非国民通信

ノーモア・コイズミ

この国民にしてこの国あり

2008-01-22 23:09:11 | ニュース

社保庁、年金「裏マニュアル」 特別便、訂正できぬ人も(朝日新聞)

 「宙に浮いた年金記録」の持ち主を捜す「ねんきん特別便」をめぐり、社会保険庁が窓口を訪れた人に記録漏れの特定につながる助言をしないよう社会保険事務所に求めるマニュアルを作成していたことがわかった。窓口対応の手引を補足する「裏マニュアル」とも呼ばれ、「過去の勤め先を思い出せない人に事業所名の頭文字は教えない」などと厳格な内容。他人の記録の持ち主になりすます不正を防ぐためだが、厳しすぎて記録の回復が進まない一因になっているとみられる。

 まぁ社会保険庁が政府の大方針に忠実であるならば、こうなるのも当然の結果でしょうか。国家なり自治体なりが社会保障関係の支出を抑制しろと号令をかけて、それで現場が頑張れば頑張るだけ受給資格者が追い返されるわけです。ところが職員達が「お国のためによく頑張った!」などと讃えられることはないのですな、これが。一兵卒の扱いはそんなものです。

 出来るだけ給付を阻もうとする方針自体はもちろん非難に値するものですが、一方で「他人の記録の持ち主になりすます不正を防ぐため」というお題目の方は一定の共感を集めるかも知れません。「不正を防ぐ」というと掌を返したように評価を変える人も多いのではないでしょうか。警察が嫌いな人が実は治安機関による取り締まりの強化には大賛成だったり、学校教師を誹謗して止まない人が体罰となると教師を絶賛し始めたり、そういう場合もあります。普段は公務員を飽くことなく中傷している人ほど、「不正を防ぐ」となると態度が変わりそうな気がしますね。

 例えば生活保護のケース、全体の1%程度の不正受給者がいるわけですが、この1%の不正を阻むために人員を揃え、その何百倍もの正当な受給資格者を追い返しているのが日本式福祉行政です。これにはもちろん批判もありますが、不正受給が問題であるとの信念の元に現行体制を擁護する人も少なくありません(そしてこういう人に限って、普段は公務員となると何をやっても全否定だったりします)。

 これが合理的な国ですと、不正受給によるマイナス分よりも不正受給を阻むための人件費の方が高いからと、水際作戦要員を削減して人件費削減、トータルでのコスト低下に繋げたりもするわけです。行政の無駄を省くとはこうした考え方が必要なのですが、計算の出来ない子供は不正を阻むためならその何倍ものコストを投じることを厭いません。そして1件の不正を阻むために100人の正当な受給者を追い返すのも仕方ないと考える、これが日本の生活保護行政です。

 そして生活保護の場合も年金記録の場合も、考え方は一緒でしょう。審査を緩め、多少の不正ななりすまし受給者には目を瞑りつつ年金記録が速やかに解消されるよりも、「不正は許さない」という正義感を振りかざすことを好む人は決して少なくないのではないでしょうか。生活保護の場合にはそうだったはずです。とりわけ政府与党の支持者には、ですね。そうした支持者の声を社会保険庁は良く反映しているわけで、ある意味では国民の声によく耳を傾けていると言えるのかもしれません。

ねんきん特別便 回答9割、問題なし 大半訂正のはず…(朝日新聞)

 基礎年金番号に統合されていない「宙に浮いた年金記録」5000万件の問題で、社会保険庁が年金の受給漏れの可能性が高いとして昨年12月に送った「ねんきん特別便」に、7日までに年金受給者16万人が回答、その9割近くにあたる約14万人が「記録に問題はない」としていたことが分かった。特別便には受給漏れの原因となっている未統合記録の内容は記されておらず、本人が漏れた記録を思い出せないまま回答した可能性が高い。

 なお、受給漏れの可能性が高い人に送られた「ねんきん特別便」は9割近くが「問題はない」と回答したそうです。こうして見ると自分の年金記録の回復に熱心な人はそれほど多くないということでしょうか。多いのは、犯人捜しに熱心な人であり、被害者の回復ではなく犯人を罰することに情熱を燃やす人のようです。

 

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コメント (4)
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