自殺予防のプロを養成=全国初、専門コース-「人材育成の拠点に」・秋田大大学院 (時事通信)
厚生労働省の統計で自殺率が12年連続ワーストワンの秋田県で、自殺対策の中核を担う秋田大学(秋田市)は、2008年度から新たに大学院医学系研究科博士課程に自殺予防学コース(4年)を設ける。自殺予防に関する専門コースの設置は全国初という。
総合的な自殺予防対策を担える人材を育てるのが狙いで、同大の本橋豊医学部長(53)は「秋田を人材育成の拠点にしたい」と意気込む。
自殺予防に必要な知識は、うつ病などの治療といった精神医学から、多重債務や格差問題などの社会学、自殺対策基本法や債務整理など実践的な法律知識、カウンセリングの技術、地域との連携など多岐にわたるが、これまで体系的に学べる場はなく、総合的な知識を持つ人材も少なかった。
このニュースをお読みになった読者の皆様は何を思われましたでしょうか? 私の第一の感想としましては、「どうして医学部?」というものでした。自殺予防は医学の問題なのでしょうか? そりゃ理工学部や文学部という感じではありませんが、かといって医学というイメージもあまりないような?
それでもまぁ、冷静に統計を見てみると、なるほど医学なのかと、そんな気もしてきます。警察庁が判断した限りの動機ではありますが、自殺の動機の最多を占めるのは健康問題で45%前後です。自殺の最大の要因が健康問題であるならば、自殺予防に最も関連性が高いのは医学部となるのでしょう。
しかしまぁ、20年前は自殺の動機の60%を健康問題が占めていました。比率としては大幅減です。逆に増えているのが経済問題で、20年前は10%に満たなかったものが今や25%前後まで上昇しています。この経済上の問題による自殺の増加が自殺件数を押し上げてもいるわけでして、相対的に健康問題の占める比率が低下しているわけです。
健康問題による自殺は比率の上では減っているものの、それでも最多ですし、絶対数として減っているわけではありません。一方で経済上の問題による自殺は健康問題に比べると数としては少ないわけですが、増加傾向にあり自殺件数全体を押し上げています。このような場合、どちらに対策の重点を置くべきなのでしょうか?
秋田では健康問題の方に重点を置いているように見えます。その是非は私には判断できませんが、近年の急増によって印象の強い経済問題よりも、昔から多かったが故に印象の弱い健康問題に重きを置く辺りは、単なる印象論に乗った思いつきの政策ではなく、それなりの事実認識に則った結果なのでしょう。日本のテロ対策のように被害妄想に基づいた政策とはそこが違います。何はともあれ問題を正しく認識することでようやくスタート地点に着くことができる、とりあえず秋田の第一歩はハズレではなさそうです。
ただ、自殺の動機が解消された上で生きるのと、自殺の動機は残ったまま生きることを強いられるのとでは話が違ってきます。その人が死ねないように手を尽くすのは可能かも知れませんが、死にたくなるようなその原因を解消することができない限り、統計上の自殺が減ったところで虚しいものです。