愛しきものたち

石仏、民家街並み、勧請縄、棚田景観、寺社、旧跡などが中心です。

木津川 駒返し岩の阿弥陀如来磨崖石仏

2011年03月21日 | 石仏:京都

やっとの思いで出かけて何とかめぐり逢うことが出来た石仏さんです。

そう、もう30年以上も前、当時親しくしてもらっていた郷土史の恩師と一緒に此処を訪ね、存在は知っていたがそれ以来一度も訪れたことが無くこの道路を通るたびに気になっていた。

何度ネット検索しても、何処をどう探してみてもこの石仏の存在にさえ出会う事は無かった・・・・この石仏の彫られている岩は駒返し岩と呼ばれ地図にも表示されているのだが・・・・・。

しかし道路整備も進み河岸はコンクリートで固められ、当時残されていた目印や河岸に降りる梯子も見当たらなくなっていた。

<上流笠置方面向けに撮影>

<下流加茂方面向きに撮影・・・いずれも現場付近の163号線>

国道24号線から分岐して、国道163号線を木津川沿いに遡ると加茂町を越え、新しく出来たトンネルを越えると、やがて銭司(ぜず)の集落を通過、道路は木津川の流れギリギリに湾曲して約2km弱、和束砕石場までの間は左手山裾が迫る狭い道路となる。

この辺り停車も困難で運転にも気を使うのでゆっくり確認も出来て居なかった。

NET地図上で何度も検索し、岸辺を歩いて到達するのは無理だと言うこともわかっていたし、また川から岸につけるカヌーも持ち合わせは無い、周りの状況も確認した上これは道路の護岸壁をロッククライミング宜しくロープで降りるしかないと用意周到に出かけた。

車は採石場近くの空き地に捨て置き、R163をとぼとぼバック、道路は大型車など通行量も多く狭いので要注意。

ほぼ目的地に着くと河岸に大きな岩が横たわっているのが見える・・・・、これが間違いなく駒返し岩。

足場のいい辺りのガードレールにロープを巻きつけカメラ2台を首からぶら下げ親父のロッククライミング・・。

約10mも下ると河岸ににつくが其処は篠竹や雑木の笹原、全く永らく人など来た形跡も無い。

<駒返し岩の全容・・・奥に山肌と163号のガードレール>

殆ど消えうせた記憶を頼りに駒岩の上によじ登って見るが其処は蔦に覆い尽くされ岩面も見えぬほど・・・

確か頂部あたりに地蔵が刻まれていたような??・・・・・、蔦性植物を払いのけて見たが見つからない。

頂部からひとしきり周りを探索すると西面壁にそれらしき加工の跡を発見し、河岸まで降りて笹原を踏み分け何とかこの石仏さんに出逢うことが出来ました。

対面には長閑な関西線のジーゼルカーが・・・この辺り木津川は蛇行していて水深も有るようです。

こちらは下流方面

こちらは上流方面・・・、此処から笠置山が見えなかった、少し位置が悪いようです。

本題の石仏さんは駒返し岩下流側、笹原に隠れるように西面壁の高さ2mぐらいのところに刻まれていました。

壁面の花崗岩に約1m強の二重光背を彫り窪め、その下部には蓮弁を深い線彫りで大きく刻んでいる。

蓮弁上に更に蓮台??を設け、その上に像高約80cmの阿弥陀如来を厚肉彫りで刻み出している。

右手は施無畏印、左手は与願印、周りをくまなく調べてみたが銘らしきものは無く、僕の乏しき知識では像立時期の確定は出来ませんが・・・

二重光背の頂部には20cm四方ぐらいで高さ10cm程の突き出し突起が加工されていて往時この磨崖石仏には笠石が乗せられていたのだろうか??

どんな姿だったんだろう・・・・、随分今とは違った印象を受けるに違いない。

この川にも笠石をもぎ取って行くような洪水が幾たびもあったに違いない

長年再会を望んでやっと出逢えた喜びと感激で暫くボーっと佇み眺めていた・・・。

それにしてもこの石仏さんはこんな河原の荒地に在って傷み磨耗も殆ど無く、また意地の悪い地衣類の繁殖に犯されるでもなく良く原型を留めていると思う。

目の付近が白く見えるのはいたずら蜘蛛の仕業だろうか??地衣類かな??・・・、次行くときにはしっかり掃除でもしようかな・・

勿論鎌や鉈を持って少しは廻りも近づきやすくしたいが??・・・・此処は国土交通省の管轄かな・・・・、行政的には和束町木屋(こや)だけど・・、念のため和束町では・・・・全く何の指定もありません、多分この存在も知らないのかも??

もう何十年もこうして放たらかしの阿弥陀さん、僕は何十年ぶりの参拝者ですか??

この石仏の刻まれている岩は往古、元弘の役で笠置山に篭城した後醍醐天皇の最期、笠置落城の急を聞き千早赤坂から急遽楠正成が笠置に向かったが此処まで来て笠置全山が炎上しているのを見て駒を返したところだという云われの有る岩です。

その頃にはもうこの石仏さんも居て、楠正成は、この阿弥陀さんにどんな気持ちで手を合わした事だろうか???

そっと黙っていて僕だけの楽しみにしておきたい気も少しは有るけれど・・・・僕の「愛しき者達」です。

まだまだ人目にも触れずに忘れ去られてしまった石仏さんも一杯いるんだろうな・・・・。

撮影2011.3.20



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8 コメント

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Unknown (たいしん)
2011-03-21 17:38:44
昨日、雨が降る前に行かれたのは
この磨崖仏だったんですね。
いいお顔なさっていますね~

しかし、ロープまで使わないと行けないと言うことは
本当に何十年ぶりかの参拝者になりましたね。

でも、ぺんさんが昔に行かれててなかったら
完全に忘れ去られてしまっていた事でしょう。

探し出していただいて有り難うございます。
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Unknown (ぺん)
2011-03-21 18:07:40
是非見てください。

こんな所に黙ってもう何百年・・・、人影が途絶えてもう何十年、完全に忘れ去られようとしています。
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Unknown (姪っ子)
2011-03-21 18:27:50
何十年ぶりかの参拝者に、阿弥陀さまもお喜びのことでしょうね!
しかしながら、親父のロッククライミングは・・・
ダイエットで身軽になったとは言え、決して若くはないのですから、くれぐれもお気をつけて下さりませ。
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Unknown (ぺん)
2011-03-21 20:14:35
はっはは~~~、解った解ったアイちゃんやろ・・・。

決して若くないとは・・・其の通りやけどまあまだ大丈夫、あそこはアイちゃんも良く通るやろうが、まさかあんなものが有るとは気も付かないです~いすいやろうなあ???。

いっぺんどっかに連れたるわ、女房と一緒に。
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Unknown (たいしん)
2011-03-22 01:17:10
この阿弥陀さん、じっくり見ていたら
光背が左右対称じゃ無いのに気付きました。
向かって左側が広く阿弥陀さんの左足元に
何やら縦に棒状のものが・・・

何か彫られていたのか、はたまた棒状のもの
の左の空間に文字が彫られていたのか・・・
蓮弁上に更に蓮台と言うのも気になります。
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Unknown (ぺん)
2011-03-22 07:05:55
う~ん、そこそこ入念に見たつもりなんですが・・・。
銘が有るとすれば確かに左足元です、其処にあやしい空間があります。

蓮弁上のものが蓮台かは確定出来ません。

左右の非対称には気付かなかった・・・。

たいしんさんは拓本とれますか???

他にも一杯気になる点はあります。

とにかく岩が馬鹿でかい。

他の面は足場を確保しないと近づきもできないので・・

雨が降らないといいけどなあ・・・・。
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仏さんは一人静かに川の流れを見ておられました (PATARIRO)
2013-01-10 15:11:17
ペンさん始めましてPATARIROです。
たいしんさんとぺんさんのブログは拝見させていただいています。
その中で タイシンさんの島ヶ原とペンさんの駒返し岩は特に気になっていたのですが駒返しはあのトラックが行きかう163を私も昔からよく通ります。地図にも「駒返し岩」と出てるくらいだからちょっと都合の良い時に寄ったらいいなって、くらいに思っていたらペンさんのブログのロッククライミングを読んでこれはちょっと~、と思ってそのままにしてたのですが、冬になったし、タイシンさんの加茂の木津川沿いのおかめ地蔵を探しにいった時、川沿いに遡行すれば何とかなるんじゃ、と思い銭司のキャンプ場から上流にアタックしました。幸い水量もそれほどでもなく天候に恵まれ川沿いに小竹を掻き分けたどりつけました。一日目は途中で日が日が翳って来たので163号線のガードが見え始めるあたりで引き返しましたが。次の日も好天だったので川沿いを岩までたどりつけました。夏場に行った御霊神社裏からの灯明寺山や、内の蔵磨涯仏を探しに行った時の事を思い出させるような川沿いの道でした。周りや途中にいわくありそうな岩がけっこうありましたが、もともと何もないのか、消えてしまったのか駒返しの磨涯石仏のようにはっきりしたものはありませんでしたね。磨涯仏前の岸辺の岩の上に座って、後ろの崖の上を通る自動車の音を聞きながら、川の流れを眺めて平和で(いつまで続くんじゃろ)きれいな水と山の日本を感じながら、しばし休息して石仏に別れをつげ、来た道をキャンプ場まで帰ってきたときはもう17時を回っていました。川沿いの道も大変でしたが、この163号線を歩いて銭司あたりに停めてあった車に帰る方もトラックが白線ぎりぎりではしるので大変でした。「そっと黙っていて僕だけの楽しみにしておきたい気も少しは有るけれど・・・」というペンさんの趣旨に反sますが
Panoramioに写真をアップさせてもらいますので宜しくお願いします。
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ご丁寧な報告ありがとうございます。 (ぺん)
2013-01-10 16:54:47
PATARIROさん、ただ今確認しました。
あの川を銭司の水泳場から行かれたんですか?根性ですね。
>Panoramioに写真をアップさせてもらいますので宜しくお願いします。
いい写真が撮れましたか??あの石仏さんも、きっと喜んでくれるでしょう。
ご丁寧な報告ありがとうございます。
これが3日前の書き込みだったんですね。
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