレが蹴ってやろうかな」と、今にも秋山に代わってリングに立ちそうな勢いでまくしたてた。

 “Say no to racism”を掲げているのはFIFAですが、それは自らの社会的影響力を自覚した上での振る舞いでもあるでしょう。ブラッター会長などが足を引っ張る場面はあるものの、反レイシズムの姿勢は一貫しています。影響力の大きいスポーツを通じて社会に対して声を上げていくのも社会的責任の一つなのです。翻って日本のスポーツ界はどうでしょうか? 眼前の問題を正しく認識することで初めて、その問題に対処するためのスタート地点に立つことができますが、その段階にすら到達できているのかどうか……

 冒頭に引用した清原に関しては、「野球はどうした?」という印象がないでもありませんが、その清原が言及している秋山と三崎の試合は、間違いなく日本のスポーツ界の立ち位置を露わにするものでした。

 ここは格闘技ブログではありませんので、日頃格闘技を見ない方のために秋山選手を巡る今日までの経緯をざっと説明いたします。

2006年末、K-1主催の大会で秋山選手と桜庭選手が対戦、秋山が勝利
→試合中に桜庭が「(秋山選手の体が)滑る」と抗議
→試合前と試合後にレフェリーが秋山選手の体を触ってボディチェック
→特に滑るとは認められなかったため、その時点では秋山勝利が確定

後日、控え室撮影用のビデオテープをチェックした結果、
カメラの前で秋山が保湿クリームを塗っている場面が発見される(関係者が同席)
→秋山に対し「失格処分」と「ファイトマネー全額没収」の処分が下される
→その6日後、「無期限出場停止」という追加処分が下される

 基本的にK-1は倒れた相手選手の後頭部を殴るなどの反則行為には非常に寛大なのですが、秋山選手の場合に限り、例外的に「超法規的な」ペナルティが下されました。当時のK-1の公式サイトに記載された規則では、身体への塗布一切が禁じられていたわけですが、その罰則は以下の通りです。

第2項  塗布していることが確認された場合は、直ちに「警告」が宣告される。さらに、罰金としてファイトマネーの10%が没収される。

 つまりここでK-1運営側はルールを破っている、自らが定めたルールを無視して秋山を罰しています。これは喩えるならば、万引き犯に懲役20年と罰金300万円を課すようなものです(共に刑法が定める上限をオーバー)。しかもそれだけでは飽き足りず、6日後、何か新たな事実が見つかったわけでもないにもかかわらず追加処分が発表されました。これは当初の処分に「ファンが納得しなかった」という理由で下された二重の処分であり、これも喩えるならば、一度判決が下って刑が確定した受刑者に対し、何ら新たな事実が見つかったわけでもないにかかわらず「世論が納得していない」という理由で刑を重くするようなもの、甚だしいルール無視であり、この遵法意識の低さには呆れるほかありません。

 そもそもK-1における総合格闘技は常設ではないため、特別ルールと称して試合ごとに細則が変動されるもので、その内容が一定しません。総合格闘技の老舗であるUFCでは頭部へのワセリンの塗布が義務づけられるなど、クリームなどの塗布に関するルールも団体ごとに(K-1の場合は試合ごとに)異なります。撮影用のカメラの前で、関係者と談笑しながら堂々と保湿クリームを塗る秋山の姿から類推できるのは、その試合のルール(いかなるものも塗布禁止)が秋山サイドに周知されていなかったことで、それはK-1運営側の失態です。

 しかし、悪者にされたのは秋山一人でした。制度上の不備は問題にされず、ひとえに秋山個人の罪として、スケープゴートにされたと言えます。自称「ファン」もこぞって秋山を責め立て、差別発言を投げかける、K-1運営側もそのような状態に半ば荷担する形で秋山に罪を押しつけたまま、昨年末の試合へと繋がりました。

 で、どういう訳か秋山が負けてしまいました。まぁ、スポーツにはそう言うこともあります。それはさておき、清原も怒っているのが自称「ファン」の秋山へのブーイングと対戦相手の三崎の試合後の言動です。それはすなわち、

「お前は去年、たくさんの人と子供たちを裏切った。オレは絶対に許さない。でも、今日試合をして、お前の気持ちがオレにも届いた。だから、これからはリングの上でたくさんの人たちと子供たちに、誠意を見せて闘ってほしい」

「柔道最高! 日本人は強いんです! みなさん、10年間愛してくれてありがとうございました。オレはみなさんが大好きです!!」

 ・・・と。どうにも秋山を誹謗する側の一方的な言い分のみに依拠して人を断罪するようなスピーチには、思い上がりの他は何も感じることができないのですが、小物の捨て台詞はこんなものでしょう。それより私が問題視したいのは後半の方です。「日本人は強いんです!」だとか。これ、三崎にとっては毎回の決め台詞でして、他にも似たような決め台詞を持つ日本人選手はいるわけですが、そうは言ってもこの試合、日本人同士の対戦だったのですけれど?

 これがヨーロッパだったら、三崎は今頃檻の中でしょうね。でも日本では、この発言が全く問題視されていないどころか、主催者側も不適切な発言を詫びるどころかむしろ誇っているようで、三崎の発言を紹介すると共に「ファンの期待を背負った一戦は、見事なまでの大団円となった。」などと完全に肯定しています。これはひどい。

 この件は日本において「日本人」という概念がいかに排他的なものとして用いられているかを明らかにします。レイシストにとって日本人とは当のレイシスト本人が認めた場合であって、そうでなければ日本人とは認めない、「日本人」の枠から排斥しようとするわけです。試合会場はレイシストに制圧され、大会主催者もそんなレイシストを追い出さないどころか媚びを売る始末、そしてそれがレイシズムであることを認めない、自分達を正当化する、これが日本のスポーツ界の立ち位置なのでしょう。

 

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