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非国民通信

ノーモア・コイズミ

第一の輪:金融政策

2022-05-10 22:35:32 | 雇用・経済

序:日本経済の現状からの続きです。

 まず最初に、私は第二次安倍内閣を評価しています。その理由は、この四半世紀における他の内閣が軒並み「マイナス方向で一貫」した経済政策をとってきたのに対し、安倍晋三は最も支離滅裂であったからです。悪い政策しか打ち出してこなかった内閣と比べるのであれば、やることがバラバラで一貫性に欠ける内閣の方が、時には正しい方向を向くことがあった、というのが安倍内閣の妥当な評価ではないでしょうか。

 そんな安倍内閣も民主党時代からの政権交代後は、かなり順調な滑り出しでした。狂ったような円高の是正と財政出動、そこに今後への期待感が加わり俄に景気は回復へと向かい始めたわけです。残念ながら短期間で緊縮財政へと逆戻りしたあげくに消費税増税と誤った判断が重なり日本経済は急ブレーキ、その後は僅かに良い方向へのブレもあったながら、全体像としては低迷を続けたまま退陣へ相成ったと言えます。

 経済を好転させたいのか暗転させたいのか異なる方向性の入り交じるアベノミクスではありましたけれど、一つだけ一貫していたのは金融政策で、これは在任期間中から今に至るまで緩和路線が継続されています。当初は行き過ぎた円高の是正に効果覿面であった、財政出動との組み合わせで効果を上げたと評価できる部分なのですが、その後は逆風が吹くことも多いようで非難の槍玉に挙げられることも目立つのが現状です。

 車輪を一つだけ回転させても前進するのは難しい、というのが実態ではないでしょうか。財政出動と金融緩和、2つの車輪が回転していれば、それが逆回転でない限り車両は前に進むものです。しかし車輪の中で回っているのが一つだけであるならば、車両はその場をグルグル回転するだけになってしまう、それがまさに消費税増税後のアベノミクスの姿であったと言えます。

 では現状で成果に乏しい金融緩和路線を逆行させれば良いのかとなりますと、そこはまた別の話です。むしろ他の車輪が逆回転している中で金融引き締めを図ろうものなら、それこそ全速力で景気が後退してしまう可能性もあります。悪いのはあくまで金融政策一本しかなくなってしまったことであり、金融緩和そのものではありません。金融緩和を止めるのではなく、他の政策と連動させることが大事なのです。

 それはすなわち続いて述べる3つの車輪との同時進行が鍵となるわけで、どの政策も一本だけで事態を改善に向かわせることは難しい、車輪は最低でも2輪、最大限の成果を望むのであれば4輪同時に進行方向へと回転させる必要があります。せっかく他の車輪を前方へ回転させるようにしても、これまで成果に乏しかったからという理由で金融面を停止または逆回転に変えてしまえば、第二第三の経済政策を無効化してしまうことになるでしょう。そうならないために、金融政策は今しばらく緩和路線の継続が望まれます。

 

第二の輪:財政出動へ続く

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序:日本経済の現状

2022-05-09 22:41:20 | 雇用・経済

政府も認めた「賃金上がらず結婚できず」の厳しい現実(毎日新聞)

 内閣府は、総務省「全国家計構造調査」「全国消費実態調査」の個別データをもとに1994~2019年の世帯所得の変化を分析した。政府は今年の「骨太の方針」に「人への投資」の強化策を盛り込む予定で、その基礎資料として3月3日の経済財政諮問会議に提出した。

 それによると、全世帯の年間所得の中央値は94年の550万円から19年は372万円と32%(178万円)下がった。

 中央値とは、全世帯を所得順に並べたとき真ん中にある世帯の所得の値だ。統計では、平均値を使うことが多いが、格差が大きい状況では、平均値は一部の富裕層の所得に影響されて「普通の人」の所得よりずっと高くなってしまう。中央値はそうした影響を受けにくく、実態をより示しやすい。

 

 日本国の1人当たり名目GDPは1994年も2021年も40,000ドル前後です。この期間、他のG7各国は同期間でGDPを概ね倍増させており、日本だけが異次元の低成長を継続しているわけです。加えて算術平均では横ばいに見えても、その内実はどうでしょうか。ここで発表された世帯所得の「中央値」を見るとむしろ四半世紀前よりも下がっていることが分かります。日本以外の国がいずれも豊かになっていく中で、普通の日本人は貧しくなっている、低成長で格差が広がっているという実態は益々以て否定できない状態です。

 

岸田首相、「資産所得倍増プラン」を表明 貯蓄から投資へ誘導(毎日新聞)

 その具体策の一つとして資産所得倍増プランに取り組むとした。首相は、日本の個人金融資産の半分以上が現預金で保有され、「その結果、この10年間で米国では家計金融資産が3倍、英国は2・3倍になったのに、我が国では1・4倍にしかなっていない」と説明。「ここに日本の大きなポテンシャル(潜在力)がある」とし、少額投資非課税制度(NISA)の拡充や預貯金を資産運用に誘導する仕組みの創設などを通じて「投資による資産所得倍増を実現する」とした。

 

 岸田首相の唱える「新しい資本主義」については具体的に何を考えているのか誰も分からないといった有様でしたが、漸くプランの一つが発表されました。なんと「投資による資産所得倍増」だそうです。首相曰く「この10年間で米国では家計金融資産が3倍、英国は2・3倍になったのに、我が国では1・4倍にしかなっていない」とのこと、しかし10年前と比べると英米の1人当たりGDPは大きく上昇している一方で、ドル建てで見ると日本のそれはむしろ下がっています。日本にポテンシャルがあるとは、日本を知る人であれば決して口には出来ないでしょう。

 10年前の日本の名目GDPが高くなったのは異常な円高を放置していた影響であり、為替レートの影響を考慮すれば「25年前からも10年前からも全くの無成長」というのが日本経済の妥当な評価と言えます。ただし1人当たりGDPは変わらなくとも世帯所得の中央値は着実に下がっているだけに、一部の人が平均よりも多く資産を持つ一方、資産を持てない人も増えていると推測される状況です。ここから資産所得の増加を図った場合に得をするのは投資できるだけの種銭を持った人だけであり、投資に回せるだけの可処分所得がない人とのさらなる格差拡大が予測されます。

 一時は世界各国が自国の通貨安を誘導する政策をとっており、我関せずの姿勢を貫いた民主党政権時代には1ドル70円台という異次元の円高水準へと突入しました。その後、第二次安倍政権は周回遅れで通貨安競争に参戦し円相場は妥当なところへ落ち着いたかに見えましたが、ここに来てアメリカを中心に金融政策の転換が起きつつあり、何もしないと円高になる状況から何もしないと円安になる状況へ変わっているわけです。対ドルで円安が進むどころか時には対ルーブルですら円の価値が下落するなど、円の凋落は鮮明と言えます。

 これに加えて長年のデフレから堰を切ったような値上げラッシュが各方面で起こっており、家計が苦しくなってきた人も当然ながら増えていることでしょう。普通の国の場合にインフレは景気の過熱と連動するものですが、日本は所得水準が向上しない中で物価高が進んでおり、すなわちスタグフレーションと呼ばれる状況に陥っています。「景気が回復したら、改革する意欲がなくなってしまう」とは党派を問わず幅広く支持された小泉純一郎の言葉ですが、この呪縛から一日でも早く抜け出さない限り、未来はより悪いものにしかなりません。

 そこで3本の矢ならぬ4つの輪にテーマに分けて、日本経済が四半世紀の低迷から脱出するための手段を描いていきたいと思います。

第一の輪:金融政策

第二の輪:財政出動

第三の輪:税

第四の輪:国際関係

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復古

2022-02-13 22:37:10 | 雇用・経済

テレワークしている人の割合 “宣言”解除後 最低に 民間調査(NHK)

新型コロナ対策としてテレワークの積極的な活用が求められる中、テレワークをしている人の割合が、緊急事態宣言の解除のあと低下し、感染拡大以来、最も低くなったとする民間の調査結果がまとまりました。

日本生産性本部は、企業や団体に勤める人たちのコロナ禍での働き方をほぼ3か月ごとにアンケート形式で調べていて、今回の調査は、20歳以上の1100人を対象に先月中旬、インターネットで行いました。

それによりますと、週に1日以上、自宅などでテレワークをしている人の割合は18.5%で、前回・去年10月の調査から4.2ポイント低下し、おととし5月の調査開始以来、最も低くなりました。

 

 調査対象期間が明示されていませんし調査対象範囲も十分であるか微妙ですが、ともあれ新型コロナウィルスの感染者数が随所で過去最多を更新してきた中で、テレワークをしている人の割合が調査開始以来、最も低くなったことが伝えられています。感染症予防など気にしない人の方が、徐々に盛り返していった結果と言えるでしょうか。

 今の時代に鉄砲が得意でも役に立ちませんし、戦国時代に英会話が得意でも役には立ちません。時代や状況が変われば、必要とされる能力もまた変わるものです。テレワークという劇的な働き方の変化においても然りで、従来型の出社を前提として就労環境とテレワークとでは、求められるものが変わってくるのは必然と言えます。

 今まさに起こっているのは、従来型の働き方において主流派であった人々と、テレワーク導入によって立場が上向いてきた人々との間のせめぎ合いなのではないでしょうか。そして出社型勤務で幅を利かせていたけれどもテレワークでは成果の出せない人の反攻が実った結果として、ここに引用したような数値に繋がっているように思います。

 何度か書いてきたことですが、私の勤務先ではコロナ前からテレワークの制度がありました。ただそれは障害などの理由で通勤が出来ない「ワケあり」の人だけが利用するものであり、「普通の」人はもれなく出社して業務を行っていました。これが政府の緊急事態宣言を受けて、障害の有無にかかわらず全社員がテレワークを行うようになったのです。

 それまでは一部「ワケありの」人以外は全員が出社していましたので、当然ながら業務も出社を前提にして組み立てられており、出社できない人は至って限定的な範囲の業務にしか従事できていませんでした。これが一変したのは緊急事態宣言が出てからで、業務はリモートを前提に運用されるようになり、出社する人もそうでない人も等しく業務に関わるようになりました。

 働き方が大きく変わる中、事実上の障害者枠でしかなかった在宅勤務者が「普通の」社員と同じ仕事をするようになり、それまで目立たなかった人が頭角を現したりもする一方、逆に存在感を失っていく人もいたわけです。かつては社内で部下を怒鳴り散らしては権勢をほしいままにしていた人が途端にいるのかいないのか分からない人になったり等々、舞台が変われば出番も変わるのがよく分かります。

 テレワークで働きやすくなった、業務の効率が上がった人もいれば、反対に従来通りの出社を前提とした働き方に依存する形で地位を築いてきた人の中には環境の変化に適応できない人も多いのではないでしょうか。声の大きさで周りを押さえつけてきた人、飲み会に皆勤して偉い人から気に入られてきた人、そうした人にとってテレワークは脅威でしかありません。

 戦争に負けてGHQに占領されて、日本は民主化しました。そして新型コロナウィルスの感染が拡大して政府が緊急事態宣言を出すに至り、全国各地でテレワークが始まりました。GHQが去っても民主体制から軍国主義に戻ることはありませんでしたが、コロナの場合はどうでしょうか? コロナを契機に社会が前進できるのか、それとも旧体制に回帰するのか、どうにも優勢なのは後者のようです。

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読者の皆様の勤務先はどうですか?

2022-01-09 22:46:33 | 雇用・経済

 先週は「何事も正しい現状認識があってこそ」と書きました。現状認識が間違ったままでは、誤診したまま処方箋を出すようなものです。もっとも現状認識の重要性までは大半の人に受け入れられると思いますが、では現実に向き合っている人がどれだけいるかと言えば、そこは少数派に止まる、現実よりも信念に沿って動く人の方が多いのではないでしょうか。

 アメリカでは先の大統領選挙で不正が行われた、本当の勝者はトランプであると信じる人が結構な割合に上ると伝えられます。選挙不正については全く根拠のない陰謀論に過ぎませんけれど、信者にとって事実関係は重要ではないわけです。それはキリストの復活を信じるのと同じことで、実際にそうであるかよりも自身が何を信じるかという選択の方がずっと重いと言えます。

 経済に関しても、事実とは矛盾する信念が世を覆っているところがあります。グローバル化で働く人が貧しくなる、経済成長によって格差が拡大する、成熟段階に達している先進国はそれ以上は成長しない──いずれも現実世界で起こっていることとは相容れませんけれど、それを信じている人もまた少なくありません。現実よりも、人は自らの信念を大切にするものです。

 そして日本の経済、とりわけ雇用分野を巡る言論で槍玉に挙げられる第一は「新卒一括採用」でしょうか。これが悪習として、日本経済の停滞を招いた戦犯であるように言われ続けたまま長い年月が経過しています。ある種の定番として、新卒一括採用の否定は経済誌の枕詞になっているとも言えますが、それは果たして正しいのか現実を振り返る必要もありそうです。

 読者の皆様にも就労している方は多いと思いますが、お勤め先の採用形態は新卒一括採用でしょうか、それとも中途・通年採用でしょうか。私の勤務先は、中途・通年採用です。ただし私の勤務先の親会社は新卒一括採用です。グループ内の他企業の採用情報を見ても、上位の会社は軒並み新卒一括採用で、末端の会社は中途・通年採用となっています。

 どうして親会社は新卒一括採用なのに、子会社はそれに倣わないのでしょう。理由の一つとしては「できない」ことが挙げられます。何しろ親会社と異なり子会社の方は離職率が高いため、年間を通じて人員補充の必要性に迫られているわけです。年に一度の採用では必然的に人手不足による破綻が不可避、そうならないためには年間を通して人を採用する必要があります。

 後は時間をかけて社員を教育することができないため、業界研究というおままごとしか知らない新卒学生は育てられない、多少なりとも就労経験のある人を採用するしかない、という事情もあります。裏を返せば新卒一括採用を「できる」のは離職率が低く年に一度の人員補充で運営できること、新卒者を一から育成できる制度と余裕がある会社に限られるわけです。それが無理なら、中途・通年採用しかありません。

 中小企業は、どこでも同じではないでしょうか。極一部の例外的なホワイト企業、大企業だけが新卒一括採用を「できる」のであり、多数派である中小ブラック企業は新卒一括採用など「できない」、望むと望まざるとに関わらず中途・通年採用しか選択肢がないのが現状ではないかと思います。皆様の勤務先の事業規模と採用形態はいかがでしょう?

 問題は一部の大企業のみが為し得る例外的な形態に過ぎない新卒一括採用が、あたかも標準的な採用方法であるかのような前提で語られ続けていることです。もし大企業だけではなく中小ブラック企業も等しく新卒一括採用オンリーで人を募っているのなら、経済誌の主張も分からないことではありません。しかし、現実に新卒一括採用を行っている会社が多数派であるかと言えば、それは違うはずです。

 新卒一括採用が、悪い採用形態であるかは分かりません。確かなのは、中途・通年採用が専門の中小ブラック企業が成長を続けて新卒一括採用を中心とする大企業との力関係を逆転させる、なんてケースはほぼ「ない」と言うことですね。それでも新卒一括採用にダメ出ししておけば格好は付く、それが日本の経済言論です。誤診を続けたまま処方箋を出していれば、衰退は必然でしょう。

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それが現実だ、と思う

2022-01-02 21:46:24 | 雇用・経済

 彼を知り己を知れば百戦殆からず──とは、孫子の言葉として有名です。まぁ当たり前と言えば当たり前のことではあるのですけれど、それだけに現代でも他分野においても当てはまることではないでしょうか。何事も、正しい現状認識があってこそ成功に繋がるもの、逆に現状認識が誤っている限り遠からず失敗が待ち受けています。

 

日本円の力、半世紀前の水準まで弱体化 急激な円安で暮らしに影響も(朝日新聞)

 ほかの国の通貨に比べ、日本円はモノを買う力が強いのか弱いのか。そんな通貨の購買力を示す国際指標で、日本円が約50年前の水準まで下がっていることが分かった。この1年で急激に円安が進んだのも一因だ。その分、輸入に頼る原油や食材などが値上がりするなど、暮らしへの影響も広がり始めている。

 この指標は、国際決済銀行(BIS)が毎月公表しており、「実質実効為替レート」と呼ばれる。約60カ国・地域の通貨を比較し、各国の物価水準なども考慮して総合的な通貨の実力を示す。数値が低いほど、海外からモノを買う際の割高感が高まる。円安が進むと、海外旅行で何かと割高に感じるのと同じだ。

 この指標をみると、日本円は昨年5月に80以上だったが、海外でコロナ後の景気回復への期待が先行して円安基調となり、下落傾向が続いた。今年10月に70を割り込み、11月に67・79まで下落。これは同様に円安が進んだ2015年6月以来の水準で、1972年8月と同じ値だ。過去最高だったのは、一時1ドル=79円台まで円高が進んだ95年4月で150・85だったので、その当時と比べ、大幅に海外のモノが高く感じる状態になっている。

 

 朝日新聞ですので近年の円安が否定的に語られているわけですが、いかがなものでしょう。確かに円高であれば他国からモノを買うのに有利である一方、円安になると逆です。勿論、他国にモノを売る場合であれば反対になりますので一概にどちらが日本社会全体にとって好ましいとは言い切れないのですけれど、取り敢えず今の「円の価値」こそ実態を適切に表していると、私は思います。

 円の価値が過去最大であったのは1995年4月とのこと、当時であればまだ日本が世界経済のトップランナーの一員でしたので、この評価は妥当です。しかしその後の凋落を思えば円の価値が暴落しない方がおかしい、実体経済がこれだけ低迷しているのに円の価値が高止まりするとあらば、むしろ何かが間違っていると疑問を持たなければならないでしょう。

 改革の旗の下、日本経済は成長とは逆方向にアクセルを踏み込んでいくようになりました。その「成果」が国民の生活に襲いかかるようになってようやく有権者も危機意識を持ったのか、一度は自民党が政権を追われることにもなったわけです。しかるに民主党政権が構造改革路線からの転換を図ったかと言えば、むしろ再スタートになっていたのは何故か、そこには当時の為替レートも一枚噛んでいたように思います。

 民主党政権時代は1ドル=75円という空前の為替レートを記録するなど異常な円高の時代でした。この結果、相対的に円の価値は著しく高まりましたが、これが実態を適切に反映したものかは甚だ疑問です。諸外国が自国の通貨安を誘導する中、日銀白川体制が断固として無策を貫き日本だけが何もしなかった結果、実態からかけ離れた異常な為替レートが出来上がってしまったと言えますが、では何故当時の政権も日銀同様に放置を決め込んだのでしょうか。

 円高とデフレを放置することで、実質賃金という虚妄の指数は改善されます。円高で外国のものが安く買える、デフレでの国内のサービスが安く手に入る──名目賃金を引き上げることが出来ない政権にとって、この上なく都合の良い世情であったのでしょう。もっとも、円高とデフレに甘えた実質賃金の上昇が永遠に続くはずもないのですが。

 再びの政権交代後、日本の金融政策も諸外国と歩調を合わせるようになり極端な円高は是正されました。ただ財政出動は安倍政権発足直後に止まり、その後は緊縮財政へと逆戻り、消費の低迷が成長を阻害していると正しく理解していたにも関わらず消費への課税を強化するなど、180°必要であった転換は、せいぜい30°程度に止まっていると言えます。

 結局は低成長が続き、日本円の購買力も50年前の水準まで低下するに至ったわけですが、それはもう受け入れるしかないでしょう。これが日本の現状なのですから。デフレと円高の結果でしかないものを実質賃金の上昇と言い繕っていた時代に比べれば、むしろ己を知ることが出来る今の為替レートの方が、まだしも未来に希望はあります。

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需要の問題

2021-11-14 23:00:13 | 雇用・経済

 少し前の話ですが、サントリーの社長が「45歳定年制」を主張して物議を醸しました。まぁ会社なんてのは性風俗産業の類と似たようなもの、年を取った人は嫌われ、若い人が求められるわけです。堅物を装った企業も水商売も価値観は同じ、ちやほやされるのは若い間だけ、年を取って放り出されるのが嫌なら経営側に回れということなのでしょう。

 会社の経営者もキャバクラの店長も、年増を追い出して若い人に置き換えたいと共通の望みを抱えているところですが、その一方で「若い人がすぐに会社を辞めてしまう」との嘆きも頻繁に耳にします。厚労省の調査によれば、若年層の3年以内の離職率は全体で3割超、従業員が30人未満の零細企業に至っては半分以上が離職するそうで、これもまた経営側の悩みの種のようです。

 なぜ若者は会社を辞めるのでしょうか。理由の一つは、市場の需要によるものです。つまり日本の会社は年齢を重視して人を採用するわけで、すなわち若いほど転職にも有利であることから、若者には「今の会社を辞めて、別の会社に移る」という選択肢があります。他社が欲しがる若い人材ほど、当然ながら転職のために今の会社を辞める理由が強まる、若年層の雇用が流動化するのは自明のことですね。

 一方、敢えて年増を採用しようとする会社は多くありません。中高年社員は若手と違って他社からの需要がないわけです。そうすると当たり前ですが、中高年社員には「他社に移る」という選択肢がない、「今の会社に残る」しかなくなります。経営側がどれほど中高年を就職市場に供給しようと努めても、それに釣り合う需要がないのですから必然の帰結です。

 そこでサントリーが自らリーダーシップを取って日本的経営を変えていこうとするならば、どうすべきでしょうか。一つは今年で62歳になる新浪剛史社長が若者にポストを譲り、介護や清掃、警備など高齢者向けの求人が多い業界へ転職して自ら範を示すのが市場の需給を満たす良い手であると言えます。これなら有言実行、誰も文句は付けられません。

 もう一つ考えるとしたら、サントリーが採用基準を変えることですね。若者の採用は中止し、採用は原則として45歳以上とすれば、今の会社を辞めてサントリーに転職することを考える中高年も出てくることでしょう。そして他社もまたサントリーに倣って採用基準を変え45歳以上を優先的に採用するともなれば、必然的に中高年の雇用は流動化します。

 少子高齢化ばかりが世界トップクラスに信仰する日本において、45歳以上の人間が軒並み経営者になってしまえば、それを支える若者の負担もまた増すばかりです。中高年には経営者ではなく、労働者として現場で働いてもらわなければ社会を持続させることが出来ません。そのためには、サントリーの社長に代表されるようなキャバクラ型の価値観ではなく、中高年をいかに活用できるかという知恵の方が求められると言えます。

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日本の特異な働き方は変わるか

2021-08-02 00:07:33 | 雇用・経済

「テレワークで生産性低下」は日本だけ? 通勤との“ハイブリッド”で重要な施策とは(ビジネス+IT)

 総務省は2021年6月1日、「令和2年通信利用動向調査」の結果を公表した。同調査では、2020(令和2)年8月末時点における世帯・企業での情報通信サービスの利用状況が取りまとめられている。

 その結果によると「在宅勤務を中心とするテレワークを導入する企業の割合は、前年比で倍以上の47.5%に達した」(2019年は20.2%)という。産業別では「情報通信業」が9割以上導入し、導入目的としては「非常時(感染症の流行など)の事業継続」が7割近くと最も高かった。

 この数字から何が読み取れるのか。レノボ・ジャパンでワークスタイル・エバンジェリストを務める元嶋 亮太氏は「緊急事態対策としてテレワークが浸透したものの、その場しのぎだった企業は少なくない。政府の感染症対策が少しでも緩和すれば、オフィスに出勤する従業員は増える傾向にある」との見解を示す。

 その理由について、同氏は「テレワークが生産性を低下させている」ことを挙げる。レノボが2020年に世界各国で実施した調査によると「テレワークでは、オフィス勤務時よりも生産性が下がる」という回答結果が得られたからだ。他の主要国がすべて10%台なのに対して、日本だけが「40%」と異様に高い。

 

 さて新型コロナウィルスの感染者数が急増する昨今ですが、日本は諸外国と比べ突出してテレワークに否定的な傾向を示す調査結果が発表されています。テレワークで生産性が下がるという回答は普通の国ですと概ね10%台で少数派に止まる一方、我らが日本は40%と一国だけ全く別の価値観を持っていることが分かりますね。

 効率的なものよりも非効率的なスタイルに道徳的な正しさを見いだす文化もあるとは思います。楽な働き方と苦しい働き方であれば、前者に何かしらの「ズルをしている」かのような印象を抱く人も日本には多いのではないでしょうか。テレワークで諸々の負担が軽減されるからこそ、それをネガティブに捉えている人も多いはずです。

 なお引用元のレノボ調査によると回答者の46%が「同僚との対面コミュニケーションがなくなったことで、ストレスや不安を感じる」とのことでした。詰まるところ日本の職場は諸外国と比べ突出して、対面コミュニケーションとやらに依存した働き方を続けてきた、と言うことなのかも知れません。

 時代や状況によって、求められる能力は異なります。棍棒での戦闘能力が重視される時代もあれば、弓馬に巧みであることを求められる時代もある、そこから鉄砲の扱い方を問われるようになれば、家柄や学歴、技術力や容姿に若さ等々と評価されるものは時代とともに変遷し、そして「コミュニケーション能力」に至上の価値を置くに至ったわけです。

 業務遂行能力よりもコミュニケーション能力が優先される中で、社会的に強い立場にあった人たちは対面コミュニケーションによる問題解決に長けていたであろうことは容易に推測されます。ところがテレワークで得意技が使えなくなってしまい焦りを感じている、コロナ前のような成果を上げられなくなっている人も多いのではないでしょうか。

 反対に、これまでのコミュニケーション能力至上主義の中で評価されてこなかった人々、対面コミュニケーションに依存しない問題解決能力を持った人々が、代わりに台頭している職場もあるように思います。コミュニケーション能力一本足打法で幅をきかせてきた従来の主流派が、傍流に追いやられて行ったとしても不思議ではありません。

 例えばサッカーでも、戦術が変わることで選手の序列が変わることがあります。4バックが3バックに変わっただけで、ファーストチョイスだった選手が構想外のトレード要員になり、干されていたと言われる選手が絶対のレギュラーに君臨したりと、状況が変わって求められる能力が変われば、そういうことも普通にあるわけです。

 全員がオフィスに出勤する業務形態とテレワークとでも、同じように求められる能力が変わってくるのではないでしょうか。そして働き方が大きく変わっていく中で、対面コミュニケーション能力に依存した人間はテレワークへの対応が難しく、生産性を実際に落としてしまっている人も少なくないと思われます。

 60歳未満のワクチン接種に関しては絶望的な状況が続きますが、いずれは新型コロナウィルスの感染拡大も止まることでしょう。そうなったときに、テレワークを継続できるか従来型の出社勤務に回帰するか、問われるものがあるはずです。世界の潮流に沿って日本も先進的な働き方を導入できるか、アンシャン・レジームの復権を許すか、ですね。コミュニケーション能力至上主義でのさばってきた人が働きやすい環境を選べば、日本は今以上に進歩から取り残されることでしょう。

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マネジメント不在

2021-07-18 21:30:06 | 雇用・経済

会社にとって「一番お荷物になる社員」5つの条件(東洋経済)

 まず、最初に意外だったのは、ほぼすべての回答者が社員の「年齢」を問題にしていなかったことです。

 世間では、給与水準が高い割にパフォーマンスが低い高齢社員が“働かないオジサン”と揶揄されています。また、最近の早期希望退職の募集では、「45歳以上の社員が対象」といった年齢制限を付けるのが一般的です。しかし、今回「年齢は関係ない」という意見が寄せられました。

 「本当はパフォーマンスの悪い社員を指名解雇したいのですが、(日本では、ほぼ)不可能。何らかの基準を設けて早期退職を募集するなら、年齢ということになります。当社は50歳以上の構成比が高いので50歳で区切って早期希望退職を募集しましたが、別に50歳以上が他の年齢層と比べてパフォーマンスが低いというわけではありません」(素材)

 「世間と同じように、給与水準が高い高齢社員を対象に早期希望退職を募集しました。ただ、年齢に関係なく、我々が『是非とも辞めて欲しい』と思う社員はいます。大して仕事ができない人事部の若手が高齢社員を“働かないオジサン”とか揶揄しているのを見ると、『本当は君たちに辞めて欲しいんだよ』と言ってやりたくなりますね」(電機)

 

 アメリカでは差別と判定される可能性のある解雇は訴訟リスクが高いので、差別を受けにくい層から整理解雇されるとも聞きます。一方で差別に甘い日本の場合はどうしても、まずは特定の年齢層を狙い撃ちにするのが一般的です。ただ今回の引用元では、意外やリストラしたい対象と年齢はあまり関係ないとのこと、少なからず新鮮な印象を受けます。

 引用元ではその後、「年齢に関係なく辞めて欲しい」という社員として「職務遂行能力やパフォーマンスの低さ」「能力やパフォーマンスが低いことへの自覚がない」「自責的に考えることができない」「自発的に行動しない」「周囲に悪影響をまき散らす」が挙げられています。突っ込みどころがないでもありませんが、いかがなものでしょう。

 特に「自発的に行動しない」については違うだろうという気がしないでもありません。能力が低く、かつ自覚のない社員に自発的な行動などさせようものなら、どんな結果が待ち受けているかこの論者は予測できないのでしょうか。能力が低く、かつ自覚のない社員に自発的な行動をとらせているからこそ、周囲に悪影響が及んでいるのが真相のような気がします。

 もちろん指揮官不在の組織――それは我が国における「普通」とも言えますが――では、全社員に自発的な行動を要求することだけが唯一の選択肢になってしまうのでしょう。適切に指揮命令を行う管理者がいない、ただ「自分で考える」ことを要求するだけで完結してしまっている組織では「自発的に行動しない」ことがネガティブな扱いになってしまうわけです。

 判断力のない社員に自発的に行動させたらろくなことにならないのですが、そうなったら「自責的に考えること」を要求すればコンサル的にはOKなのかも知れません。しかし、余計なことをやる人、訳の分からないことをやる人の尻拭いを余儀なくされるのは別の社員だったりします。責任は、トリクルダウンで誰かの肩にのしかかってくるものですから。

 非正規への置き換えが進んだ21世紀の日本では、たかだか正規雇用と言うだけで特別な能力を要求されるようになりました。しかるに、世界市場で競合する中国や韓国の大企業よりも給与水準で下回る日本企業の従業員に、そんな特別な能力の持ち主はいるのでしょうか。現実は、安い賃金に見合った平凡な人々が集まっているに過ぎないはずです。

 本物のスターは、どの世界でも高額の報酬を要求するものです。同業の他社より格段に高い給与を払っている例外的な会社であれば、その従業員に高い能力を求めるのも間違いではないのかも知れません。しかし賃金水準が低いまま据え置かれている中では、集う社員も給与相応だと考えるのが筋でしょう。

 国際的に競争できる賃金水準で人を募るのなら別ですが、そうでない圧倒的多数の日本企業は現実を直視し、給与に見合った平凡な人をいかに活用していくかを考えるしかありません。そこで凡人を相手に「自発的に行動しろ」と漫然と要求するのが正しいのか――答えは日本の経済成長という形ですでに現れていると言えます。

 無能であることを前提に行動しなければいけないと、私は思います。そんなに能力の高い人はいない、自力で正解に到達できる人などいない、だから自分で考えさせるのではなく、適切に指揮命令を下すことで、従業員が指示通りに動けば収益を増やせるような仕組みを作っていくことが重要なのではないでしょうか。

 プロスポーツでも、監督や戦術が変わることで活躍する選手も出てくれば逆に埋没する選手もいます。それは選手本人の問題もあるのかも知れませんが、起用する側が能力を引き出せているかどうかの問題でもあるわけです。企業組織も、そういう観点は持つべきでしょう。社員のパフォーマンスが低いのは本人の問題なのか起用法の問題なのか、そこで本人の自主性に原因を求めてしまう組織は、マネジメント不在であると言われても致し方ありません。

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そんな段階ではないのは確かだが

2021-05-23 23:46:47 | 雇用・経済

「そんな段階ではない」 テレワーク要請の西村氏に反論(朝日新聞)

 もう、そういう段階ではない――。20日、テレワークへのさらなる取り組みを要請した西村康稔経済再生相に対し、経済界側が「反論」する場面があった。経済界は新型コロナウイルスワクチン接種の加速化や、迅速な経済支援策などを相次いで注文。西村氏は「私の立場からも努力をしていきたい」としつつ、重ねてテレワークへの協力を求めた。

(中略)

 テレビ会議に参加した各団体は、西村氏の要請に協力する考えを表明したものの、感染拡大防止策としてテレワークを強調する西村氏に対しては異論が噴出。名古屋商工会議所の山本亜土会頭は「もう、そういう段階で解決できるのはちょっと厳しい」と反論。「現状を打破する唯一の手段はワクチンの接種だ。これ以外に有効な手立てがないんじゃないか」と訴えた。

 

 むしろテレワークに関して「できない」「やれない」と宣う企業側に対してこそ「そんな段階ではない」という言葉が向けられるべきと思われるところですが、いかがなものでしょうか。企業側からすれば(今まで通りの変わらぬ出社体制で)現状を打破する唯一の手段はワクチン接種しかないのかもしれませんけれど……

 この新型コロナウィルスの感染拡大に関しては、敗戦以来の大きな社会変革の契機であるとも私は思っています。戦争に敗れたおかげで民主化が進んでその後の発展の基礎が築かれたように、コロナのおかげで立ち後れの著しかった日本の労働習慣が先進的なものに変わるのであれば、それは社会として正しい方向に進んでいると言えるでしょう。

 小池百合子の公約の一つに「満員電車0」なんてものがありました。公約なんて選挙が終われば気にされることもなくなりがちですが、これもまた「コロナのおかげで」一時的に達成されていたわけです。夢物語でしかなかった満員電車0が一時的にでも実現されたならば、それをいかに維持するかも真面目に検討されるべきと言えます。

 テレワークに関しては地域ごと、企業ごと、あるいは企業内でも組織ごとに取り組みの温度差が大きいところです。ただ自分の会社を鑑みると、いざ政府の号令で「初めてのテレワーク」を開始したら幹部社員の予想に反して支障なく業務が回るなんてこともありました。「できない」「やれない」と言い張る企業も実際にやってみたらどうなのかと思わないでもないです。

 もちろんワクチン接種も状況を改善する有力な手段ですけれど、それで全ての感染が防げるものではありません。公衆衛生の改善や、テレワークなどを駆使して過密状況を避けることも継続して必要です。しかるに、特定の要因だけを挙げて完結してしまう言論もまた常態化しているわけです。複合的な要因の結果として事象が発生しているのに、何か一つ「犯人」を見つけて、そこで思考を止めてしまう等々。

 「現状を打破する唯一の手段はワクチンの接種」という主張も然り、ワクチン接種のみでの解決を期待するのは安易ですが、しかし経済界からすれば「ワクチン接種が唯一」の解決策であってくれれば好都合なのでしょう。テレワーク「も」解決策であるならば、そこは企業側にも努力義務が生じてしまいます。それを避けるにはワクチン接種が「唯一」でなければならない、と。

 従来型の労働習慣を「続けさせたい」と願っている経営側もまた少なくないのでしょう。利益よりも社員の支配を優先する日本的経営においては、テレワークの成果を測る代わりに社員を監視するためのソフトを導入する企業もまた少なくありません。だからこそテレワークへの取り組みを求められても「そういう段階ではない」となるわけです。

 伝染病の感染拡大を抑止する面でテレワークは効果的ですが、決してそれだけではありません。企業の指定する勤務場所に拘束され、満員電車に揺られて通勤する生活から労働者を解放するのもまたテレワークです。これはコロナがなくとも働き方の未来として進めてもらいたいものと言えます。行政にはGHQにでもなったつもりで、アンシャン・レジームの担い手たる経済界と戦って欲しいところですね。

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消費者が気にしないこと

2021-04-11 22:05:01 | 雇用・経済

アマゾン労組、結成ならず 従業員の反対多数(時事通信)

 【シリコンバレー時事】米インターネット通販大手アマゾン・ドット・コムがアラバマ州ベッセマーで運営する物流倉庫の従業員らが、労働組合結成を問う投票を実施し、9日に反対多数で否決された。全米で第2位となる80万人超の従業員規模を誇るアマゾンで、労組が結成されるか注目されていた。

 投票実施の背景には、過酷な労働環境の是正を求める声が高まったことがある。アマゾンは新型コロナウイルス禍で加速した巣ごもり消費を追い風に利益を伸ばす一方で、感染対策の強化が不十分として従業員が各地でストライキを起こしていた。
 投票は郵便で3月29日まで実施。独立政府機関の全米労働関係委員会(NLRB)が今月9日、反対が1798票となり、賛成738票を大きく上回ったとの集計結果を発表した。

 

 同じアマゾンでもヨーロッパ拠点では組合が結成されているところも多いそうですが、アメリカでは反対多数で否決されたことが伝えられています。労組もピンキリ、日本の多数派労組のように会社の決定を追認するだけ、従業員の待遇よりも民主党の応援の方が大事な組合もありますが、どうしたものでしょうね。

 大手企業の問題が報じられるのは有名税的な部分もあって、実際には世間の注目を集めることのない中小企業においてこそ本当の問題が潜んでいる場合も少なくありません。客観的な事実としてアマゾンは競合他社よりも高めの賃金水準を設定しており、その辺は労働環境も悪ければ賃金も低い無名のブラック企業よりはマシとも言えます。

 一方で今回の投票を前に会社側の露骨な組合潰しがあったとも伝えられている他、過酷な労働環境を示す一例として「プラスチック瓶に用を足すしかない状況になった」との証言まで出てきたわけです。後者については会社側も事実として認めている状況で、まぁ労務面の問題は否定できないところなのでしょう。

 非人道的な労働の結果として消費者まで届けられる商品をどう扱うべきか――これに対する市場の回答は極めて政治的です。アメリカが強制労働云々との口実で中国/ウイグル製品の輸入を禁止したとき、これに追随する流れは日本でも見られます。しかし技能実習と称して外国人を非人道的な環境で働かせて生産された商品を日本市場が拒んでいるかと言えば、答えは否です。

 フェアトレードという、ままごともあります。フェアトレードとは理念こそ尊いものの、その実はチョコレートやコーヒー、手芸品など適用される範囲は限定的なまま絶望的に広がりを見せない運動でもあるわけです。例えば消費者がiPhoneを買うとき、その生産工場では従業員が自殺にまで追い詰められるような過酷な体制が組まれていたことなど誰も気にはしませんから。

 「かわいそうな子供たち」へのこれ見よがしの同情心や、アメリカの覇権を脅かす存在を潰すのに好都合だから、そうした理由で商品が選ばれたり排除されたりすることは至って普通の光景です。一方で、負けず劣らず激務であったり薄給であったり差別的であったり等々、ブラックな労働によって作られた製品が市場に受け入れられるのも日常的な風景です。

 従業員の待遇が悪いから――そうした理由で問題のある企業の商品やサービスが消費者から忌避されるようであれば、もう少し世の中は変わったことでしょう。アマゾンで買い物をするとき、その物流倉庫で働いている人の待遇をほんの少しでも考えてみる人が増えてくれればな、と思います。まぁ、競合他社がアマゾンよりまともかと言えば、そこは別問題ですけれど。

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