Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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ゴッホと神経学

2021年05月07日 | 医学と医療
ゴッホを神経学の観点から興味を持って文献や本を読んでいます.そのなかで原田マハさんの「たゆたえども沈まず」を読みました.ルソーやピカソを題材にした「永遠のカンヴァス」や「暗幕のゲルニカ」を感動して読みましたが,本作も素晴らしい小説でした.日本に憧れる無名の画家ゴッホを献身的に支える画商の弟テオ,さらに日本美術を海外に紹介し,パリのジャポニスム(日本趣味)を支えた画商林忠正らが主人公です.物語の中で出てくるゴッホの作品をネットで鑑賞しながら読み進めるのがお薦めです.人を惹き付ける「星月夜」や「オーヴェールの教会」が一番好きな作品でしたが,ゴッホが精神病院で療養していた時,パリに住むテオに子供が生まれたのを祝って制作した作品「花咲くアーモンドの木の枝(右図)」がそれ以上に印象に残りました.ゴッホの優しさと寂しさを感じます.

ゴッホの病気については側頭葉てんかん,統合失調症,メニエル病,躁うつ病,ジギタリス/アブサン中毒,ポリフィリア症などさまざまな説があり,耳切り事件の真相とともに大きな謎になっています.しばしば「狂気と情熱の芸術家」と評されますが,その作品や,テオとやり取りした数多くの知的な手紙を読むと,むしろ病状のひどかった最も不幸な晩年に,素晴らしい作品を残した病気へのレジリエンス(抵抗力)こそが彼の本質なのではないかと思いました.またゴッホはフェリックス・レイ医師,ガシェ医師,ペイロン医師といった多くの医師に支えられます.医学がまだ十分に発達していなかった時代にゴッホを支援したこれらの医師のなかに,神経疾患に関わる医療者が学ぶべきものがあるような気がします.ゴッホの病跡学については数多くの論文がありますが,私も挑戦してみたいと思っています.

たゆたえども沈まず(幻冬舎)




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